●次なる目標は、素材
個人的にアップルの2020年モデルのiPhoneで注目しているのは、プロセッサ、カメラ、5G対応に加えて、外装の素材です。全ては難しいとしても、一部のモデルだけでも、100%再生アルミニウムや低炭素アルミニウムで作られていたら、称賛に値すると考えています。
アップルは年間2億台前後のiPhoneを作り続けています。1台あたりおよそ200g程度のスマートフォンを、リサイクル素材なしで作り続けていれば、2億台ぶんのiPhoneより大きな穴を地球に開け続けていることにほかなりません。そう言われれば、このビジネスに持続性がないことがすぐわかると思います。
そこでアップルは、MacBook Air、Mac mini、iPadなどの製品を100%再生アルミニウムの外装としました。また、iPhone、iPad、Mac、Apple Watchに使われる希土類元素(レアアース)は、100%リサイクルされて作られており、リサイクルされたレアアースのみを用いて作られたスマートフォンとしては初めてとなります。
アルミニウムのリサイクルが重要な点は、その精錬に二酸化炭素の大きな排出が伴うからです。そこで昨年アップルは、米国とカナダの大手アルミニウムメーカーとともに、酸素を排出するアルミ製錬技術の実用化に取り組み、MacBook Pro 16インチ向けの製造を開始したことも明らかにしました。
その低炭素アルミニウムがiPhoneにも活用されるなら、iPhone製造に関わるカーボンフットプリントに大きく影響を与えることになるでしょう。
アップルで最もクリエイティブな現場こそ環境対策だというリサ・ジャクソン氏の言葉を今一度思い出しながら、環境進捗報告書を見ると、その言葉の意味とエキサイティングさをより深く感じることができるのではないでしょうか。
アップルですら、地球に対して、まだまだできることがたくさんあり、これに一挙に取り組んでいるのです。筆者が「アップルの環境対策がイノベーションの中心であり、最も注目すべき」と考えている理由でもあります。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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