ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第633回
Ponte VecchioとIntel Arcに関する疑問をRaja Koduri氏が回答 インテル GPUロードマップ
2021年09月20日 12時00分更新
Intel ArcがTSMCのN6を利用した理由は
たまたまN6がベストなバランスだったから
次にIntel Arcについて。まずTSMCのN6を利用した理由について、「設計開始時に想定できるプロセスの全体をまず見極める必要がある」としたうえで、「どのくらいの動作周波数が利用できるかなどその他の特徴も重要なファクターで、コストも問題になる。この3つ、つまりコスト・パフォーマンス・キャパシティを勘案してどのプロセスを使うか決める」という話だった。つまり、最初の製品であるAlchemistはたまたまTSMCのN6がベストなバランスだった、ということだろう。
普通に考えると、ではBattlemageはインテルに戻るのか? となりそうだが、引き続きTSMCのN5あるいはN4を選択することも可能な含みを残した返答であった。
※お詫びと訂正:Intel ArcがTSMCのN6を利用した理由について、Raja Koduri氏の発言にない記述がございました。記事を訂正してお詫びします。(2021年9月21日)
そのAlchemist、Architecture Dayでは8スライス構成が示されたが、Chandler氏曰く「Xe HPGの構成はスケーラビリティが確保されており、もっと増やすことも可能だ。現時点ではAlchemistが最大何スライスになるかは公開できないが、用途(ゲーミングかメインストリームか)や、プラットフォーム(デスクトップかモバイルか)などによって異なるスライスが必要とされる」と答えるに留まった。
なおIntel Arcは、すでにリファレンス・デザインが存在しており、パートナー企業にそのデザインを引き渡してはいるものの、例えばNVIDIAで言うところのファウンダーズ・エディションに相当する製品モデルを出すかどうかに関しては「パートナーやODMの差別化が行われることになるとは思うし、それが最終的な顧客の利益につながる」と答えるにとどめ、明確な答えはなかった。
NVIDIAのQuadro、あるいはAMDのRadeon Proに相当するプロフェッショナル向けSKUの存在についても、「もちろんわれわれはワークステーション向けの市場をサポートするし、例えば3DS Maxのようなハイエンドアプリケーションをサポートする」とは述べたが、現時点では具体的にそれをどの製品SKUでサポートするのかは説明できないとしたうえで、ただしそうしたハイエンドアプリケーションをサポートできる能力は(Intel Arcには)ある、とだけ説明した。
ちなみにスーパーサンプリング技法のXeSSに関しては「後方互換性がある」とのことだった。つまりすでに発売済のIris Xe DG1でもXeSSが利用できる、としている。またTigerLakeを含む第11世代ベースのGPUでも動作する、という話であった。
またXe-Linkを使ったマルチGPU構成に関しては明確に否定された。Xe-LinkはPonte Vecchio向けであるとされており、他の製品には利用しないとのこと。
NVIDIAはハイエンド製品のみがNVLinkを利用してのSLI動作が可能なものの、メインストリーム向けはNVLinkそのものが廃されていてシングルGPUとしてしか使えないし、AMDは全製品でPCIe経由でのネイティブCrossFireがまだ利用可能ではあるが、そうした使い方はあまり一般的ではない。
PCIeを利用してのマルチGPUがIntel Arcで利用可能かどうかは明言されなかったが、あまり期待はできないだろう(仮に実現してもそれほど性能の伸びはなさそうだ)。
ドライバーについて言えば、一応リリーススケジュールは予定しているとのこと。NVIDIAやAMD同様に、定期的に新ドライバーがリリースされるほか、メジャータイトルのリリース時にはそれに対応したドライバーが追加される、という形を「予定している」との話である。
もっともこれを本当に実現するには、かなりドライバーサポートのエンジニアを手厚くする必要があり、現状そこまで手が回るかどうかはやや疑問である。当初はどうしてもNVIDIAやAMDには若干見劣りすることは覚悟しておいた方が良いだろう。
というあたりが現状の動向である。10月27~28日に、オンラインでIntel Innovationが開催予定であり、追加の情報が出るとしたらこのタイミングになると思われる。
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