ASCII Power Review 第99回
5年ぶりにモデルチェンジした7Sの威力は!?
α7SⅢ 実機レビュー = フルサイズ1200万画素で感度も階調も最高峰なのである
2020年10月10日 13時00分更新
ソニーα7Sシリーズの3代目となる「α7SⅢ」が発売となった。前モデルから約5年ぶりのモデルチェンジとなり、4K120Pや外部レコーダへの16bitRAW出力など、より動画機能が充実され映像制作向けカメラして注目されている。
しかし初代から一貫して1200万画素の撮像素子を採用し、その控えめな画素数から得られる階調の再現力や高感度画質が気になっている静止画ファンも多いはず。そこで実際に撮影してみて感じた「α7SⅢ」の静止画性能に限ってお伝えしよう。
フルサイズで1200万画素の威力
高感度性能と階調表現は世界最高峰なのだ
フルサイズミラーレスの元祖でもあるα7シリーズは、旧機種も継続してラインナップされ、区別がしにくいという声をよく聞く。ここで簡単におさらいしておこう。
スタンダードモデルになるのが無印の「α7」。初代から約2400万画素の撮像素子を搭載し2018年発売の3代目「α7Ⅲ」が最新モデル。
そして、機種名にRが付くのが高画素モデルで、初代は2013年発売で約3600万画素の「α7R」。最新モデルは6100万画素まで解像度を向上させ2019年に登場した4代目「α7R Ⅳ」だ。
今回紹介する「α7S」シリーズは2014年に初代、2015年に2代目と立て続けに登場し、その後5年の歳月を経てようやく3代目となる。さらに今年10月末には大幅にコンパクトなボディーになった「α7C」も登場。現在は生産中止になった初代「α7R」を除き全10機種がラインナップされている。
「α7SⅢ」の最大の特徴となるのは、やはり1200万画素の撮像素子だろう。スタンダードなフルサイズ機の2400万画素の半分、高画素モデル「α7RⅣ」と比べると約1/5の解像度しかなく、スペックだけ見ると物足りなく感じるかもしれない。
しかし画素数が控えめなぶん、1画素当たりのサイズは大きくなるので、より多くの光を取り込むことができる。そのメリットとして思い浮かぶのが高感度だ。
最高感度は常用でISO102400、拡張機能でISO409600まで設定が可能だ。感度別に撮影した画像を見てみると、期待通りの高画質でISO12800までは安心して常用することができ、ISO25600を超えたあたりからようやく画質劣化が感じられる。
ISO51200でもノイズ処理による解像感低下はあるが十分実用的な画質だと思う。ノイズ処理をオフにしてみるとISO12800あたりから少しずつノイズが見え始め、感度が上がるごとにノイズが増えてくるが、やはりISO51200程度までは許容できる範囲だ。なお常用感度最高のISO102400を超えると急激に色ノイズが目立つようになる。この画質の違いが常用感度と拡張感度を区別している理由だろう。
また実際に撮ってみて優れていると感じたのはISO6400前後の画質。今時のフルサイズ機ならISO6400でも十分常用できるが、それでも解像感を重視するときはノイズ処理の設定を考えたり、明暗差が大きい状況などでは暗部のノイズに注意し露出にシビアになることもある。
ところが、「α7SⅢ」のISO6400は、解像感は十分保持され、後処理で暗部を持ち上げても画像が破綻することもない。まるで他機種のISO1600程度で撮影しているような安心感がある。ステージ写真や室内スポーツなどを主に撮影しているプロにとってはこの高感度画質は強い味方になるだろう。
日中の風景やスナップなどの撮影では1200万画素という解像度を気にする人がいるかもしれないが、撮影した画像を等倍で見ても十分精細に描写されている。A2サイズ以上にプリントや画像の一部を極端にトリミングするなどの用途でなければ不満を感じることは無い。
なにより惹かれたのが階調の豊富さだ。明暗差もちろん、薄曇りの空の陰影や被写体の質感などが滑らかさ再現され、シャープな解像感を売りにした高画素モデルより現実感がある写真に感じられた。これも1画素の面積が大きい画素数控えめの撮像素子の恩恵だ。
肉眼では見えなかった細部も拡大すればクッキリと写すという点では高画素モデルのほうが優れているが、肉眼で見て感じた印象を記録するという写真本来の目的からすると、この階調再現はとても魅力的である。とはいえ画質の好みについてはひとそれぞれ。作例をみて自身で判断していただければと思う。
第4世代ボディーに944万ドットの最高峰EVF
メニューの構成も(ついに?)変更
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