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私たちの働き方カタログ第35回

リモートワーク導入の過程でブイキューブはなにを見てきたのか?

20年ベンチャーが語る「続けてきたこそわかるリモートワーク成功の秘訣」

2019年05月10日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 写真●曽根田元

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 その会社にはその会社ならではの働き方がある。みんなの働き方改革・業務改善を追う連載「私たちの働き方カタログ」の第35回は、TV会議システムを手がけるブイキューブ。代表取締役社長 CEOの間下直晃氏に、長らく向き合ってきたからこそ見えたリモートワーク成功の秘訣を聞いた。

ブイキューブ 代表取締役社長 CEO 間下直晃氏

オフィスがあっても、なくても仕事できる環境がほしかった

 働き方改革の施策として導入を検討する企業も多いリモートワーク。時間や場所にとらわれない働き方を実現した事例も増えているが、労務管理や評価に苦労している企業も多い。TV会議というリモートワーク向けのサービスを長らく展開してきたブイキューブ自体のリモートワーク導入も、一朝一夕で実現されてきたわけではない。

 ブイキューブの間下氏は、「昔から時間で働くのはやめたいなと。だから、オフィスがあっても、なくても、仕事できる環境はほしいと思っていました」と語る。そのため当初から週に1度はどこで働いてもよいというテレワーク制度は取り入れていたが、2年前からは「オレンジワークスタイル」という制度を導入。原則として全社員を対象に、コアタイムなしの完全フレックス制、テレワークや副業の解禁にまでこぎつけた。成果にコミットするという意味ではタフだが、時間や場所の制限を排除した会社の制度としてはもっとも自由かもしれない。

 この時期での導入はなにかきっかけがあったわけではなく、会社のフェーズにあわせたものだという。「設立から20年もすると、メンバーの年齢も上がり、お子さんのできる家庭が増え、女性も産休・育休から戻ってきます。長く勤めてもらうには、大きく変える必要があったんです」と間下氏は語る。とはいえ、リモートワークを導入すると、当人がオフィスからいなくなることが増えるので、業務の成果が見えにくくなる。そのため、成果にコミットする評価制度を整備し、時間や場所に依存しない働き方が実現したという。

 ポイントは従業員の選択肢を拡げたこと。実家に帰ったり、パートナーの転勤についていったメンバーもいるし、いつも通り9時に会社に来て、夕方6時に帰るメンバーもいる。もちろん、早めに帰って、夜に仕事を再開するメンバーもいるし、早朝から働くメンバーもいる。とにかく仕事と生活のバランスは自由。「リモートワークでいけないのは、全員に強制すること。やりたいメンバーがやりたいようにできてこそ、自己実現につながるはず」と間下氏は語る。

マネジメント層と現場のリモートワークはコンセプトが違う

 自らがシンガポールに渡り、リモートワークが当たり前となっている間下氏だが、決してリモートワーク全面賛成というわけではない。「正直、リアルで人に会うのには全然勝てないと思います。だから、行けるのであれば、直接会いに行くべき。でも、両者をいいとこ取りするのであれば、リモートで済むモノ、しないモノを見極めるべき」と語る。どれがリモートで済ませられるかは組織ごとに違うので、ノウハウをきちんと溜めていくべきだという。

 マネジメント層と現場のリモートワークは、そもそもコンセプトが違う。「僕は年間で50万kmくらい移動しているので、TV会議を導入しても移動が減ってないんじゃないかとよく指摘されるんですが、リモートワークを導入すると、マネジメント層が『いるべき場所にいられる』というメリットがあるんです」と間下氏は指摘する。確かに社長や幹部が現地に行くことで、いろいろなことが決まり、現場でまとまらない交渉も進む。「マネジメント層は現地に行くため、経営会議こそ、むしろTV会議でやるべき」と間下氏は語る。

 一方で、現場での情報共有や手続きの確認、事務手続きなどはリモートで十分。実際、法律的にも不動産の重要事項説明や薬剤師の説明など、従来リアルでの対面が原則だった用途で、次々とリモートが解禁されている。「この使い分けをトップが理解していないと、リモートワークはやっぱりうちでは難しいという話になりがちです」と間下氏は語る。

リモートワークが普及しないのは場所がないから

 TV会議システムを開発・販売し、自らもリモートワークを積極的に導入してきたブイキューブ。「日本に帰ってきて、久しぶりにメンバーに会えると思って会議に参加したら、ほかのメンバーは全員TV会議で参加していたんです(笑)」とのことで、TV会議を積極的に導入することでビジネスのスピードは確実に上げられるという。こうしたTV会議のメリットは、もちろん顧客にも少しずつ浸透してきている。

 その一方で、リモートワーク導入に際しては「リモートワークをする場所がない」という課題にぶち当たってきたという。たとえば、在宅勤務の場合、家族がいる中で仕事に集中するのは難しいし、労務管理が難しいため、会社がOKを出しにくい。カフェやシェアーオフィスの場合、確かに作業には集中できるが、電話やWeb会議などコミュニケーションはやりにくい。会社ですら自席で声を出すWeb会議は難しいし、会議室はなんだかいつも空いてない。スマホの性能が上がり、通信環境の問題が解消してきたことで、場所の問題がリモートワークの大きな障壁としてクローズアップされてきた。

 間下氏は、「リモートワークのコンセプトが拡がっても、場所がないので、実体験としていいものにならないんです。結局、社員は帰社するし、多くの会社はリモートワークをあきらめてしまいます。僕らは20年やっているので気がついているけど、多くの会社は場所の課題にこれから気がつくはず」と間下氏は指摘する。

 こうした課題に対してブイキューブが提案してきたのが、パブリックスペースに専用の業務スペースを専有できるテレキューブだ。鉄道会社などと連携して実証実験を進めている途中だが、シェアオフィスで個室が使えないというユーザーの課題にも、セキュリティを気にして従業員を外に送り出せないという情シスの課題にもフィットする。「お客様からの反応もいいし、利用時間も頻度も想定以上」と間下氏は語る。


会社概要

ブイキューブは「Evenな社会の実現」というミッションを掲げ、「いつでも」「どこでも」コミュニケーションが取れる環境を整備することで、時間や距離の制約によって起こる様々な機会の不平等の解消に取り組んでいます。シード・プランニングから発行された『2019 ビデオ会議/Web会議の最新市場とクラウドビデオコミュニケーションの現状』では、国内Web会議市場12年連続シェアNo.1を獲得。Web会議やテレビ会議、Webセミナーの提供によって、働き方改革の実現と、教育や医療などライフスタイルも革新していくことを目指しています。

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