クラウンが富士24時間レースでクラス優勝!
ベースの高級セダン「クラウン」を掘り下げる
9月4~6日に富士スピードウェイでピレリ スーパー耐久シリーズ2020開幕戦「NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」開催されました。その富士24時間レースに57年ぶりにサーキットレースに参戦したトヨタの高級セダンであるクラウンがベースの「埼玉トヨペットGBクラウンRS」。
ライバルがフェアレディZやレクサス RC350などスポーツカーやクーペというST-3クラスにあって、クーペルックといえども4ドアのクラウンが参戦するのは奇をてらったように見えるかもしれません。しかし、なんとこのクラウンが富士24時間レースで優勝してしまったのです。
チームのドライバーでありながら埼玉トヨペットをけん引する平沼貴之社長は、レース前に「自社で販売している現行車種でスーパー耐久に参戦することに意味がある」と語っています。昨年まではマークXでST-3クラス参戦していましたがマークXは現在販売終了となり、またGRスープラも取り扱い車種ではありますが参戦クラスが大きく変わってしまうこと、SUPER GTでGRスープラによる参戦を行なっていることからスーパー耐久では使用しないことになり、そうなるとST-3クラスに参戦できるのはクラウン RS(約507~580万円)の2リッターターボということになるのです。
そんなクラウンが、豪雨と暗闇と灼熱が次々と襲い掛かる富士24時間レースで見事優勝となったことで、「クラウンってどうなの?」と注目を集めているのです。
ジャパンオリジナルに
ヨーロッパテイストをトッピングしたクラウン
クラウンは初代が1955年に発売され、2020年現在で65年という長い歴史を誇り、その歴史のすべてを高級車として存在しているという、国産車の中では稀な存在です。そんなクラウンの現行モデルである15代目、S22型が発売されたのは2018年の6月で、現行型もすでに発売から2年の時を経た熟成モデルとなっています。
その15代目クラウンを、日本レースクイーン大賞の大賞受賞で今年のSUPER GTではGT500クラスの「DENSO KOBELCO SARD GR Supra」を応援するKOBELCO Girlsとして、また東京オートサロン2021のイメージガール「A-class」にも選出された中村比菜さんと一緒に見ていきましょう。
65年の長い歴史の中でライバルは次々と淘汰されていき、現行クラウンには国内にライバルがいなくなってしまいました。日産やホンダにも似たようなカテゴリーのセダンは存在しますが、特に現行モデルの国内販売台数ではライバルはクラウンの足元にも及びません。国内需要のみを考えた国内専用車種のクラウンと、大げさに言えばそのすべてが海外とモデルを共用して国内販売をしているにすぎないライバルたち。この違いが主な理由と言えるでしょう。
現在の15代目クラウンはトヨタの新しい設計思想である「TNGA」を採用したプラットフォームを使って新設計され、全長が4910mm、ホイールベースが2920mmとかなり長いボディーを持ちますが、全幅は1800mmにとどまるかなり細長いプロポーションで、決して広くない日本の道幅に対応します。海外とモデルを共用する国産のライバルはおおよそ1850mm程度の全幅で最小回転半径はおおむね5.7m。クラウンの方がライバルより10cm長くても最小回転半径は5.3mと断然小回りが効くように作られています。国内の顧客を見つめ続け、国内モデルでは何が必要なのかを明確に示す姿勢が販売台数に反映されていると言えるでしょう。
国内メーカーのライバルが淘汰されてしまったことで、新たな敵は誰なのか? と考えた場合、特にセダンで競合するのはヨーロッパメーカーのアウディA4やBMWの3シリーズ、メルセデス・ベンツのCクラスです。
これまで、特に7代目から13代目のクラウンはユーザーの高齢化が大きな課題となっていました。特に11代目以降はいわゆる団塊の世代の年齢層が乗るクルマとしての認識が高く、それ以下の世代には見向きもされないクルマとなっていました。人口のボリュームゾーンを考えれば、それまでは団塊以上の年齢層をターゲットにしていても商業的には問題がなかったかもしれません。しかし、その層が定年退職などを迎えると一気に購買力が下がり、クラウンからプリウスに乗り換えるユーザーが激増します。そこで先代の14代目クラウンからユーザー層の若返りをはたすべく様々な施策がとられてきました。
先代ではボディカラーにピンクや若草色を取り入れたり、CMキャラクターも豊川悦司さんを起用するなどある程度の注目を浴びることで成果に結びつけたようですが、現行の15代目ではそもそも30代から50代未満のターゲット層にもっと訴求するようなクルマとは何か? というところをクラウンに落とし込んでいったと言います。
プラットフォームが刷新される機会に、ターゲット層がセダンを買うにあたって比較するであろうヨーロッパのスポーツセダンと比肩する性能を手に入れなければ、上辺だけ若返りをはたしても意味がない、という議論が生まれます。そこで走行性能を磨くべくドイツはニュルブルリンク北コース、ノルドシュライフェでの走り込みが行なわれました。つまりジャパンオリジナルにヨーロピアンなスパイスをトッピングしてきたのです。
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