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最新パーツ性能チェック 第338回

Ryzen 5000シリーズが最強王座から陥落!?

Core i9-11900K、Core i7-11700K、Core i5-11600K検証!クリエイティブ系アプリ&ゲーム編

2021年04月26日 11時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●ジサトライッペイ/ASCII

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 インテルのデスクトップPC向け最新CPU、第11世代インテルCoreプロセッサー(開発コードネーム:Rocket Lake-S)の販売が始まって約3週間。すでに手に入れ、インテルZ590チップセット搭載マザーボードと組み合わせて、新しいPCを組んだ人も多いだろう。当初は数が少なかった最上位のCore i9-11900Kも徐々にその在庫が増えてきている。

 前回は時間と筆者の体力的制約から第11世代インテルCoreプロセッサー(以下、第11世代Core)の概要説明と基本的なベンチマーク(CINEBENCH R23、PCMark10、3DMark、消費電力)の解説にとどめたが、第2回目となる今回はゲームやクリエイティブ系アプリを中心に検証を進めていきたい。

14nmmプロセスに10nmプロセス向けのアーキテクチャー(Willow Cove)をバックポートする形で誕生した、Rocket Lake-Sこと第11世代CoreのK付きモデルと、それらと同格の前世代モデルのスペック比較。今回もCore i9-11900Kを筆頭としたK付きモデル3種で検証する

 検証環境は前回とまったく同じ。インテル製CPUのPower Limitはインテル推奨設定、つまり、PL1=TDPとなるよう設定した。第10世代CoreプロセッサーのメモリークロックはβBIOSの制限によりDDR4-3200で動かしている。

検証環境:インテル
CPU インテル「Core i9-11900K」(8C/16T、最大5.3GHz)、インテル「Core i7-11700K」(8C/16T、最大5GHz)、インテル「Core i5-11600K」(6C/12T、最大4.9GHz)、「Core i9-10900K」(10C/20T、最大5.3GHz)、インテル「Core i7-10700K」(8C/16T、最大5.1GHz)、インテル「Core i5-10600K」(6C/12T、最大4.8GHz)
CPUクーラー Corsair「iCUE H115i RGB PRO XT」(簡易水冷、280mmラジエーター)
マザーボード ASUS「MAXIMUS XIII HERO」(インテル Z590、BIOS 0610)
メモリー G.Skill「Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX」(DDR4-3200、16GB×2)×2
グラフィックス NVIDIA「GeForce RTX 3080 Founders Edition」
ストレージ Corsair「Force Series MP600 CSSD-F1000GBMP600」(NVMe M.2 SSD、1TB)、ウエスタンデジタル「WD Black NVMe WDS100T2X0C」(NVMe M.2 SSD、1TB)
電源ユニット Super Flower「LEADEX Platinum 2000W」(80PLUS PLATINUM、2000W)
OS Microsoft「Windows 10 Pro 64bit版」(October 2020 Update)
検証環境:AMD
CPU AMD「Ryzen 9 5900X」(12C/24T、最大4.8GHz)、AMD「Ryzen 7 5800X」(8C/16T、最大4.7GHz)、AMD「Ryzen 5 5600X」(6C/12T、最大4.6GHz)
CPUクーラー Corsair「iCUE H115i RGB PRO XT」(簡易水冷、280mmラジエーター)
マザーボード GIGABYTE「X570 AORUS MASTER」(AMD X570、BIOS F33c)
メモリー G.Skill「Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX」(DDR4-3200、16GB×2)×2
グラフィックス NVIDIA「GeForce RTX 3080 Founders Edition」
ストレージ Corsair「Force Series MP600 CSSD-F1000GBMP600」(NVMe M.2 SSD、1TB)、ウエスタンデジタル「WD Black NVMe WDS100T2X0C」(NVMe M.2 SSD、1TB)
電源ユニット Super Flower「LEADEX Platinum 2000W」(80PLUS PLATINUM、2000W)
OS Microsoft「Windows 10 Pro 64bit版」(October 2020 Update)

今回使用したASUS製マザーボード「MAXIMUS XIII HERO」では、新CPUを装着するとPower Limit設定に関する注意書きが出現する。デフォルトのPower Limitは無制限設定だが、MultiCore Enhancement(MCE)を無効化することでインテル推奨設定になる、とある

メモリーのGear1/Gear2に関する訂正

 前回第11世代Coreプロセッサーのメモリーまわりの仕様に関する解説の中で、Core i7-11900K/11900KF以外は、DDR4-3200メモリーを装着した時にGear2動作になると解説した。この点は仕様的には正しいが、実運用する上では正しくなかったということを訂正したい。

 改めてGear1とGear2の違いを解説すると、メモリーコントローラーとメモリーのクロックが1:1ならGear1、1:2ならGear2となる。後者のほうが当然レイテンシー的に不利になるため、Core i9-11900K/11900KF以外はメモリーパフォーマンスに難ありという印象を与える記述をした。

 しかし、今回(精神状態が落ち着いたところで)複数のマザーボードで実際にCore i7-11700KやCore i5-11600Kを動かしてみると、DDR4-3200でも普通にGear1動作になる例が観測できた。以下の図は今回の検証環境にCore i5-11600KとDDR4-3200メモリーを組み込み、XMPを有効にしてDDR4-3200として動作させた時の「CPU-Z」の様子である。

CPU-Zによるメモリーまわりの情報。メモリーコントローラーのクロック(オレンジ囲み部)と、メモリークロック(赤囲み部)は同じようなクロックで動いている。つまり、何もしなくてもGear1動作だった

ここでBIOSに入り「Memory Controller : DRAM Frequency Ratio」を「Auto」から「1:2」になるよう手動で設定する

すると、CPU-Zではメモリーコントローラーのクロックが800MHz(前後)になり、メモリークロックの2分の1になった。メモリーコントローラーとメモリークロック比が1:2になったわけだ。これがGear2動作を示す

 つまり、実際DDR4-3200 Gear2なCPUとDDR4-3200を組み合わせても、Gear1で動いてしまう可能性も非常に高いようだ。これはメモリーの品質やマザーボード側の設計(BIOS含む)にも依存するので、必ずそうなるというわけではない。しかし、ハイクロックメモリーでもない限りはそれほど心配する必要はなさそうだ。

 DDR4-3200 Gear1動作を確実にしたいなら、Core i9-11900K/11900KFが確実だ。しかしながら、それ以外の第11世代CoreだとGear2強制になる、という前回の解説は誤りとなる。この点を深くお詫びしたい。

 ついでに、今回検証に使ったMAXIMUS XIII HEROでBIOSのメモリークロックの設定値が一部グレーアウトするのはなぜか、についてもわかったことを述べておこう。まず第11世代Coreのメモリークロックは以下の式で計算される。

メモリークロック(MHz)=ベースクロック(100MHz)×メモリーリファレンス倍率(1または1.33倍)×メモリー倍率

 メモリーリファレンス倍率とは、BIOSで言う「BCLK Frequency : DRAM Frequency Ratio」のことで、100:100なら1倍、100:133なら1.33倍になる。また、CPU-Zの「FSB:DRAM」の右項がメモリー倍率になる。例えば、DDR4-3200の場合は100×1.33×24=3192、ないしは100×1×32=3200のどちらかになる。では、Auto設定に任せた場合はどちらになるのか。今回観測した限りでは、より倍率が低くなるような設定が優先されるようだ。

MAXIMUS XIII HEROに第11世代Coreを装着し、メモリークロックを選択しようとすると特定の項目がグレーアウトする

 前回のレビューでCore i5-11600KやCore i7-11700Kを装着すると、上図のようにメモリークロックの選択肢が一部グレーアウトすることを紹介した。今回の検証環境では、BIOSの「Memory Controller : DRAM Frequency Ratio」が「Auto」の場合、メモリー倍率1.33倍(100:133)が選択され、1.33倍で表現できる設定値のみが白く表示され、1倍でしか表現できない設定はグレーアウトすることがわかった。

DDR4-2600=100×1×26……グレー
DDR4-2666=100×1.33×20
DDR4-2700=100×1×27……グレー
DDR4-2800=100×1.33×21
DDR4-2900=100×1×29……グレー
DDR4-2933=100×1.33×22
DDR4-3000=100×1×30……グレー
DDR4-3066=100×1.33×23
DDR4-3100=100×1×31……グレー
DDR4-3200=100×1.33×24
DDR4-3300=100×1×33……グレー
DDR4-3333=100×1.33×25
DDR4-3400=100×1×34……グレー
DDR4-3466=100×1.33×26
DDR4-3500=100×1×35……グレー
DDR4-3600=100×1.33×27
DDR4-3733=100×1.33×28
DDR4-3800=100×1×38……グレー
DDR4-4000=100×1.33×30
DDR4-4266=100×1.33×32
……
DDR4-5333=100×1.33×40
DDR4-5400=100×1×54……グレー

 このグレーの項目を選ぶとPOSTしないこともあるが、メモリーやメモリーコントローラー側の耐性などの条件が揃えば動く可能性も出てくる。ただし、この計算式がすべてのマザーボードに適用されると断言することはできない。あくまで今回使用したマザーボードでは、こういう制限になっていると考えていただきたい。

コア数が同じならRyzenの背後まで迫った「V-Ray Benchmark」

 前置きはこのあたりにして早速検証を始めよう。まずはCGレンダラー「V-Ray」のエンジンを利用したベンチマーク、「V-Ray Benchmark」でテストする。レンダリングシーンは利用するデバイスやAPI(CPU、CUDA、RTX)ごとに異なるが、今回は「CPU」と「GPU RTX」で試した。

 GPU RTXとは、文字通りGeForce RTX 20/30シリーズのRTコアを利用する都合上、GPUパワーで律速するため、本来はCPUの検証に適さない。しかし、GPUにフル依存するような状況でもCPUの性能が影響するかのどうかを見るために、あえてGPU RTXを選択した。

V-Ray Benchmarkの結果。グラフ内では「スコアー」としているが、正確にはCPUは「ksamples」、GPU RTXは「V-Rays」という単位になる。そのため、CPUとGPU RTXの数値を直接比較することに意味はない

 全体傾向としては前回使用したCINEBENCH R23に近い印象だ。最もスコアーを稼いだCPUは12コア/24スレッドのRyzen 9 5900Xで、8コア/16スレッドのCore i9-11900Kを大きく引き離している。また、10コア/20スレッドのCore i9-10900KのほうがわずかにCore i9-11900Kよりもスコアーが高い。

 しかし、8コア/16スレッドや6コア/12スレッドでコア数が等しいCPU同士を比べると、第11世代Coreは第10世代Coreよりも約25%程度性能が上だ。さらに、第4世代Ryzenこと、Ryzen 5000シリーズの同格CPUと大差ないスコアーまで迫ってきている。使い始めて7世代目にあたる14nmプロセスをよくぞここまで鍛え上げ、Cypress Coveという新アーキテクチャーのおかげもあるが、なんとかライバルに匹敵する性能まで高めたインテルの執念を感じた。

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