9月10日に行なわれたAppleのイベント「By innovation only」。
iPhone 11、iPhone 11 Proシリーズ、Apple Watch Series 5、そしてキーボードに対応したiPad 第7世代が登場し、ゲームサブスクリプションのApple Arcade、映像ストリーミングサービスApple TV+が、それぞれ月額4.99ドルという価格で登場しました。
本記事では少し引いた視点で、「Appleイベント」という現象を眺めてみたいと思います。
イベント終了後のネガティブなコメントを含め
もはや様式美となった
正直なところ、デバイスのデザインや主要な仕様について、そして製品名に至るまで、事前にリークされていた情報の答え合わせのような側面もありました。
そしてAppleも、事前の情報流出を厳しく制限しないあたりを見ると、「ある程度の許容」をしているのかなとすら思います。どんな小さな話でも、iPhoneの話題が出れば、メディアも人々も飛びつき、限られた掲載枠や人々がニュースを読む時間を占有します。つまり、他のブランドの話題をかき消すことができるのです。
米粒一つのようなちょっとした話題でも、メディアに「Apple」のブランド名が溢れるのです。これを活用しないてはないというのは正直なところでしょう。
そして今回のイベントはYouTubeでも中継され、若い世代もライブストリーミングを楽しみやすい環境を整備しました。これも、実は大きな変化だったと言えるのではないでしょうか。
イベントの感想もいつもと同じでした。「デザインが変」「高い」「Appleのイノベーションがなくなった」「ジョブズがいないと」……。すでに7年近く繰り返されてきた感想が、今年も並びました。2018年はそこそこ不調でしたが、そう言われ続けながらもAppleは売上高の過去最高を更新し続け、時価総額1兆ドルを初めて実現した米国企業になったのです。
もはや、そうした感想や批判的なコメントまでが、「Appleイベントの様式美」であり、しかしそれはAppleの現在の成否と異なるリアクションであるということも、また繰り返されるのではないでしょうか。
そんな人気のiPhoneとは言え、放っておいては売れない
今回のAppleのiPhone発表会で注目していたのは価格でした。2017年に高価格戦略に転じ、結果としては成功しました。世界的な景気や貿易問題の高まりが表面化する前に、999ドルのiPhone Xを提案して売りさばいたのです。
ところがiPhone XSシリーズ、iPhone XRシリーズを擁した2018年モデルは不振に陥り、決算の予測を大幅に下方修正する「利益警告」まで出しました。予測されていたとは言え、昨年から今年の中盤までのAppleは「危機管理モード」であったはずです。
今回のiPhoneの値付けには、それがフィードバックされています。iPhone 11はiPhone XRから50ドル下げた699ドルとなり、2017年にiPhone 8につけた価格に“戻り”ました。またiPhone XRはiPhone 11からさらに100ドル安い599ドルへと、150ドル値下がりしました。
こうして売れ筋の液晶モデルの価格を抑えながら、しかし2017年のiPhone10周年で提示した将来のiPhone像をきちんと具現化してきたあたりは、Appleの「もう放っておくだけでは売れない」という認識が反映されているものと思います。
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