日本のキャリアが販売するスマートフォンは基本的にスマートフォンメーカーの開発品です。しかし海外ではキャリアが自らスマートフォンを開発する例も見られます。今回紹介する中国のチャイナモバイルも、自社ブランドのスマートフォンを中国国内だけではなく海外にも展開しています。世界最大の携帯キャリアでもある同社のスマートフォンの動きを振り返ります。
3Gスタート時の失敗を反省し、低価格な4Gスマートフォンを投入
世界最大の加入者数を誇る中国のキャリア、それがチャイナモバイル(中国移動)です。中国の3つのキャリア各社はスマートフォンを販売していますが、中国の端末マーケットはSIMフリー。キャリア専用品という考え方は無く、端末とSIMの組み合わせは自由です。とはいえ各キャリアは加入者数を増やすため自社で販売する端末種類を増やしています。
中国では2008年から相次いで3Gサービスが始まりました。チャイナモバイルは中国独自のTD-SCDMA方式を採用したため、提供できる端末に種類に限りもあり、当初は加入者数をなかなか伸ばすことができませんでした。シェア2位のチャイナユニコム(中国聯通)、3位のチャイナテレコム(中国電信)はそれぞれグローバル規格であるW-CDMA、CDMA2000を採用し、3G加入者を順調に伸ばすことに成功します。
TD-SCDMAは中国政府が国策として中国での普及、そしてグローバル市場への拡大を考えたものの、商用化を急いだがために端末とカバレッジエリアが不備のままスタートしてしまいました。その結果、チャイナモバイルの3Gは「端末がマイナーメーカーしかない」「使える場所が少ない」「速度も遅い」と悪評を受けてしまったのです。またiPhoneがなかなかTD-SCDMAに対応しなかったことも誤算でした。その後徐々に問題は改善されたものの、消費者が求めているのは「独自の技術ではなく使える技術」であることを明白にしました。
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