Radeon Instinctがゲームに向かない理由は
価格と生産量
話を戻すと、なぜRadeon Instinctがゲームに向かないかというと、まず価格面である。Globalfoundriesでは詳細を明らかにしていないが、7LPPでは14LPPと比較して、ウェハーの製造コストが軽く倍以上になるようだ(ついにウェハー1枚1万ドルの大台を突破したらしい)。
理由は複雑な製造過程で(トランジスタ層はSAQP、M0~M3の配線層はSADPでそれぞれ構築する)、インテルほど冒険をしていない(例えばM0層の配線ピッチは40nm、M1層は56nmである)とはいえ、相応に手間がかかることは否めない。
これはそのままチップ原価に跳ね返るわけで、ダイサイズは3割減ったといっても、実質的にダイの製造原価は40%以上アップすることになる。おまけにまだまだ高価なHBMを4倍も搭載するわけで、こちらの価格も倍以上のアップとなる。
こう考えると、現実的なビデオカード価格がTITAN V並になることは避けられないだろう(Tesla V100の100万超えはプレミアとかサポートとか色々他の要素が加味されているが、ここでは純粋に製造原価を考えているので、TITAN Vで比較したい)。
もちろんこの価格でも買う人間はいるだろうが(例:KTU)、インパクトはあっても市場に大きな影響を与えるものではないだろう。もう少し性能を下げて、それこそGeForce GTX 1080Tiあたりと競合できるようにするとなると、初期の7nm世代の高コスト体質では採算が合わないと思われる。
もう1つの問題は生産量だ。GlobalfoundriesはSoC向けとHPC向けの2つの7nmプロセスを用意している。少なくともVega 7nmは間違いなくSoC向けを使っており、Zen 2が果たしてどっちかは現時点では不明だが、どちらにせよまだ量産初期段階であり、そうそう大量には製造ができない(動作プロファイルを見るとZen 2もSoCを使いそうな気がする)。
おまけに厄介なのは、Globalfoundriesで7LPPを製造しているのはニューヨークのFab 8のみという状況なことだ。Fab 8は7LPPのみならず12/14LPP、さらに22FDX/12FDXも手がけており、おまけにEUVもやはりFab 8のみに導入する計画のため、明らかにキャパシティーが足りない。
以前GlobalfoundriesはFab 8を拡張(Module 2)する計画を立てていたが、一度計画は中断しており、現在もまだ拡張に関しては検討中のままである。こうした状況では、AMDは利幅が取れる製品(Radeon Instinct、EPYC)に7nmを優先的に割り当てざるを得ないし、そうなるとゲーミング向けGPUは当然後回しになるだろう。
したがって、連載442回で紹介した12nm世代のプロセスを使ったVegaのリフレッシュ版は非常にリーズナブルなはずなのだが、これがさっぱり出てこないのが不思議ではある。COMPUTEXでもMarinkovic氏をさんざん問い詰めたのだが、この件に関しては口が堅くて何もしゃべってくれなかった。
もっともまもなくAMDはRyzen Threadripper 2を発売するはずで(一応第3四半期中とは言っているが、初代Threadripperは昨年の8月初頭に発売された)、このあたりのタイミングでなにかしらの情報が出てくることを期待したいところだ。
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