Dropbox調査で4割がテレワーク実施、9割が「時短効果」を実感。一方で非実施者との意識差は大きく
コロナ禍で「1年分の問合せが1日で来た」テレワーク協会のDropbox活用
2020年07月27日 07時00分更新
全体では4割が「週1日以上のテレワーク」実施、ただし地域/業種で大きな差
Dropbox Japanからは、国内企業のテレワーク実態調査結果が報告、説明された。同調査は2019年10月末に実施した調査の一部をあらためて2020年4~5月に実施し、企業の意識と実態がどのように変化したのかを明らかにしている。全国のホワイトカラー1000名(22~69歳)を調査対象として、インターネット調査で行われた。なお、非オフィスワーカーが含まれる可能性があるため、今回の調査対象から製造業、運輸業の一般職については除外している。
Dropbox Japan マーケティング本部長の上原正太郎氏は、調査結果から大きく5点をピックアップして紹介した。
まずはテレワーク導入率からだ。全体では約4割の回答者が、調査実施時点(本調査:5月11、12日)で週1日以上のテレワークを実施していた。ただしこれを地域別、業種別に見ると、導入率に大きな差があることもわかる。たとえば「関東」エリアでは54.3%だった一方で、「北海道/東北」は25%、「中国/四国」は23.6%にとどまり、導入率で2倍以上の差が出ている。
また、業種別に見ると「通信・情報サービス」が62%と突出して多く、それ以外の業種とは大きな差が見られる。また「週5日以上テレワーク実施」、すなわち完全テレワークの割合も高かった。
日系企業/外資系企業/政府公共系機関の比較では、「1日以上のテレワーク導入率」という意味では大きく変わらないものの、外資系企業では「週5日以上」、政府公共系機関では「週2日以下」の割合がそれぞれ高い結果となった。
テレワーク実施者に対し、在宅勤務で実際に困ったことを尋ねると、「社内の必要なファイルにアクセスするのが不便だった」(39.3%)、「印鑑を押す書類があった」(34.3%)、「チームメンバーの業務・進捗管理の可視化に課題があった」(34.3%)などが上位となった。特に政府公共系機関においては、社内ファイルへのアクセスを課題に挙げた回答者が67.6%、押印の必要な書類が同45.9%と高い割合を占めている。
テレワーク実施者が「やむを得ず出社した」理由も、紙資料または電子ファイル資料の確認が必要だったため、という回答が上位2つを占めている。
もうひとつ、コロナ禍以前からテレワークを導入していた企業では「特に困らなかった」が45.5%を占めており、全体平均17.7%と比べると非常に高い。この結果から上原氏は、「テレワーク実施のためのインフラ(基盤)が整っている企業では、課題感は薄まってきている」と説明した。
在宅勤務を実施した人/していない人の間には大きな意識差が生まれている
オンライン会議の導入率については、昨年10月に実施した調査から約半年で、社内外かかわらず1~2割の増加が見られる。とはいえ、どんな種類の会議/ミーティングでもまだ、「もっぱらオフライン(対面)で」という回答が3割前後を占めている。
「まだまだ対面でのミーティングから脱却し切れていないのが実情。(前出の「やむを得ず出社した経験」回答データから)特に経営層~部長クラスの回答者は、対面型での会議があるために、3割以上(32.3%)がやむを得ず出社したと回答している」(上原氏)
続く「在宅勤務の実施により、一日平均何時間を有効活用できると感じるか」という問いについては、回答者のテレワーク経験(在宅勤務実施者と非実施者)によって大きな意識差が生まれている。
非実施者の過半数(52.7%)が「時間の有効活用にはつながらない」と捉えている一方で、実施者では9割超(90.8%)は有効活用につながると答えている。特に「週5日以上」の完全テレワーク実施者では、「1日平均3時間以上」の有効活用につながっているとする回答が35.8%を占めている。
また、今後在宅勤務を導入/継続する場合のメリットについても、在宅勤務実施者は「健康増進(ワークライフバランス)」(48.0%)、「長時間労働の是正」(46.0%)を多く挙げている一方で、非実施者は「特になし」(49.7%)が最多の回答となっている。
企業におけるテレワーク環境の整備が、就職先として選ばれるかどうかのポイントになりうることも示唆されている。
今後就業する会社を選択する際に、在宅勤務環境の有無が「影響を及ぼすと思う」とした回答者は全体の47.1%。特に20代(60.7%)、30代(52.6%)の回答者はそう考える傾向が強い。さらにここでもまた、在宅勤務の実施者(63.2%)と非実施者(36.3%)で大きな意識差が見られる。
「特に20代、30代の人材の流動性が高い中で、経営の考え方としてもリモートワーク環境を整えることが、よりよい人材を引きつける重要なポイントになると考える」(上原氏)
在宅勤務実施者に対し、将来的にコロナ禍が収束した後も在宅勤務の体制整備/強化を勤務先に望むかを問うた設問では、全体のおよそ8割(80.6%)が「望む」と回答している。年代別、役職別などで見ても大きな違いはないが、外資系企業群のみ「特に改善の必要性は感じていない」(37.5%)という回答が多かった。
具体的に整備/強化を望む点を見ると、全体では「ノートPCや携帯電話といったデバイスの支給」(40.1%)、「セキュアな環境で社内資料を閲覧し、作業する仕組み」(39.8%)、「承認など社内プロセスの電子化」(36.4%)が上位3つの回答だった。なお20代では「リモートワークに肯定的な文化の醸成」(45.8%)、「クラウドのオフィスツールの導入」(45.8%)という回答が多く見られた。
* * *
今回の調査結果について、Dropbox Japan 社長の五十嵐氏は「ナレッジワーカーに対象を絞って調査を実施したが、半数以上(54.0%)が『テレワークできる業務がまったくない』と回答するなど、非常に興味深い結果だ」と述べた。
その一方で、前週に政府経済財政諮問会議が発表した「骨太の方針」の中で、1年間集中的に、数値目標を定めてテレワークの定着に取り組むという方針が示されたことにも触れ、「いよいよ“Nice to Have”から“Must to Have”になったのではないか。取り組むタイミングも(ゆくゆくはではなく)『今やるべき』になった」とコメントしている。
なお、経営者~部長クラスの回答者がテレワークのメリットに懐疑的という結果に関して、「経営層などの高度な意思決定はテレワークでは難しいと思うか」という記者からの質問に対し、五十嵐氏は「わたしは外資系企業での勤務経験に偏っているからかもしれないが」と前置きしたうえで、次のように答えている。
「わたしの場合は海外とも毎日議論(オンライン会議)をしているので、意思決定が難しいとは思わない。ただし、オンライン会議の場合は会議中に、“明示的に”決定をしなければならないという違いがある。対面会議のように終了後、会議室から三々五々帰りながら『あの件についてだけど……』などと解決する、そういう“暗黙的な”これまでの意思決定方法を改めれば、難しいことではない」(五十嵐氏)
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