背景で面白い動きを見せたファーウェイ:
iPhone 5Gの道筋が立ったアップルとクアルコムの和解
2019年04月24日 09時00分更新
●ラブコールを送っていた相手とは
そうした和解劇の背景で、もう1つ、面白い動きがありました。中国の通信機器大手ファーウェイのCEOが、アップルに対してチップ供給を行うことについて「オープンだ」と発言していたのです。もちろん、アップルと具体的な話があったり、実際にアップルがファーウェイを採用するかどうかは別の問題です。
というのも、米中貿易戦争の主要テーマの1つである次世代通信技術の覇権争いで、米国はトランプ政権以前からファーウェイやZTEといった中国の通信技術企業を閉め出し、同盟国にも同様の対処を行うよう要請してきた背景がありました。そうした中、米国籍の企業であるアップルがファーウェイを採用することは、現実的ではなかったはずです。
そのファーウェイの「オープン」発言は、これまで他社のスマートフォンにチップ供給をしてこなかったファーウェイとしては異例の発言とも言え、そちらの方面でも注目に値します。
アップルのように、自社チップを自社で活用することで、チップ単体をビジネス化しないままにするのか。はたまたサムスンのように半導体も主力ビジネスとし、競合に自社チップやディスプレイパネルを供給して競争優位性を切り売りするのか。
今回の発言はあくまで、貿易戦争にかこつけたジャブのようにも見えますが、5Gを巡って、通信チップ、スマートフォン、その他の製品の勢力図は、まだまだ変動が続きそうです。アップルは現在の地位を守ることができるのか、注目していきましょう。
筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。
公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura
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