人気ミュージシャンのイェ(カニエ・ウェスト)が新作「Donda 2」を自分が開発した独自のデジタルプレーヤー「Stem Player」同梱でのみリリースすると発表した。
同曲をApple MusicやAmazon Music、Spotifyなどのストリーミングサービスでは提供しないとしている。彼がそう決めた理由はストリーミング配信に対するミュージシャンのロイヤルティが低すぎるということに反対してのことだという。
Stem PlayerはイギリスのスタートアップであるKanoとカニエ・ウェストが共同で開発し、2021年に発売したデジタル・オーディオ・プレーヤーだ。すでに米国などで200ドル販売されている。国内では取り扱いがない。特徴は名前の通り、ミキシングの際にギターやドラムなど楽器パート別に書き出す「ステムデータ」が収録されていて、再生時にはそれぞれのパートを自分なりにカスタマイズして自分独自のミックスが可能であるということだ。
ミュージシャンが独自のデジタルプレーヤーを開発することは珍しくない。2014年にニール・ヤングが開発した「PONO Player」がよく知られている。私自身も一つ購入したのだが、音質はとてもいいデジタルプレーヤーだった。
しかし、PONO Playerは結局失敗してしまった。
ニール・ヤングがPONO Playerを開発した理由は、「iTunes Music Store」の配信が圧縮されたAACのみであり、リスナーに音の良いハイレゾ音源を届けたいという想いがあったからだ。カニエ・ウェストはロイヤリティーを問題にしているが、実のところはリスナーにStem Playerによるミキシングを委ねて、新しい音楽体験を届けたいという思いがあるのかもしれない。
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