Rocket LakeではCore i3が発売されない可能性大
さてその下のグレード、つまりCore iシリーズであるが、Rocket LakeではCore i3が見送りになるのでは? という予想がでている。
これはなにか支障があるというわけではなく、Ryzen 5000シリーズがRyzen 5/7/9の3つのSKUだけになっている(おそらく今後Ryzen 3はAPUタイプに片寄せされていくと筆者は想像している)ので、これへの対抗馬という意味でも別にi3のSKUは直近では必要ないし、無理に高価なRocket LakeのダイをCore i3に投入したくない(そうでなくてもこのところインテルのASPは下げ方向になっている)という事情もあるかと思う。
もちろん技術的になにかCore i3に投入することに支障があるわけではないので、仮にマーケティング的に必要と判断されたら後追いで追加されることになるだろう。Rocket Lakeそのものの説明は連載585回でした通りで、内部構造などに関しては特に新しい情報はない。
おそらく性能という観点ではRyzen 7 5800Xを超え、Ryzen 9 5900Xに近い性能を出すケースもベンチマークによってはある(AVX512を利用できるとさらに性能がハネ上がる)だろうが、その一方で消費電力はお察しであって、性能/消費電力比では勝負にならないだろう(今年の寒冬にはちょうど適してると言えるかもしれないが)。その分、価格を下げてくる格好で競争力を維持するというシナリオが考えらえる。
そのRocket Lakeであるが、消費電力がなかなかおもしろい。今聞こえている話では、ハイエンドのCore i9-11900Kは、定格3.4GHz/ブースト4.8GHzだそうで、TDP/PL1は125W、PL2は250Wとされる。
問題はその下、倍率ロックの掛かったCore i9-11900で、定格1.8GHz/ブースト4.5GHzであるが、こちらはTDP/PL1 65W、PL2が224Wに設定されているらしい。どうもインテルのCPUは消費電力が多い(こればっかりは14nmプロセスを使っているのだからどうしようもない)という批判をかわすためかどうか、定格を異様に低く抑えることでPL1を下げるという形の製品展開になっているらしい。
1.8GHzで動いてれば、それはTDPも低いとは思うが、なんだかモバイル向け製品のような動作周波数設定である。こうした設定が性能にどの程度のインパクトを与えるかは、おそらく製品レビューの際にKTU氏ががっちりテストしてくれるはずなのでお任せする。
ちなみにこのKの有無で基本周波数が大きく変わるのはCore i5/i7も同じ模様で、いずれもKなしは1.8GHz近辺、Kありは3GHzオーバーになっている。これはそのままTDP/PL1に反映されており、Kなしは65W、Kありは125Wになっているらしいのも無理ないところである。またTモデルはTDP(=PL1)は35Wだそうだが、PL2がどこまで跳ね上がるかは不明である。
ラインナップとしてはロードマップ図に示した通り、Core i9-11900/K/T、Core i7-11700/K/T、Core i5-11400/T、i5-11500/T、i5-11600/K/Tとトータルで13製品もある。
ここで一番わからないのが、Core i7とCore i9の違いである。今聞いている限りでは動作周波数以外の違いが見当たらないのだ。どちらも8コア/16スレッド、3次キャッシュは16MBであり、搭載するGPUも32EUとされる。なにか他に差別化を見出す要因が特に聞こえてこない(あるいはCPUから20レーンのPCIe Gen4が出るのはCore i9だけ、とかだろうか?)のは少し不思議である。
Core i5は6コア/12スレッドで、3次キャッシュは12MB。一部SKU(Core i5-11400/T)のみGPUが24EUになるそうだが、それ以外は32EUに設定されている。
さて、そんなわけでCore i3とPentium/CeleronはComet Lakeが引き続き使われることになるが、こちらも一応Comet LakeからComet Lake Refreshになる。もっとも大きく仕様が変わるわけではないようで、おそらくは動作周波数を1~2bin程度引き上げる程度と思われる。
このRocket LakeとComet Lake Refreshであるが、発売そのものは3月になるだろう。これに先んじて、1月11日からオンラインで開催されるCESにあわせて1月11日にNews Conferenceを3つ開催する。このうち、CPG(Client Computing Group)のGM兼EVPであるGregory Bryant氏による“Do More with the Power of Computing”の中でこれらが発表されるのではないかと筆者は考えている。
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