このページの本文へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第485回

AMD GPUロードマップ  Radeon InstinctはTesla V100とほぼ同性能

2018年11月19日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

Radeon Instinctは
Tesla V100とほぼ同等の性能

 ちなみに簡単な性能比較も示され、DGEMM、機械学習の推論、学習などで、NVIDIAのTesla V100とほぼ同等の性能を発揮することがアピールされた。以下もう少し細かく説明したい。

DGEMM(FP64でのGEMM)。Vega 10と比較して8.8倍もの性能アップ

Tesla V100との比較。Tesla V100の場合、NVLink版の方が少し性能が高いことを考えると、NVLink版のTesla V100と同等といったあたり

RESNET-50を利用しての推論フェーズ。Radeon Instinct MI60では毎秒500枚近い画像の認識が可能になるとする

そのRESNET-50を利用しての学習フェーズでのスケーリング。8枚接続でも7.64倍(効率95.5%)は確かに良い

Tesla V100との比較では若干見劣りするが、大きくは変わらない

 まずVega 20の構成であるが、基本的にはVega 10とまったく変わらない構成となる。NCUは64個で、1つのNCU内にSPを64個搭載するという構成も同じなので、SP数は4096個で横並びとなる。では何が変わったかというと、1つはFP64のサポートである。

 前述の表にVEGA 10ベースのRadeon INSTINCT MI25の数字も入れてある(動作周波数、およびInt 8の性能は公式に発表されていないので、筆者の推定である)が、FP16/FP32に関してはMI25も含めておおむね動作周波数×SP数の比に近い性能が出ているのに、FP64ではMI25のみ落ち込んでいたのは、FP64のハードウェアがVega 10では実装されておらず、ソフトウェアで実施していたためである。

 Vega 20ではこれがハードウェアで実装できるようになり、結果FP32のほぼ半分の性能が得られるようになった。実装としては、FP32の演算器2つでFP64を実行できるという効率を重視したものである。

 なお、Tesla V100はFP32とFP64で別々の演算器を搭載するという実装になっており、どちらが良いというものではないにしても、Tesla V100のダイが巨大化した理由の一因はここにあると考えていい。

 ちなみにサポートしたのはFP64のみならず、INT 4やINT 1もサポートしたという話であり、しかもMixed Precisionという、入出力は例えばINT 4やFP16で、途中の演算がINT 8とかFP32といった、複数の精度を組み合わせる処理にも対応するとしている。このあたりはそれぞれのSPの内部構造に変更が加えられたことになる。

 逆に言うと、INT 8やFP32での演算性能改善に関しては、単に動作周波数の差以上のものはないというのがVega 20の特徴でもある。これはゲーミングGPUに転用するにはやや厳しいところではある。

カテゴリートップへ

この連載の記事