このページの本文へ

柳谷智宣の「簡単すぎて驚く生成AIの使い方」 第5回

メールやブログ、プレゼン資料チェックに生成AIを活用し、クオリティの高い文章を簡単に作成する

2025年02月07日 09時30分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 本連載は生成AIをこれから活用しようとしている方たちのために、生成AIの基本やコピペしてそのまま使えるプロンプトなどを紹介。兎にも角にも生成AIに触り始めることで、AIに対する理解を深め、AIスキルを身に着けて欲しい。第5回は外部へ提出する文章を生成AIでチェックしクオリティを上げる方法について解説する。

誤字脱字や不自然な文章を生成AIにチェックしてもらおう

 ビジネスの現場ではメールやプレゼン資料、ブログ記事を作成する際に文章を書く機会が多い。誰でも書けるとはいうものの、限られた時間の中で的確な文章を仕上げるのは意外と骨が折れる作業だ。誤字脱字や文法の乱れはもちろん、文章のトーンや意味が伝わりにくい言い回しなど、チェックすべきポイントは多い。筆者のようなライターもそうだが、忙しさに追われていると、ひとつひとつを丁寧に見直す余裕がなくなりがち。そんな時こそ生成AIの出番だ。

 生成AIを活用すれば、誤字脱字などの表面的なミスはもちろん、文の構成や流れまでチェックしてくれる。たとえば、接続詞の重複や主語と述語の不一致、文章が不要に長くなっている部分などを指摘してくれるのだ。しかも、修正候補を提案させることもできる。現時点ではプロの校正者のように文脈を深く理解するまでは至っていないが、一発目の自動チェックとしては十分に頼りになる精度を持っている。筆者も原稿を納品する前は、必ず生成AIにチェックしてもらうようにしている。とても便利なので皆さんも活用してほしい。

 まずは、メールの本文を生成AIにチェックしてもらおう。わざと日本語を間違えた本文を用意し、誤字脱字や不自然な部分を指摘するようにプロンプトを入力してみた。

 すると、「お見積り」と「お見積もり」といった表記の揺れから、「下記」を「夏季」と書いた誤字、「50こ(個)」などの誤変換、「迄」は「まで」とひらがな表記にする“開く”指示などもしてくれた。「2025年1月10日(水曜日)」と書いてみたのだが、こちらも本当は金曜日だという指摘が入った。さらには指示していないのに、「修正版サンプル」として、修正した文章も出力してきた。

■プロンプト
あなたはベテランの編集者です。以下のテキストをチェックし、誤字脱字や誤用、表記の揺れ、不自然な部分などをすべて指摘してください。

###テキスト
※ここにテキストを貼り付ける※

■出力
編集者として、以下の点を指摘させていただきます:

1. 件名の「お見積り」:
- 「お見積もり」に統一すべきです(本文中では「お見積もり」と記載されています)

2. 本文1段落目:
- 「夏季内容」は「下記内容」の誤植と思われます

3. 【お見積り内容】の箇所:
- 「100個」と「50こ」で単位の表記が統一されていません - 「50こ」は「50個」に統一すべきです

4. 日付・期限の表記:
- 「2025年2月15日迄」の「迄」は「まで」とひらがな表記にするのが一般的です

~以下略


 ビフォーの文面を取引先に送ってしまうと、担当者としての信用をなくすだけでなく、最悪の場合は仕事を失いかねない。たった1行のプロンプトで、ここまでチェックしてくれるのであれば、使わない手はない。今回利用した生成AIは「Claude 3.5 Sonnet」だ。Claudeには他にClaude 3 Haiku、Claude 3 Opusというモデルもあるが、現時点ではClaude 3.5 Sonnetの性能が最も高い。

 Claude 3.5 Sonnetは無料でも使えるが、1日に利用できる回数に制限がある。月額20ドルの有料版なら大幅に利用回数が増えるうえ、アーティファクトやプロジェクトといった高度な機能も使えるようになる。本格的に活用する際は有料プランにアップグレードすることをお勧めする。1日15分でも業務効率が上がれば、ペイするはずだ。

Claudeは無料でも使えるが、有料版のProプラン(月額20ドル)の方が高性能なのでお勧めだ

 続いて原稿のチェックをしてもらおう。本原稿の前半を入力し、同じプロンプトをコピペしてみると、ずらーっと指摘が出てきた。「段落冒頭の全角スペースは、現代の文章では不要です」など、不要な指摘もあるものの、概ね言っていることはわかる。とはいえ、AIをエーアイと書くつもりはないし、口語的だと指摘が入った「骨が折れる」も「一発目」も見逃して欲しいのでそのままにした。「皆さんも活用して欲しい」を「欲しい」と開くようにとの指示はその通りなので、修正した。

 1本の原稿に1ヵ所でもミスが見つかれば、ビジネスパーソンとしては儲けものではないだろうか。将来はテキストエディタやWord、メールアプリなどで十分な校正ができるようになると思うが、今のところはClaudeやChatGPT、Geminiなどの3大生成AIを使う方がクオリティが高い。

 ただし、生成AIの言うとおりに修正しなければならないということはない。自分とは違う視点で文章をチェックしてもらうことで、ミスを減らし、クオリティをアップできるのだ。プロンプトは1行コピーするだけでOK。ぜひ、今日から使い始めてほしい。


■プロンプト
あなたはベテランの編集者です。以下のテキストをチェックし、誤字脱字や誤用、表記の揺れ、不自然な部分などをすべて指摘してください。

###テキスト
※ここにテキストを貼り付ける※

■出力
段落・書式について:
段落冒頭の全角スペースは、現代の文章では不要です。

表記の揺れ・不適切な表現:
「生成AI」という表現が複数回出てきますが、「AI」は外来語として「エーアイ」とカタカナ表記にするか、もしくは「人工知能」と漢字表記にすることを推奨します。
「骨が折れる」は慣用句として適切ですが、やや口語的な表現です。ビジネス文書としては「困難である」などの表現を検討してください。
「一発目」は口語的すぎます。「最初の」「第一段階の」などの表現が適切です。

文の構造・文法:
「誰でも書けるとは言うものの」の後の文章が長くなっています。読みやすさを考慮すると、ここで文を分けることを推奨します。
「筆者のようなライターもそうだが」という表現は冗長です。「筆者も」で十分です。 「皆さんも活用して欲しい」は「活用してほしい」が正しい表記です。

注目の最新AIニュース

2025年2月5日、「Gemini 2.0 Flash」の一般提供が開始され、「Gemini 2.0 Pro Experimental」も発表された。「Gemini 2.0」はGoogleが開発した次世代のAIモデルで、周囲の世界を見て、聞いて、理解できるのが特徴だ。出力もマルチモーダルに対応しており、画像生成や音声合成などにより、インタラクティブで直感的なユーザー体験を実現できる。「Gemini 2.0 Flash」のコンテキストウィンドウは100万トークン、「Gemini 2.0 Pro Experimental」は200万トークンとなっており、より広範な情報の分析と理解が可能になっている。Googleの機能やサードパーティツールなどと連携できるようになっており、AIエージェント時代を見据えて設計されているのもポイント。すでにGoogle AI StudioとVertex AIなどで無料で試すことができる。

Google AI Studioで、「Gemini 2.0 Pro Experimental」に「月をテラフォーミングするプロジェクトを立案してください」と聞いてみた

■関連サイト

カテゴリートップへ

この連載の記事
ピックアップ