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あのクルマに乗りたい! 話題のクルマ試乗レポ 第63回

新型208試乗レポ! プジョーと20×シリーズの価値はその歴史にある

2020年12月19日 12時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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最新の208はEVもラインナップ

 新しくなった208は、いくつもの特徴があります。まず大きな話題となったのは、エンジン車とEV(電気自動車)の2つのバージョンを同時に発売したことです。エンジン車の208に対して、EVは「e-208」と名乗っています。

プジョー「208」

 ところがプジョーは、エンジン車とEVのデザインや装備類は、ほとんど同じにしました。室内も荷室も同じです。「もはやEVも特別なものではありません。パワートレインのチョイスで専用モデルを選ぶ時代ではないのです」とプジョーは説明します。ただし価格は、エンジン車が239万9000円~293万円に対して、EVは389万9000円~423万円となります。それでも50kWhものバッテリーを積んで、日産「リーフ」と同等レベルの価格設定は、かなり頑張った値付けと言えます。

 エンジン車とEVを同じデザインにできたのは、新たに開発したCMPというプラットフォームの存在があります。同じ居住空間を保ったまま、エンジンとモーター&バッテリーという異なったパワートレインを搭載することを可能としているのです。

 エンジンは、最高出力100馬力、最大トルク205Nm。8速ATとの組み合わせでWLTCモード燃費が17.0kmk/l。モーターは最高出力136馬力、最大トルク260Nm。最大航続距離が340㎞。車両重量がEVの方が330㎏ほども重いので、体感できるパワー感は、それほど変わらないことでしょう。

 そして、もう一つの特徴はデザインです。プジョーは、新型208のデザインは2015年のフランクフルトモーターショーで発表された「プジョー・フラクタル・コンセプト」のデザインからインスパイアされたものと説明します。フロントウインドウの位置が、先代よりも後ろに移動し、ボンネットが長く、トラディショナルなフォルムとなりました。それでいて、全体として、大きな塊から削り出したかのような力強さを感じさせます。ヘッドライトの下に伸びるデイタイムランニングライトは、通称「セイバー(サーベルの意)」は、まるで牙のようにも見えます。大きなネコ科の動物のようです。

 デザインで驚くのは室内も同様です。小さなハンドルの上にメーターを配置する、先代208でも採用された「i-Cockpit」コンセプトは新型も踏襲。さらに3Dに進化しました。なんと、メーター内の表示が、奥行きのある二層になっているのです。

 そして、最後の特徴が先進運転支援システムの充実です。自動車、二輪車、歩行者に作動する衝突被害軽減自動ブレーキ「アクティブセーフティブレーキ」や、先行車を追従する「アクティブクルーズコントロール(ストップ&ゴー機能付き)」、走行車線からのハミ出しを防止する「レーンキープアシスト」など、先進運転支援システムの普及が進む日本車と同等の装備が用意されているのです。

エンジン車でもまるでEVのようなフィール

 今回、試乗したのは、1.2リッター直列3気筒ターボエンジンを搭載する「208 Allure」。3つあるグレードのうち、真ん中になるもの。LEDヘッドライト、16インチホイール、ファブリックシート仕様で、価格は259万9000円となります。オプションのカーナビを装備。エアコン・スイッチの下には、ワイヤレス給電可能なスマートフォン置き場があり、USB-AとUSB-Cの2つのポートがありました。

 乗ってすぐに分かったのは、プジョーらしいしなやかな乗り心地です。路面の凹凸の嫌なショックは上手にいなします。また、静粛性の高さも特筆すべきところでしょう。エンジンの音も低く抑え込まれています。静かで快適です。

 一方で、アクセル操作に対して、レスポンスよく力強い加速感が得られます。ターボは、高回転で力を振り絞るというのではなく、低回転から大きなトルクを発生させるという特性のようです。エンジン排気量1.2リッターではなく、2リッターもしくはそれ以上のように思えるほどの低回転域の力強さです。そうした特性のせいか、エンジン回転数はあまり高くまで上がらないことも、エンジン音が小さい理由のひとつとなっていました。

 ただし、低回転は力強いのですが、深くアクセルを踏み込んでも、期待したほどパワーの高まりはありませんでした。やっぱり、カタログ値の100馬力程度。ごく普通と言う感じです。

 面白いと思ったのは、「低速で力強く、そして静か。でも高回転まで回しても、パワー感が伸びない」という特徴は、EVと同じということ。モーターは低回転から大きなトルクを出せますが、高回転まで回しても、そんなに力が出ません。つまり、新型208はエンジン車もEV車も、走り味が似ているだろうということです。

 要するにエンジン車だろうとEVだろうと、新型208は同じデザイン、同じ装備に同じ使い勝手、そして同じ走り味が楽しめるということ。今後、ハイブリッドやプラグインハイブリッド、そしてEVなどの電動化したクルマが激増することが予想されます。そんな中で、モーターでもエンジンでも同じ走り味を提供する新型208は、まさに電動化時代の1台と言えるでしょう。

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筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 

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