最近、カード番号が券面に書かれていないクレジットカードが出てきています。果たして使い勝手はどう変わったのか、三井住友カードが2月1日に発表した「三井住友カード ナンバーレス」を実際に作ってみました。
■ついに番号のないナンバーレスカードが登場
一般的なクレジットカードでは、カード番号や有効期限といった重要な情報がカードの券面に記載されていました。過去の経緯からこうなっているとはいえ、現代のセキュリティ意識に照らし合わせて、許容できないものになりつつあります。
そこでカード券面の情報を減らす動きが進んでおり、三井住友カードは2020年にカードの裏面に情報を集約するリニューアルを実施しました。さらに2021年2月に発表したナンバーレスカードでは、ほとんどの情報が省かれています。
カードの表面に個人情報は一切なく、裏面には発行日と名前が書かれています。署名欄は残っており、QRコードはWebサイトのURLを示しています。カード番号や有効期限は「Vpass」アプリで確認する仕組みです。
スマホの画面ロックやVpassアプリの起動は生体認証などで守られており、カードの券面に情報を載せるよりも安全です。ナンバーレスでは国内初となった「SAISON CARD Digital」など、スマホアプリを使うことを前提にしたカードが増えていくと考えられます。
■クレジットカードの弱点をアプリが補完
三井住友カードのVpassアプリでは、カードの利用明細などを確認する機能以外に、クレジットカードの弱点を補う機能も用意されています。
たとえば「あんしん利用制限サービス」では、アプリの操作で簡単にカードを止められます。ネットショッピングや海外利用のみを制限する選択肢も用意されているなど、細かい指定もできるようです。
実際に試してみたところ、アプリで利用制限をかけた直後にカードを使ってみると、エラーになりました。次に、利用制限を解除してすぐに決済をしてみると、問題なく決済ができました。画面の表示通りに機能しているようです。
また、カードの盗難や紛失により第三者の手に渡ると、かざすだけで使える「Visaのタッチ決済」などで悪用される可能性があります。しかしこの機能があれば、カードがないことに気付いた時点ですぐにアプリで止められる安心感があります。
クレジットカードのもう1つの難点が不正利用ですが、最近は利用があるたびに通知を送ってくれるカードが増えています。Vpassアプリでは金額を指定するオプションがあり、一定以上の金額が利用された場合だけ通知できるのは便利です。
このようにアプリを組み合わせることで、クレジットカードの弱点だった不正利用への対策ができます。これからクレジットカードを選ぶ際には重要なポイントになるでしょう。
■「Vポイント増量」キャンペーンは本気だ
クレジットカードとは別に、三井住友カードは独自のポイントプログラム「Vポイント」のアプリもリリースしました。スマホ上で発行できるプリペイドカードを組み合わせることで、Vポイントを「残高」にチャージして決済に使えるようになります。
ただ、ナンバーレスカードは基本の還元率が0.5%と低く、あまりVポイントがたまる印象はありません。楽天やdポイントなど、自分がためるポイントを決めている人も多いと思われる中で、なかなか厳しいように思えます。
その中で注目したいのが、Vポイントから残高へのチャージで20%を増量するキャンペーンです。Vポイントを持っていない人でも、Gポイントなど他社のポイントからVポイントに交換することで増量のチャンスがあります。
他社も似たような施策は実施しているものの、Vポイントの場合は20%増量かつ上限なしという大盤振る舞いです。今回のキャンペーンは2021年3月31日までとなっているものの、今後も定期的な実施を期待したいところです。
ポイントサービスの競争では、楽天を含む携帯キャリアが非通信事業の拡大を合い言葉に勢力を伸ばしています。その中で三井住友カードの動きには「本気で巻き返したい」という意図を感じるだけに、業界の勢力図がどう変化するか注目です。
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