マイナーチェンジで日本初のARナビを採用
現在、発売されているEクラスは、2016年に登場した第10世代目となるモデルです。衝突被害を軽減する自動ブレーキなどの最新の運転支援機能を満載するだけでなく、対話式で操作も可能な新世代のインフォテイメントシステム「MBUX」を採用しているのが特徴です。もちろん、ディーゼル・プラグインハイブリッドなどの最先端のエンジンも用意されています。
外観の変更は、前後のライト類とグリル周りが中心。つまり、顔つきがよりシャープになりました。新世代のステアリングホイールは、真ん中のエアバッグが小さくなり、スポークが6本になりました。そのうち左右の4本のスポークスイッチが並びます。AR(ナビゲーション)とは、走行中にカーナビゲーションの画面に車両前方の実際の交差点の風景が映しだされ、その中に矢印などで曲がる方向を教えてくれるというもの。運転支援システムのアップデートでは、交差点を右折しようというときに直進してくる対向車との衝突に対応する自動ブレーキ機能が追加されています。
先進性と高級感がバランスするインテリア
現在のメルセデス・ベンツの特徴であり、大きな魅力となっているのがMBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス)と呼ばれるシステムです。これはドライバーの前に据えられた、まるでパソコンモニターのようなディスプレーなどで構成される、ドライバーとクルマをつなぐインフォテイメントシステムです。針を有するアナログのメーターではなく、カラーモニターを使って車速や現在位置、クルマの状況が伝えられます。モニター内の操作は、ステアリングなどの物理的なスイッチだけでなく、モニターへ直接タッチすることでも可能です。さらに言えば「ハイ! メルセデス」と声をかければ、AIスマートスピーカーのように会話形式でカーナビやオーディオ、エアコンの操作などが可能となります。現在の自動車用のシステムとしては、文句なしに最先端のひとつとなります。
ここで感心させられるのは、最先端というだけでなく高級感もあるところです。Eクラスの室内のインテリアにはレザーとウッド、クロームがふんだんに使われるだけでなく、アンビエントライトまであり、プレミアムカーと呼ばれるだけの高級感が漂います。その雰囲気にMBUXの大きなディスプレーが、ごく自然にマッチしています。高級ホテルの一室に大きなテレビが置いてあるかのようです。
また、新しくなったステアリングは左右の4本のスポークにタッチスイッチが備わっています。右の上にあるスイッチは、ドライバーの前のモニターの操作で、右下は運転支援システムのACC(前走車を追従する機能)用。左の上は、ドライバーの左手にあるセンターディスプレーの操作、そして左下はオーディオ系です。操作する対象に近い場所にスイッチがあるため、直感的な操作が可能です。非常に合理的なスイッチと言えるでしょう。
AR(現実拡張)ナビは、交差点など分岐ポイントになると機能がスタートし、ディスプレーにクルマの前方の風景とともに進むべき方向が示されます。正直、かなり画面が賑やかで、従来のカーナビに慣れた人は違和感を覚えるかもしれません。逆に、従来のナビに慣れていないというのであれば、偏見なしにわかりやすい標示でしょう。どちらにせよ、最先端で斬新であることは間違いありません。
このように高級感と先進感がバランスしたEクラスのようなインテリアは日本車にはないもの。世界最高峰のプレミアムカーであることに納得できます。
走ってわかる実用性の高さとは
今回試乗したのは、エントリーグレードとなるE200 Sport(769万円)です。搭載されるのは、184馬力の1.5リッター直噴ターボ・エンジンで、マイルドハイブリッド「BSG」付き。燃費性能は13.1㎞/lです。
正直、パワーも燃費性能も数字だけ見るとたいしたことはありません。とりわけ俊足なクルマではないということです。しかし、どっしりとしていて安定感は抜群。直進性も素晴らしく優れています。つまり、高速道路を延々と走るのがものすごくラクなクルマなんですね。さらに充実の運転支援システムも備わっています。もしも前を走るクルマが急ブレーキをかけても、自動ブレーキ機能が備わっていますから安心感も抜群。ノンビリした気分で走れるため、運転の疲労度が非常に小さくなります。
つまり、高級感たっぷりの室内で快適なまま、遠くまでラクに安全に移動できるというわけです。まさにEクラスの伝統そのままです。しかも、現在のEクラスには、AMGという高性能モデルも用意されています。速度無制限もあるドイツのアウトバーンを移動するなら、とんでもなく速く移動することも可能です。
マイナーチェンジで新しくなったEクラスは、先進性や高級感、安心感たっぷりの走りといった伝統的な魅力をさらに磨きこまれたクルマでした。古臭くならぬように、常にブラッシュアップし続けるからこそ、約90年の間、常に世界トップのブランドとして君臨することができたということ。世界的ブランドの底力を感じる試乗となりました。
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