これは座布団か何かか?
いま、私が握っているステアリングホイールの真ん中には、そうとしか言いようのない不細工なものが張り付いている。装着が始まった頃のエアバッグは、たしかみんなこんな感じだった。
仏壇のように切り立ったダッシュボード。スウェード調の化繊を貼った内装。そして木目。目に見えるもの何もかもが古臭い。まるでバブル崩壊後の20世紀末のようだ。
ところが上部へ目を移すと、内側へラウンドしたサイドウインドウが見える。このウインドウは全開せず、スーパーカーのように、切り欠きの一部のみ開閉する。リアもピラーが目立たないグラスキャノピーで、クーペでありながら右後方視界も良好。肩から上はすべてが未来だ。
あたりは真っ白の雪原だというのに、加減速を繰り返しても挙動は安定しており、コーナリングにも不安がない。この運動性能、そして細かい凹凸を拾いつつダンピングの効いた粒入りピーナツバターのような乗り心地。こんなクルマに、いつか乗った記憶がある。
果たしてこのクルマはスバル「アルシオーネSVX」だった。いま、希少な名車扱いになってやたらと高い、あのSVXだ。四半世紀前にハンコを押す寸前のところまで行って、途中でシトロエンに心移りして見送った、国産最強全天候型グランドツアラーのSVXだ。
ああ、なぜ私はあのとき、このクルマを買わなかったのだろう。とりあえず寒いので、セイコーマートでおにぎりとお茶でも買って行こうか。と、クルマを降りて戻ってきたら、その場にSVXはなかった。
ああーーーーっ、オレのSVXがーーーーーー!
そんな夢を見た。新車を買った情報2019。私は四本淑三であります。夢を見たのは、ロードスターRFで1日500kmほど走った日の夜であります。疲れたつもりもなかったのですが、無意識にもっと楽なクルマを求めていたのでありましょう。
そんな優柔不断な私とあなたのハートに拍車を掛けるこのシリーズも、いよいよ終わりに近づいてまいりました。今回もロードスターRFにしようかどうしようか迷ったクルマたちを自腹購入し、私有地内のサーキットで転がしてみました。その様子をいつものようにまとめてございますので、ご覧ください。
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