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「Red Hat Partner Conference Asia Pacific」レポート

マイクロソフトやIBM経済圏の顧客をRed Hat OpenShiftへ取り込む

2018年07月18日 12時30分更新

文● 羽野三千世/TECH.ASCII.jp

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 米Red Hatは2018年7月11日~12日、インドネシア バリ島でアジア太平洋地区(APAC)のパートナーイベント「Red Hat Partner Conference Asia Pacific」を開催した(関連記事)。隔年で開催される同イベントは、APACのパートナー企業に向けて、Red Hatの戦略や最新の製品情報、導入事例を紹介するもの。今回のイベントには、日本企業を含むパートナー企業の関係者、Red Hat関係者が合わせて300人以上が参加した。

「Red Hat Partner Conference Asia Pacific」の参加者

マイクロサービスやサーバーレスをOpenShiftに機能実装

 Red HatでAPACのCTOを務めるFrank Feldmann氏は、コンテナアプリケーションプラットフォーム「Red Hat OpenShift Container Platform」の機能強化と、パブリッククラウドベンダーとのパートナーシップについて説明した。

Red Hat Vice President of APAC Office of TechnologyのFrank Feldmann氏

 OpenShiftは、コンテナオーケストレーターKubernetesをベースに、コンテナ型アプリケーションの開発、運用を便利にするアプリケーションプラットフォームだ。「OpenShiftは、x86やARMなどのベアメタルサーバー、オンプレミスの仮想環境、OpenStackプライベートクラウド、パブリッククラウドのどのインフラでも稼働する。このようなインフラの多様な選択肢を提供するのがRed Hatの独自性」とFeldmann氏。

 OpenShiftには、マイクロサービスの実装に不可欠なAPI通信制御サービス「Istio」、サーバーレスフレームワーク「Apache OpenWhisk」の統合が発表されている。また、AIや機械学習、HPCのワークロードをサポートするためにNVIDIA GPUの対応を開始した。Feldmann氏は、「OpenShiftを使えば、マイクロサービス、サーバーレス、AI/機械学習/HPCといったクラウドネイティブなモダンアプリケーションを簡単に開発、運用できるようになる。VMwareワークロードなど旧来型のアプリケーションをコンテナ化して、モダンアプリケーションへ移行することも容易になる」と述べた。

 Red Hatは今年1月にCoreOS社を買収し、CoreOSのエンタープライズ向けKubernetesソリューション「Tectonic」、Kubernetes APIの拡張である「Kubernetes Operators」をOpenShiftへ機能統合した。また、CoreOSのコンテナイメージレジストリ「Quay」を「Red Hat Quay Container Registry」としてOpenShiftファミリーに加えた。ハイブリッドクラウド環境に分散配置したQuayレジストリ間ではコンテナイメージの同期が可能になっている。

OpenShiftはインフラを選ばない

Microsoft、IBMとのパートナーシップを強化

 Red HatはOpenShiftのビジネスにおいて、Microsoft Azure、IBM Cloud、Alibaba Cloudといったパブリッククラウド各社との協業を強化している。今回のイベントではAlibaba Cloudへの言及はなかったが、Azure、IBM CloudとOpenShiftの協業については大きく紹介された。

 MicrosoftとRed Hatは、2015年11月にAzure上でのRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のネイティブサポートと2社共同サポートと柱とするグローバル協業を発表して以降、急速にパートナーシップを拡大してきた。2017年8月にはOpenShift上でのWindows ServerコンテナやSQL Serverのネイティブサポート、Azure上でのOpenShiftのネイティブサポートを発表している。

 さらに、今年5月にサンフランシスコで開催された「Red Hat Summit 2018」で、AzureからOpenShiftのフルマネージドサービスを提供する計画や、オンプレミス版Azure「Azure Stack」上でのOpenShiftの動作認定、Visual Studioのサブスクリプションユーザーは追加料金なしでRHELを利用できるようにすることなどを発表した。「Azureをハイブリッドクラウド環境で使うAzure StackでOpenShiftが動作することはとても重要。ただ、Azure Stackの販売方法は難しい」(Feldmann氏)。

OpenShiftとMicrosoftの協業

 IBMとの協業では、Red Hat Summit 2018で、パブリッククラウドの「IBM Cloud」でOpenShiftを利用可能にすること、プライベートクラウドの「IBM Cloud Private」とOpenShiftの統合が発表されている。また、OpenShift認定のRHELコンテナとして、「WebSphere」「DB2」「MQ」などのIBMのミドルウェア製品をパッケージングして提供する。

 AzureとIBMとのグローバル協業はAPACでも同様に展開している。「これらのパブリッククラウドとのパートナーシップにより、Red Hatのパートナーの皆さんは、MicrosoftワークロードやIBMワークロードを使っている新しいカスタマーを獲得できるだろう」(Feldmann氏)。

OpenShiftの運用から解放、AzureのフルマネージドOpenShift

Microsoft GM Cloud & Enterprise APACのMike Chan氏

 今回のイベントのプラチナスポンサー企業代表として登壇したMicrosoft GM Cloud & Enterprise APACのMike Chan氏は、「MicrosoftとRed Hatは、クラウドとオンプレミスの両方でRed Hat製品を2社共同サポートする特別なパートナーシップを持っている」と説明。前述のように、Azure上でのRHEL、OpenShiftの2社共同サポートを提供している。加えて、Azure Stack上のRHELとOpenShift、オンプレミス環境のOpenShiftで稼働するSQL Server on RHELコンテナやWindowsコンテナなどについても、2社でサポートする。

 「エンタープライズの懸念はどれだけサポートが受けられるかにある。例えば、AzureのインスタンスでSAP HANAのミッションクリティカルなワークロードを運用するとき、顧客は、SAPからのサポートだけでなく、(OSにRHELを選択した場合は)Red HatとMicrosoftからのサポートも受けることができる」(Chan氏)。Azureでは、SAP HANAワークロード対応の仮想マシンインスタンスやベアメタルインスタンスを提供している。OSはRHELのほかOracle Linux、SUSE Linuxなどが選択できるが、RHELを選択した場合は2社のパートナーシップにより特にサポートが手厚くなる。

 Chan氏は、Red Hat Summit 2018で発表されたAzureのフルマネージドOpenShiftについても言及。「OpenShiftのインフラ運用やOpenShift自体の更新が不要になり、ユーザーはモダンアプリケーションの開発に集中できる。企業のデジタルトランスフォーメーションを加速するサービスになる」(Chan氏)と述べた。AzureのフルマネージドOpenShiftは、5月の発表時点で「数カ月以内にプレビューをリリースする予定」とアナウンスされており、間もなく利用開始になるとみられる。

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