スマホやタブレットユーザーがPCユーザー人口を上回っていても、長文入力には物理キーボードを使うという人がいるだろう。
いわばキーボードは人間の手の延長にあるデバイスなのだ。ゆえにキーボードには強いこだわりを持つ人がいる。そしてその中にはまだ見ぬ“Endgame(究極の)キーボード”を求めて日々キーボードショップ(あるのか?)をさまよい続けるのだ。
しかし、Endgameキーボードが簡単に見つからない場合も珍しくない。キーの配列が、デザインが、タイピングの感触が気に入らないなど、既成のキーボードに不満を感じる人も多いのだ。
近年、海外のサイトgeekhackやredditなどでキーボードを自作するマニアが増えており、その波が日本にも到来した。
キーボードを自作するための知識がない人もいるだろう。そんな“キーボー道”の門を叩き、キーボード沼の深淵へと誘うための知識を紹介するのがこの企画。キーボード好きを自認するなら、ぜひ沼の最深部に挑んでいただきたい。
キースイッチの違いを知るのが
キーボー道への近道
キーボードを構成する要素は「キーの配列(数)」から「キーキャップ形状」「インターフェース」「付加機能(マクロなど)」さまざまあるが、とっかかりとして一番分かりやすいのは「キースイッチの種類」だ。つまりキーを押すという動作をどういう仕組みで検知するかが、キーボー道では非常に重要なのである。
キースイッチの種類にはいくつもの方式があるが、ここでは代表的なものに絞って解説する。
メンブレン式
実売数百円の安キーボードや安ノートPCのキーボードに多いのが「メンブレン」と呼ばれるタイプ。2枚のフィルム基板に接点と回路を用意し、上にラバーカップ、最上部にキーキャップを配置する。押下する圧力はラバーカップが吸収し、一定の圧力でカップが“ヘコッ”と潰れた時にフィルム基板上の接点が接触、通電するという仕掛けだ。
安く作れるのが最大のメリットだが、タッチがソフトで静かなため、安価なメンブレンでも固定ファンが多い。逆に打鍵感のキレが曖昧になりやすい、あるいはしっかり底まで押し込まないと反応しない、安さ重視ゆえにキーの同時押し数に制限がある(すべての製品ではない)といった特性を嫌う人もいる。
最近は、Razerなどがメンブレン式にメカニカル式(後述)の機構を組み合わせ、メンブレンなのにメカニカル風の打鍵感や音をプラスしたキースイッチを開発している。
ちなみにノートPC用キーボードで多用される「パンタグラフ式」は、基本的にメンブレン式だが、樹脂や金属製のパーツでキーキャップが均等に沈み込むような機構を加えたものだ。キーストロークが浅く、滑らかに動作するのが長所。反面耐久性や全体の剛性感が犠牲になりやすい。
静電容量無接点式
キーキャップの下にスプリングが仕込んであり、これが押しつぶされて変形すると、検出回路が検知する電荷も変化する。この変化を捉えて押下を判定するタイプだ。
物理的接点がないので、耐久性が良い(セブンイレブンのATMでも使われている)こと、チャタリング(後述)の心配がないこと。さらに電荷量の判定基準を変えれば、どこまで押下すれば“押された”と判定されるか、即ち「トラベリングディスタンス」を変更できるなど、優れたメリットを備えている。欠点は回路設計が難しいことだ。
国内では東プレの「Realforce」シリーズが有名だが、韓国の「Leopold」、中国の「NiZ」など、同種のスイッチを使用したキーボードも出回っている。
この連載の記事
-
第4回
PCパーツ
カスタムキーマップで自作キーボードを自分の分身とする -
第3回
PCパーツ
オープンソース系自作キーボード「Iris」のビルドに挑戦 -
第2回
PCパーツ
自作キーボード用パーツをそろえて、お手軽自作に挑戦 -
PCパーツ
KTUの自作キーボー道 - この連載の一覧へ