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私たちの働き方カタログ第34回

千が進める子育て支援には社内での「子どもへの目線」があった

社内メンバーの子育て機会こそワーママ・ワーパパの働き方改革の秘訣

2019年03月14日 09時00分更新

文● 萩原愛梨 写真●曽根田元

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 その会社にはその会社ならではの働き方がある。みんなの働き方改革・業務改善を追う連載「私たちの働き方カタログ」の第34回は、インターネット写真サービス「はいチーズ!」を運営する千株式会社。子育て世代を支援する充実した福利厚生制度について、人事部マネジャーの楠本彩香氏と制度を実際に活用している細川博史氏に聞いた。

千 人事部マネジャー 楠本彩香氏

働くパパ・ママの存在は、サービス成長に必要な情報源

 「子育てと仕事の両立」は、夫婦間で性別を問わず産休・育休の取得が促進され、男性の子育て参加率が上がってくる中で、多くの人にとっての課題になりつつある。出産や育児は、それ自体が喜ばしく尊い経験だ。しかし、仕事と両立していくことに不安を感じるビジネスパーソンは少なくない。また、この課題は労働者側の課題だけでなく、企業側の課題でもある。「子育て世代」というのは、就業経験をある程度積み、事業成長に大きく貢献する「働き盛り世代」と重なる場合が多い。会社として従業員の「子育てと仕事の両立」を支援することは、会社全体の生産性にも影響する。しかし、その打ち手は一般的な育休・産休取得促進に止まっている企業が多い中、独自の福利厚生制度で『ワーママ・ワーパパの働き方改革』を進めているのが千だ。

 千が運営するインターネット写真サービス「はいチーズ!」は、プロのフォトグラファーが撮影した幼稚園・保育園で行なわれるイベントや日常保育の風景の写真を、家族や友人がインターネットを活用して閲覧・購入できるサービス。子供の成長や日常を写真におさめるサービスを提供する同社らしさが反映された制度が「キッズ在宅」「キッズデイ休暇」「キッズリモート」、そして「アニバーサリー・イベントフォト撮影(FamilyPhoto)」だ。

 キッズ在宅は、子供の急な発熱などで出勤ができない場合に自宅での業務を許可する制度。また、子供の状態が看護を要するレベルで在宅業務も難しい場合に休暇が取得できるのが、キッズデイ休暇だ。このキッズデイ休暇は子供の卒園式や参観日などのイベント時にも取得ができる。

 一方、キッズリモートは、キッズ在宅の長期版のように運用されている。保育園に預けられなかったなどの理由で、3ヶ月や半年などの一定期間出勤ができないが、在宅での業務が可能な場合に取得ができる。アニバーサリー・イベントフォト撮影は、家族の記念日に同社のフォトグラファー社員が記念撮影をしてくれるものだ。子供の記念日に活用するケースが多いが、兄妹の成人式の記念撮影などでも利用できる。

 これらの子育て支援福利厚生について、人事マネージャーの楠本彩香氏は、「弊社のサービスを利用するのは、幼稚園や保育園、そして働くママ・パパです。自社で働くママ・パパの意見を、そのままサービスに反映することができることは、自社の強みにもなります。もし『子供ができたので会社を辞めます』なんて社員が増えてしまうと、ユーザーの声につながる大切な情報を失うことにもなります。だからこそ子育て世代にとって働きやすい会社でありたいと思っています」と語る。

「子育ても仕事も両方楽しめることを実現できる職場を探していた」

 実際に、キッズ在宅を活用しているのが、同社で新規事業企画を担うマネージャーの細川博史氏だ。「うちには1歳の娘がいるんですが、私の仕事はWebメディアの編集なので、キッズ在宅は月に2日は活用しています。まだ小さいのでよく熱を出すんですが、37.5℃を超えていると保育園に預けられないですし。キッズデイ休暇は、保育園の面談のために一度使いました」(細川氏)。

千 経営企画室 営業企画グループ 細川博史氏

 キッズ在宅・キッズデイ休暇の制度をフル活用している細川氏が同社に転職したのは、昨年8月のこと。子育てがしやすい環境であることは、転職先の希望条件の一つだったという。「子供生まれるまでワーカホリックだったんですが、生まれると義務感でなく自然と『子供といたい』と思うようになりました。でも、今の新規事業の仕事も好きで、両方楽しみたかった。そこで子供との食事から寝かしつけるまでの時間は絶対に家にいることを決めました。だから弊社の入社面接の時から『夜の7時から9時の間は絶対家にいます』と伝えていました」と振り返る。

 さらに、面接時の時の代表千葉氏との会話を思い出して細川氏は語る。「代表からは『保育園や幼稚園にはどんどん足運んでもらっていいよ』と言われました。ママ・パパの立場で園の方と接して気づくことがあったらフィードバックして欲しいと。そのように後押しをしてもらっていることもあり、あまり後ろめたい思いをせずに活用できました」(細川氏)。

 楠本氏によれば、細川氏のように子育てとの両立を意識して応募をしてくる候補者は多いという。「中途入社される方は、割と気にしていますね。この制度の存在を知って入社した方も知らずに入社した方もいますが、『子育て両立の働き方に寛容そうだ』という点は注目していただいていたと思います。中には履歴書の中に「お迎えのため何時には帰宅したい」と明記している方もいます。実際にママさんからの応募は多いですね」という。

 就業経験と優れた能力を持ちながら、子育てをきっかけに働くことを諦めてしまったり、キャリアが断絶されてしまう女性は少なくない。彼女たちが働きやすい環境を用意することは、本人たちにとっての幸せはもちろん、企業として優秀な即戦力を採用できる貴重な機会になる。さらに実運用が伴っていれば、もちろん成果も出しやすいだろう。同社には営業サポート職としてアルバイトで働くママが多く在籍するが、社会経験のある彼女たちの処理能力の高さも、サービスを下支えしているという。そんなアルバイトのママさんも子育てのために時間をコントロールしながら働いている。

「いつか自分も子育て世代になるかも」制度の不公平感は生まれない理由

 対象を限定した福利厚生制度は、社内の不公平感が生まれやすい側面があるのも事実だ。キッズ在宅やキッズデイ休暇は、子育て中のメンバーにとっては有難い制度だが、千の平均年齢は20代でプレ子育て世代のメンバーも多い。

 そんな直接的にメリットを享受できない他のメンバーの感じ方について聞くと、楠本氏は「自分たちもいずれその対象になる可能性があると感じているため、不満は出づらい」と語る。活用する細川氏も、お迎えのために毎日18時過ぎには退社している中で、周囲からネガティブなリアクションを受けたことはないという。若手メンバーにとっては現在メリットがなくても、子育て支援制度があることで長期的に働くことを前提にキャリアを考えることができる。これは出産の有無に関わらずキャリア設計において、大きな安心につながりそうだ。

 千の事業内容からも「子供好き」なメンバーが集まりやすく、積極的に子育てを応援する文化が醸成しやすいことも同社の制度が適切に運用されている一因にもなっているかもしれない。また、企業がリモートワークを導入する際、生産性への影響も気になるところだが、千では今のところマイナスな影響はないという。そもそもキッズ在宅やキッズリモートの制度を活用する人材は、ある程度社会経験を積み、仕事における自制心が養われてる場合が多い。そのため「在宅だからサボる」というマインドにはなりづらい。さらに「月に数回オフィスとは業務の場所を変えることで集中力が上がり、キッズ在宅の日に仕事が一気に片付くこともある」と細川氏は語る。

 子育てメンバーが子供の看病のために家にいることも、お迎えのために早めに帰ることも、千では自然だと捉えている空気が感じられた。仕組みとして「子育て支援福利厚生」を整えているのだが、その運用を支えているのは制度の先にある「子供」への視点なのではないだろうか。取材中楠本氏から「お迎えに行かないと、お子さんがかわいそうだから行ってください、と考えるメンバーたちだ」という言葉が出た。千では、サービスを通して多くのメンバーが子供の成長や笑顔を目にする。社内メンバーの「育児参加機会」こそが、ワーママ・ワーパパの働き方改革の秘訣なのかもしれない。


会社概要

インターネット写真販売サービス「はいチーズ!」を運営しています。「写真・動画」と「IT」を掛け合わせ、「記憶」領域へアプローチする事業を展開しており、 “一枚の写真から千の笑顔を。”というサービス理念をモットーに、ひとりでも多くの方に笑顔を提供していきます。

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