前回に引き続き、AMDのCOMPUTEXにおける発表を説明しよう。今回はGPU周りである。発表の順序としてはRadeon RX Vega56 Nanoからになる。
Radeon RX Vega56 Nano発表
Vega64 Nanoは熱と消費電力が厳しく非現実的
もともとRadeon RX Vega56 Nanoのオリジナルは、昨年8月にSIGGRAPHで突如登場したビデオカードである。
この際の画像と今回の画像を比較していただくとわかるが、そもそもファンの位置が微妙に違うし(口径はほぼ同程度)、全長も気持ち長めになっている気がする。また、補助電源コネクターも昨年のものは8ピン×1だったのが、今回発表されたものは8ピン+6ピンになっている。
ということで、昨年発表されたアレはなんだったのか? という話だが、Sasa Marinkovic氏によれば「もともと昨年公開したものはコンセプトモデルという位置づけのもので、そこから改めて製品化に向けて仕様を決めた」そうである。ちなみにMarinkovic氏は「サイズは(コンセプトモデルと)同じ」としている。
さて、Radeon RX Vega56 Nanoであるが、カタログスペック的にはRadeon RX Vega 56とほぼ同一で、56CU・定格1156MHz/ブースト時最大1471MHz・HBM2 8GBとなっている。
わずかに違うのは、Radeon RX Vega56のリファレンスでは補助電源が8ピン×2な程度だ。ただこれもMarinkovic氏によれば、「スペックは一緒だが動作プロファイルが異なる」という話であった。放熱能力的にはNanoの方がやや厳しいため、温度が上がり始めた際の動作周波数の下げ方をより急にしてあるのだと思われる。
ついでに書いておけば、OEM元であるPowerColorはカードサイズを170mmとしており、これはMini ITXに対応したキューブケースにぎりぎり入る大きさだが、当然放熱はさらに厳しくなる。おそらくプロファイルは、こうしたケースも想定していると思われるので、比較すると特に連続稼動時の性能低下がより顕著になる可能性はあるだろう。
ちなみに今回はPowerColorが製品化したわけだが、別にPowerColorとの独占契約というわけではないそうで、他社からも製品が登場する可能性はあるそうだ(具体的な話はMarinkovic氏も教えてくれなかった)。
なぜVega64ではなくVega56なのか? については「それ(Vega64)は良いアイディアとは思えない。確かに技術的には可能だが、熱と消費電力がさらに厳しいことになるから、フル(定格周波数)で動かすことは困難だろう。個人的にはRadeon RX Vega56が良いバランスだと思っている」という回答であった。
確かに水冷ヘッドでも付けない限り、Mini ITXのケースに収めた状態で連続稼動はかなり厳しいだろうし、水冷ヘッドを付けた時点ですでにMini ITXのケースに収まりそうにない。

この連載の記事
-
第855回
PC
配線太さがジュース缶並み!? 800V DC供給で電力損失7~10%削減を可能にする次世代データセンターラック技術 -
第854回
PC
巨大ラジエーターで熱管理! NVIDIA GB200/300搭載NVL72ラックがもたらす次世代AIインフラの全貌 -
第853回
PC
7つのカメラと高度な6DOF・Depthセンサー搭載、Meta Orionが切り開く没入感抜群の新ARスマートグラス技術 -
第852回
PC
Google最新TPU「Ironwood」は前世代比4.7倍の性能向上かつ160Wの低消費電力で圧倒的省エネを実現 -
第851回
PC
Instinct MI400/MI500登場でAI/HPC向けGPUはどう変わる? CoWoS-L採用の詳細も判明 AMD GPUロードマップ -
第850回
デジタル
Zen 6+Zen 6c、そしてZen 7へ! EPYCは256コアへ向かう AMD CPUロードマップ -
第849回
PC
d-MatrixのAIプロセッサーCorsairはNVIDIA GB200に匹敵する性能を600Wの消費電力で実現 -
第848回
PC
消えたTofinoの残響 Intel IPU E2200がつなぐイーサネットの未来 -
第847回
PC
国産プロセッサーのPEZY-SC4sが消費電力わずか212Wで高効率99.2%を記録! 次世代省電力チップの決定版に王手 -
第846回
PC
Eコア288基の次世代Xeon「Clearwater Forest」に見る効率設計の極意 インテル CPUロードマップ -
第845回
PC
最大256MB共有キャッシュ対応で大規模処理も快適! Cuzcoが実現する高性能・拡張自在なRISC-Vプロセッサーの秘密 - この連載の一覧へ

