太陽系に存在すると仮定された、仮設惑星の名前「Nibiru(二ビル)」。そんなブランド名を付け、太陽系の惑星をシリーズ名にするという壮大かつ夢のあるスマートフォンがわずか半年間だけ存在したことがあります。Nibiruとはいったいどんなスマートフォンだったのでしょう?
中国の老舗メーカーが起死回生で市場に投入
世の中のスマートフォンをノキアが牛耳っていた2000年代初期、中国では低価格でタッチパネルを備えた携帯電話が次々と生まれていきました。やがて中国政府の認可を受けずに町工場で作られた製品が次々と生まれ、世界中へと輸出されていくようになりました。その中には大手メーカーのデザインをあきらかにコピーした製品も数多くあったのです。いわゆる山寨機(さんさいき)と呼ばれた未認可携帯電話が一時は年間2億台以上も作られた時期がありました。
2002年に創業した天宇(北京天宇朗通通信)もそんな1社です。しかし同社は急激に販売数を伸ばしていき、むしろ正規のメーカーとなったほうが様々な面でメリットがあることに気づき、2006年に正式な携帯電話メーカーとなります。同社は中国語で「天語」、英語で「K-touch」のブランドを使い、低価格携帯電話を新興国中心に輸出もしていきました。
しかしその後スマートフォンの時代を迎えると販売数は徐々に落ち込んでいきます。2010年にはスマートフォンに参入しますが、「スタイラスペンを使う手書きケータイ」メーカーのイメージが強く、しかも「安物」の代名詞でもあったため、販売数を伸ばすことはなかなかできませんでした。
しかも2013年7月にシャオミが従来の1999元のハイエンドスマートフォン「Mi」シリーズの下に、1000元を切る激安モデル「Hong Mi」(紅米)シリーズを発表すると、それまでスマートフォンに手の出なかった中国の消費者もHong Miの予約へと殺到します。天宇も同価格帯の製品はあったものの、品質、仕上げ、スペック、どれをとっても見劣りし、勝負にならない状況でした。さらにファーウェイやCoolpadなども1000元端末に参入すると、天宇の勝ち目は全くなくなってしまったのです。
そこで天宇が立ち上げたのが、新たな低価格スマートフォンブランド、Nibiruです。別会社(北京尼比魯電子)を設立し、天宇とは別のラインとして製品展開を図りました。
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