その会社にはその会社ならではの働き方がある。みんなの働き方改革・業務改善を追う連載「私たちの働き方カタログ」の第31回は、関西で最大級のコンタクトセンターを運営するカスタマーリレーションテレマーケティング(CRTM)。高いモチベーションと定着率を実現したさまざまな施策についてカスタマーリレーションテレマーケティング 取締役副社長 植原 大祐氏に聞いた。
完全成果報酬制の徹底で高いモチベーションを実現
コールセンターというと、ユーザーの苦情やクレームを受け付けるストレスフルな職場というイメージがある。まして、アウトバウンドのテレセールスは営業とわかった段階で相手から切られてしまうことも多く、なかなかツラい仕事のように思える。しかし、そんなアウトバウンドのコールセンターをヘルシーに運用し、高い成長率を実現しているのが、大阪に本社を置くカスタマーリレーションテレマーケティングである。
2007年に設立されたカスタマーリレーションテレマーケティングは、コールセンター事業からスタートし、現在は客先にオペレーターを常駐させるオンサイト事業、フィールドセールスと呼ばれるオンサイトでの訪問販売まで幅広く手がけている。創業12年目にして、コールセンターの規模は関西最大級の座席数2350名の規模にまで成長している。
同社で特徴的なのは、One to Oneのマーケティングに立脚したアウトバウンドでのコール業務を事業の柱にしていること。カスタマーリレーションテレマーケティング 取締役副社長 植原 大祐氏は、「インバウンドのコールセンターは低価格競争も激しいし、すでに大手の事業者が市場を確保しています。しかも、今後RPAやAIなどのテクノロジーが淘汰していく領域なので、われわれはそちらには行きません。あくまで後発なので、成果の出しやすいアウトバウンドに特化しています」と語る。現在、約8割がアウトバウンドで、顧客と双方向な関係作りを重視しているという。
同社がオペレーターを大量雇用し、高いモチベーションのキープできている理由は、完全成果報酬制を徹底しているからにほかならない。各オペレーターごとに設けられた達成率ランキングは毎日更新しており、月間MVPや年に1回のアワードもある。また、採用に関しては、時短の仕事を求める主婦やシニアを中心に採用しており、卓越したコミュニケーションスキルを持つオペレーターは当初の時給から倍になることも珍しくないという。植原氏は、「成果に応じて時給は毎月査定し直しています。報奨金も付けてますので、やったら、やったぶんだけ返ってきますし、時間が短くても、成果を上げれば報酬は高いです」と語る。
もちろん、成果を残せなければ自然と淘汰されていくため、弱肉強食の職場が苦手という人には不向き。しかし、時間やプロセスではなく、結果でしか評価しないというのはきわめてフェアで、向いている人は高いモチベーションを維持できるという。「がんばったねと上司から褒められるだけじゃなく、きちんと目に見える報酬として評価することを重視しています。結果でしか評価しないので、どんなに遅くまで仕事しても評価されません」(植原氏)。
健康経営の推進と現場を徹底的にサポートするマネジメント
ここまで読んだだけでは、猛烈な営業会社というイメージだが、社員のパフォーマンスを最大限に引き出すための健康経営にも力を注いでいる。健康セミナーの実施、部活動の促進、健康的な弁当の提供、チーム対抗での歩数イベントなどさまざまな施策を実施し、健康診断のデータを元に改善を図っている。植原氏は、「コールセンターは体を動かすこともなく不健康なイメージがあります。だから、少しでも体を動かしてもらったり、体にいい食事をとってもらうサポートは会社として注力しています」と語る。「心身が健康だからこそ、パフォーマンスを高められる」という考え方は、自身が長らくコールセンターで勤務してきたという創業者の経験が活かされている。
また、現場をマネジメントするマネージャーやSV(スーパーバイザー)に集中していたタスクを複数の担当者に分けることで、現場のサポートやメンタリングを強化している。「SVのほかに、メンタリング担当のラウンダー、コーチング担当のインストラクターがフロアを回っています。評価指標も違っており、SVは数字、ラウンダーは離職率、インストラクターはオペレーターの知識レベルで評価されます」(植原氏)とのことだ。
働き方改革でつねに問題に挙がるのは、中間管理職の負荷の増大だ。部下へのきめ細かなサポートを実現しようとすると、マネージャーには大きな管理負荷がかかってしまう。その点、カスタマーリレーションテレマーケティングでは役割と評価指標を分けたことで、SVやマネージャーに集中する管理負荷を軽減できた。また、上司に相談できず辞める人も少なくなり、結果的に従業員の定着に寄与しているという。「事業の拡大とともに業務も煩雑になり、会社やクライアントへの報告義務も増えているので、マネージャーやSVはかなり残業していましたが、こうした事態も解消できました」と植原氏は語る。
コールセンター自体が24時間365日稼働なので、完全フレックス制はすでに当たり前という同社。今では週1日1時間からの勤務を受け入れる体制もできているという。植原氏は、「会社としての働き方改革はすでに終わっています。だから、次は従業員への『報いかた改革』と『企業の売上改革』というステージに行きたいと思います」と語る。
会社概要
全2350席、常時1500名 以上が稼働する、関西最大級のコンタクトセンター。「世界一、『ありがとう』が集まる企業へ。」を企業理念に、顧客にダイレクトにアプローチするアウトバウンドに特化することで、各クライアント企業と顧客との関係維持、さらに顧客価値の最大化に貢献します。
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