ハードウェアビジネスから脱却
財務状況が急速に改善
経営的な面で言えば、EPS(一株あたりの利益率)のロードマップを示し、2006年には6.06ドルだった利益を2010年までに10~11ドルにする、という目標を立てた後、これを実現するために売上高や生産性の向上だけでなく自社株の買戻しをしたり、採算性の悪いビジネスの廃止や売却などを積極的に行なっている。
この採算性の悪いビジネスの売却のやり玉に挙がったのが、いうまでもなくハードウェア部門である。先の表にはハードウェア部門の売上と、全体における売上比率を一緒に示しているが、Gerstner氏の時代にはそれでもまだ40%ほどを占めていたハードウェア部門の売上比率は、Palmisano氏の時代に急速に低下しており、Palmisano氏が退任した2012年の時点では18.2%を占める程度にまでなっている。
もっと象徴的なのは、そのハードウェアビジネスの扱われ方だろうか。2006年のAnnual Reportでは、部門別売上の表は“Global Services/Hardware/Software/Global Financing/Other"という5項目である。
これが2007年になると、“Global Technology Services/Global Business Services/Systems and Technology/Software/Global Financing/Other”という6項目になっている。
Global Servicesが2つに分かれたほか、HardwareがSystems and Technologyという名称に切り替わってしまった。これに先立ち同社のストレージ部門は、2003年に日立に売却されてHGST(Hitachi Global Storage Technologies)となり、その後Western Digitalが2015年にHGSTを買収(一部のビジネスは東芝が買収)となったのはご存知の通り。
またPC部門はPCサーバー(xシリーズ)を含めて、丸ごと2004年に中国Lenovoに売却されてしまった。IBMのFoundry Businessはこの時点ではまだIBMに残っていたが、こちらも売却先を探していた状態であり、最終的に2014年にGlobalfoundriesが丸ごと買収した。
この結果として、IBMに残っているハードウェアのビジネスは、ESA/9000の後継であるSystem zとAS/400の後継のSystem i、RS/6000の後継であるSystem pというシリーズが主なところである。変わったところではリテール向けのシステムの販売というビジネスもあったが、こちらも2012年に独立している。
こうしたハードウェアビジネスからの脱却の結果というわけではないにせよ、Palmisano氏の時代に同社の財務状況は急速に改善する。2012年には1000億ドルの売上と166億ドルの営業利益を達成するに至った。再び強いIBMが戻ってきた、というべきであろう。

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