「カチャトーラ定食」
松屋
790円
https://www.matsuyafoods.co.jp/matsuya/news_lp/200317.html
松屋の世界紀行シリーズ第2弾
イタリア料理の起源はとても古く、古代ローマ帝国までさかのぼれます。もっとも、トマトとなると、ラテンアメリカ原産ですから、古くからあったわけではありません。トマトがイタリア(というか、ヨーロッパ)に広まったのは、16世紀以降のことだそうです。
どうしてイタリア料理とトマトの話をしているかといえば、「カチャトーラ」にもっていきたいからです。牛めし・カレー・定食などを販売する松屋は、「カチャトーラ定食」を3月17日から一部店舗を除く全国で発売しています。価格は790円。
カチャトーラ(Cacciatore)とは、“猟師風の”という意味のイタリア伝統料理です。鶏肉と野菜のトマトソース煮込みといったところでしょうか。北イタリアでは白ワインが、南イタリアでは赤ワインが用いられるなど、地域によって作り方も異なるそうな。
松屋のカチャトーラ定食は、特製のトマトソースに、鉄板でジューシーに焼き上げたという鶏もも肉、ズッキーニやパプリカなどの彩り野菜、チーズをプラスし、ごはんに合うように仕上げたとのこと。ニンニクを使用しており、「チーズ・トマト・鶏肉・ニンニクが、絶対の味を約束」とうたいます。ライス、味噌汁、生野菜付き。
チーズ2倍の「ダブルチーズカチャトーラ定食」も用意。こちらの価格は830円。いずれも持ち帰り可能ですが、持ち帰りの場合、味噌汁はつきません(別途60円)。なお、新発売を記念して、カチャトーラ定食、ダブルチーズカチャトーラ定食は、3月31日午前10時までライス大盛への変更が無料です。
松屋は、今年1月に南コーカサスにあるジョージアの料理「シュクメルリ」を松屋流に再現した「シュクメルリ鍋定食」を発売して話題を呼びました(2019年12月に一部の店舗で先行発売されたもの)。カチャトーラ定食は、シュクメルリに続く世界紀行シリーズの第2弾となります。
ところで店内放送で「松屋のごろごろチキンが……」みたいなことを言っていましたが、「ごろごろ煮込みチキンカレー」の復活はまだでしょうかね。鶏肉を使った新メニューが出るたびに言っている気もしますが……。
トマト×チーズ×ニンニクのガツンとした刺激のある味
ともかく、カチャトーラです。食べてみると、トマトとチーズの旨味が強く、このタッグの相性のよさを感じます。ニンニクの香りも強いのは、シュクメルリ定食に似た要素を感じました。全体が調和しているというよりは、一つ一つの刺激がガツガツ来る感じ。味が濃いですね。
味が濃いといっても、メインは淡白な味わいの鶏肉ですし、チーズのまろやかさが加わることで、トマトの酸味がほどよく主張する、バランスの取れた味付けになっているといえます。パプリカ、ズッキーニなども、大きめに切られているため、食感が残っており、ソースの味と香りの強さの中でもきっちり主張してきますね。
トマト×チーズ×ニンニクのキャラ立ち三人官女に囲まれた、ごろごろチキンと彩り野菜のお内裏様とお雛様、遅れてきたイタリアのひな祭り……という風情で、ガツンとした刺激のある定食です。確かにごはんは進みますが、かなり力強い味なので、たくさん食べられる人なら、ライスは大盛りにしたほうがいいでしょう。あっさりした味わいを求める人にはあまり向ないかもしれません。
790円という価格も、すこし惜しいかな。「ビーフハンバーグステーキ定食」と同じ価格。もう少しお手頃であれば……と考えてしまいます。
イタリアというのは、昔から「美しい方はより美しく、そうでない方はそれなりに」的な美的感覚があるようで、美食はもちろん、芸術の国としても知られるのですけれど、時おりギラギラッと過剰になるところもありまして、カチャトーラ定食にもそんなテイストが感じられます。
ギラッとしたインパクト、ガツガツした攻めの雰囲気。イタリアの音楽で例えれば、Museo RosenbachとかIl Balletto Di Bronzoとか、あのあたりを思い起こさせるテイストではあります。どれだけの人が、松屋の定食でイタリアのプログレッシブ・ロックを思い出すのかは謎ですが。
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ところで、味噌汁もつきますが、トマトシチュー的な味わいのカチャトーラのあとに飲むと、口の中が不思議なことになりますね……。もっとも、シュクメルリ定食のときも感じたことではあります。
未知の人も多かったであろうジョージア料理のシュクメルリと違って、あくまで鶏のトマトソース煮込みであるため、多少の既視感があり、「世界紀行シリーズ!」と銘打っているわりには特別感がない……というのはあるかもしれません。カポナータ、ラタトゥイユ(これはフランス料理ですが)あたりを彷彿とさせる外見ですし。
ただ、ワイルドでごはんが進む味わいは、暖かくなってくる今の時期にはピッタリではないでしょうか。シュクメルリよりは「ごはんに合う」味になっているところも好感。最近、イタリアはとても大変なようですが(イタリアに限らず、世界中が大変といえばそれまでですが……)、早く危機が収束してくれればと思いながらカチャトーラを食べ進めるのでした。
モーダル小嶋
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。一人めし連載「モーダル小嶋のTOKYO男子めし」もよろしくお願い申し上げます。
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