2022年1月5日より開催された世界最大級のハイテク技術の見本市「CES 2022」。電動化が進む自動車関連の展示が多いのもこのイベントの特徴となりますが、今年のクルマ系のトピックと言えるのが「数多くのEVの登場」でしょう。
やっぱり自動車メーカーになる!
ソニーがSUV型の電気自動車を発表
自動車系メディアだけでなく、広く注目されたのが、ソニーのEV「VISION-S 02」でした。ソニーは2年前の「CES 2020」において、ソニーとして第一弾となるEVコンセプト「VISION-S」を発表していました。セダン型であった「VISION-S」に対して、今回の「VISION-S 02」はSUV型となります。プラットフォームなどのベース部分は、2台とも同じですが、新しい「VISION-S 02」は、室内が広くなり7人乗車とされています。
この2台のソニーのEVは、ただ電気で走るのではなく、ソニーらしく「移動中のエンターテイメント空間」という色合いが濃いのが特徴です。また、2020年当時のソニーは「自動車メーカーになるつもりはない」と言っていましたが、今年は一転「EVの市場投入を本格的に検討していきます」と明言。家電メーカーによる自動車メーカーへの挑戦が大きな話題となったのです。
アメリカの人気ジャンルでEVを投入
ホームの意地を見せたGM
そうした、ソニーに負けず劣らずのEV攻勢をしかけたのが、ホームとなるアメリカのGM(ゼネラルモーターズ)です。アメリカ市場で絶大な人気を誇るクルマのジャンルはフルサイズ・ピックアップトラックです。過去、何十年にもわたってアメリカ市場の年間販売の上位を独占しているのがピックアップトラックでした。
そしてGMは、その大人気ジャンルとなるフルサイズ・ピックアップトラックのEVとなる「2024年型 シボレー・シルバラードEV」を発表しました。このモデルは、すでに発売されている「ハマーEV」などと同じ「アルティウム」EVプラットフォームを利用しています。最高出力は664馬力で、0~60マイル加速は4.5秒未満。エアサスペンションに4輪駆動と4輪操舵機能を装備。最大航続距離400マイル(約640㎞)を実現しているとか。発売は2023年春からで、価格は3万9900ドル(約460万円)から。秋にはフル装備の上級モデルが10万5000ドル(約1200万円)ほどでデビュー。その後、5万ドル、6万ドル、7万ドル、8万ドルという幅広い価格帯のバリエーションが用意されるといいます。4万ドルからの価格設定は、相当に攻めたものではないでしょうか。GMの本気度が感じられます。
さらにGMは、その後に約3万ドル(約340万円)前後となるSUVの「シボレー・エクイノックスEV」と大型SUVの「シボレー・ブレイザーEV」の導入も予告。「シボレー・シルバラードEV」「シボレー・エクイノックスEV」「シボレー・ブレイザーEV」の3モデルで、アメリカでのEV市場シェア1位を目指すといいます。昨年の暮れにトヨタが「バッテリーEV戦略に関する説明会」でEVをフルラインナップで用意すると宣言したように、アメリカのGMも本気でEVに取り組むという姿勢を見せたということでしょう。
そして、GMは量産EVに加えて、自動運転のEVコンセプトも発表しました。それがキャデラックの「インナースペース」です。これは、自動運転機能が実現になったあかつきに、移動中の乗員の時間の使い方を見直し、安らぎと休息の空間を提供するという「キャデラック・ヘイロー・コンセプト」に含まれるモデルです。GMは昨年の「CES 2021」で、同コンセプトを発表し、同時に1人乗り垂直離陸飛行機「パーソナルスペース」と最大6人乗りの自動運転車「ソーシャルスペース」の2台を発表しています。今回の「インナースペース」は、そうしたシリーズのひとつとなります。
「インナースペース」は、自動走行の2人乗りのラグジュアリーEVです。没入感たっぷりの大型パノラマディスプレイが室内にあって、「拡張現実エンゲージメント」「エンターテインメント」「ウェルネスリカバリー」から選択して、ドライブが楽しめるというのです。
また、「オープンスペース」と呼ぶコンセプトが近く登場することも予告されました。これも「キャデラック・ヘイロー・コンセプト」のひとつで、移動可能な高級ホテルの部屋のような存在となるとか。どんなクルマになるのか、非常に楽しみですね。
クライスラーはSUVのコンセプトカーを発表
もうひとつのアメリカ系ブランドであるクライスラーからもEVが登場しました。それがSUVの「エアフロー・コンセプト」です。また同時に「2025年までにEVを発売し、2028年までにEVをフルラインナップする」という計画も発表しています。ただし、「エアフロー・コンセプト」は、クライスラー・ブランドの将来の方向性を示すものということですので、「エアフロー・コンセプト」が、そのままEVとなって発売されることはないのかもしれません。
具体的な「エアフロー・コンセプト」は、どういうものかといえば、フロントとリアの車軸それぞれに150kW(約204馬力)のモーターを搭載。航続距離は350~400マイル(560~640㎞)を実現。自動運転レベル3とOTA(無線でのソフトのアップデート)機能を有しているとか。あまり突飛な内容ではないということで、量産車もこれに近い形で登場するのではないでしょうか。
シトロエンやBMWといった
ヨーロッパ勢もEVを持ち込んだ
また、クライスラーと同じステランティス傘下のシトロエンも、斬新なEVコンセプトを持ち込みました。それが「シトロエン・オートノマス・モビリティ・ビジョン」です。なんと車台だけでできていて、利用するパートナー(地方自治体やサービス会社)に特化したカプセル(ポッド)を組み合わせるというのです。説明を聞けば納得の合理的なアイデアですが、車台だけというスタイルには驚くばかり。さすがシトロエンという斬新さです。
欧州勢としてはBMWもEVを持ち込みました。しかも、こちらは量産車EVとなる「BMW iX M60」です。これは、すでに発売されているSUVのEV「iX」の高性能なMモデル。なんと、455kW(619馬力)/1100Nmの強烈なパワーを持ち、航続距離566kmを実現しているというのです。世界市場には2022年6月から導入とか。日本にも、そう遠くない日に発売が開始されることでしょう。
ちなみにBMWは、スイッチ一つでボディーカラーを変化させる「Eインク」という技術を発表。白いボディーが、数秒で黒くなるという「Eインク」は大きな注目を集めていました。
ベトナムの新興メーカーにも注目!
最後のEVが、ヴィンファストです。ヴィンファストは、2017年に生まれたベトナムの自動車メーカーで、EV専業化を目指し、2021年より北米や欧米への進出を開始しています。その新興メーカーが欧州のメガ・サプライヤーであるZFと組んで、自動運転レベル3システムを数年で実現すると発表しています。アセアンからの挑戦に注目です。
ここ数年、「EVシフト」という声を耳にする機会が増えています。日本においては、まだまだ実感はありませんが、欧米では、相当な勢いのあるトレンドとなっているようです。アメリカでも、数多くのEVが実際に発売されるようになっており、そうした流れが「CES 2022」での多くのEVデビューにつながったのではないでしょうか。
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