Adobe MAX Japan 2019でAdobe Creative Cloudの最新アップデートを披露
アドビ、クリエイターを時間と場所から解放する、驚きの新機能を紹介
2019年12月04日 12時10分更新
アドビシステムズは12月3日、パシフィコ横浜でクリエイター向けのカンファレンスイベント「Adobe MAX Japan 2019」を開催した。基調講演には米アドビからCPO(最高製品責任者)のスコット・ベルスキー氏が登壇。Adobe Creative Cloudの最新アップデートについて、日本のユーザーに紹介した。
「クリエイターがクリエイティビティやイマジネーションを発揮する、その足かせになっているのが『時間』です」と、提起したベルスキー氏。資料を検索する時間や、関係者との調整にかける時間、アプリケーションの使い方を学ぶ時間など、「多くのクリエイターが、実際にはクリエイティブなこと以外に時間を取られている。我々はこの課題を乗り越え、皆さんのクリエイティビティのポテンシャルを解放できるようにしたい」と語り、そのことを最優先課題として、Adobe Creative Cloudの機能強化に取り組んでいることを明らかにした。
AI「Adobe Sensei」を用いて被写体のワンタッチ切り抜きを実現
アドビでは近年、独自開発のAI「Adobe Sensei」を用いて、Adobe Creative Cloud各製品の大幅な機能強化を図っている。今回アップデートされた新機能や、追加された新しいアプリケーションの多くも、「Adobe Sensei」によって実現されたもの。ベルスキー氏の言葉通り、従来はその作業に多くの時間が割かれていた、言わば「地道なルーティンワーク」を、「Adobe Sensei」を用いることで自動化、効率化したものが目立つ。
たとえば画像編集ソフトの「Adobe Photoshop」では、オブジェクト選択の機能が大きく進化。「オブジェクト選択ツール」で選びたいオブジェクトを指示するだけで、複雑な形状であってもきれいに選択することができる。さらにクイック操作の「背景を削除」では、メインの被写体を選択して背景を削除するところまでをワンクリックで実現。メニューから選ぶだけで、写真の切り抜きがほぼ全自動でできるようになったと言えば、わかりやすいだろうか。
この被写体を選択できる機能はデスクトップ版向けで、今秋リリースされたiPad版の「Adobe Photoshop」ではまだ使用できない。しかし基調講演では、iPad版にも近日同様の機能が搭載予定であることが紹介され、デモも披露された。
「Adobe Photoshop」iPad版に関してはさらに来年、オブジェクトの細部がうまく選択できない場合に微調整ができる「境界線を調整」や「筆圧感知ブラシ」、「Adobe Lightroom」との連携やRAWフォーマットのサポートなども予定されているという。
なおアドビでは、クリエイターのもうひとつの足かせとなっている「場所」からの解放を目指し、場所を問わず作業ができるプロフェッショナルツールのiPad版の開発にも注力している。「Adobe Photoshop」のiPad版に続いて、来年には「Adobe illustrator」のiPad版のリリースも準備中であることが発表されている。
「Adobe Premiere Pro」では画角変更時のフレーミングを自動化
「Adobe Sensei」を用いた新機能ではもうひとつ、動画編集ソフトの「Adobe Premiere Pro」に搭載された「オートリフレーム」も注目すべきものだ。スマートフォン向けの縦の映像など、オリジナルと異なる画角の映像を切り出す場合、従来はシーンごとに見直し、被写体が画角に収まるように手作業でフレーミングをし直さなければならなかった。「オートリフレーム」はその名の通り、このリレーミングの作業を完全自動化する。
基調講演ではこのほか、「Adobe Sensei」を用いたスマートフォン向けのアプリケーションとして「Photoshop Camera」が来年リリース予定であることも紹介された。
この新しいアプリケーションは「Adobe illustrator」のiPad版とともに、先に米国で開催されたグローバルイベントの「Adobe MAX 2019」で発表されたもの。カメラで捉えた風景などに、「レンズ」と呼ばれるフィルターをリアルタイムに反映できる。
「Photoshopのパワーを、皆さんが常に持ち歩いてるデバイスにもお届けする」(ベルスキー氏)というものだ。同時に「Adobe Sensei」の実力も体験できるこのアプリは現在、テスト用のプレビュー版への申し込みを受付中。いち早く試してみたいなら、要チェックだ。