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業務改善に効く最新ビジネスクラウド活用術 第5回

容量無制限と高いセキュリティが魅力的

法人利用に便利なクラウドストレージ「Box」を使い始めるまで

2017年11月22日 09時00分更新

文● 柳谷智宣

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 今回から4回に渡って紹介するのは、クラウドストレージサービスの「Box」。2005年にアメリカで創業し、ビジネス市場でじわじわとシェアを伸ばし、現在では世界中で7万5000社以上、4100万ユーザーが利用しているサービスとなっている。日本では、2014年に日本語版サービスがスタートしている。

Fortune 500企業の65%が利用しているストレージサービス「Box」

ビジネスユースに特化して多くの企業に選ばれる「Box」

 国内でBoxを利用しているユーザー企業もそうそうたる顔ぶれ。DeNAやGREE、KDDI、KONICA MINOLTA、GungHo、SEGAなどのIT企業から、流通系ではセブン‐イレブン・ジャパンやファミリーマート、商社では伊藤忠商事、三井物産、丸紅、大学では慶応義塾大学、東京理科大学、そのほかJALや中外製薬なども導入を発表している。

boxのウェブサイト

国内でも多数の有名企業がBoxを契約して利用している

 クラウドストレージとしての機能も便利なのだが、その前に大手企業が気にするのがセキュリティーだろう。会社の命運を握りかねないデータを果たして外部に保存して大丈夫なのか? と心配するのは当然のこと。もちろん、これだけの顧客に選ばれ続けているということは、当然Boxもセキュリティには力を入れている。

 Boxのセキュリティ対策は何層にも施されている。まず、すべての通信経路は256ビットのSSLで暗号化されており、複数の認証方式を用意しているのでなりすましにも対応。データセンターの保護も万全。災害対策で冗長化されており、従業員が自由にユーザーのデータにアクセスできるようなこともない。

 データはすべて暗号化されており、バックアップもばっちり。個人情報を保存するデータセンターがある国(地域)を指定することも可能だという。これは、たとえば米国愛国者法(すでに失効済み)などの外国の法律により、強制的に情報を開示されてしまうのを防ぎたい大企業にとっては気になるところ。もちろん、日本の企業は日本に置くことを希望することが多いという。最近ニュースになることも多いサイバー攻撃にも、複数の対策が用意されており、顧客のデータもばっちり保護している。

 ISO27001、ISO27018、HIPPA and HITECH、FedRAMP、FIPS 140-2といった国際的なセキュリティー・コンプライアンス規格に準拠しているのも安心。実際は、Fortune 500に名を連ねるそうそうたる企業のうち65%が利用している、という事実の効果も大きいことだろう。

Boxのセキュリティ対策

データの保存先を選択できるオプション機能「boxZONES」

ISO27001やISO27018からちょっと珍しいセキュリティー規格にまで準拠している

 もちろんコストも気になるところ。個人向けの「Individualプラン」は無料の「個人ユーザー」と高機能な「Personal Pro」(月額1200円)を用意。ストレージ容量も個人ユーザーが10GB、Personal Proが100GBを確保し、ファイルの保管場所として利用することはもちろん可能だ。

 しかし、やはりBoxは企業ユースで本領を発揮する機能を多数備えている。「Businessプラン」には「Starter」「Business」「Business Plus」「Enterprise」の4プランがあり、「Starter」「Business」はBoxのWebサイトからすぐに契約できる。「Starter」は月額550円/ユーザー、「Business」は月額1800円/ユーザーとなる。しかし、クレジットカード払いになってしまうし、ちょっと日本のビジネスで使うには機能が足りないところがある。

 もっとも売れているのが「Business Plus」プランだ。「Business」プランの機能に加えて、外部とコラボレーションする機能を搭載しているのが特徴。「Business Plus」プランはウェブからは契約できず、Box Japanの提携パートナーが販売しているので、まずは問い合わせから。導入規模などの条件にはよるが、ボリュームディスカウントも用意されている。

boxの公式サイトに掲示されている価格表

海外では「Business Plus」プランは25ドル/ユーザー/月となるが、日本では販売パートナーに問い合わせしよう

容量無制限で使えるビジネスクラウド

 クラウドストレージ選びでまず目に飛び込んでくるのがストレージ容量だ。BoxはBusinessプラン以上なら、なんとストレージ容量は無制限。ビジネスで利用するファイルはどれだけアップロードしてもOKなのだ。ビジネス資料でも画像や動画を扱うことが多くなってきたので、いちいちファイルサイズを気にしなくてもいいのはありがたい。また、1ファイルの最大サイズは5GB。DVDビデオ1本分以上の動画ファイルも分割することなくアップロードできる。

 とはいえ、実はBoxそのものは、自分たちのサービスのことをクラウドストレージとは呼んでいない。この無制限利用のできるクラウドストレージを利用した「コンテンツ・マネジメント・プラットフォーム」を謳っているのだ。

 さまざまなビジネスに効く機能が充実しているのだが、まず押さえておきたいのがboxの使い方。「Box Sync」という機能を用意しており、Windows 10に付属するクラウドストレージ「OneDrive」のように、PCのHDD/SSD内にbox内のデータを同期することができる。しかし、多くの企業は同期機能は利用していないという。ファイルをアップロードし、インターネット経由でアクセスして活用しているのだ。

 これはちょっと驚いたのだが、企業のニーズを考えると当然でもある。まず、企業が保有するデータ量はなるべく減らしたいもの。しかし、ローカルとの同期をする場合、たとえばBox内のデータ1TBで1万人が利用する企業であれば、重複する同じデータが10ペタバイトも存在することになる。想像を絶する無駄な領域だ。また、その数だけローカルコピーが存在することになり、データの管理が面倒になるし、バージョン違いによる資料の先祖返りも起きかねない。ローカルのファイルはユーザーが自由に扱えるので、情報漏えいだって発生しやすくなるだろう。

 そこでデータはすべてBoxのクラウド上に置き、全員がインターネットを介してそこにアクセスし、データを活用するというフローのメリットが活きてくるのだ。

ファイルを個人のPCに置かないことで常に最新のファイルを効率よく管理できるようになる

 まず、仕事のデータはすべてBoxにある、というシンプルさが○。目当てのファイルがどこにあるか探す、といった行為から完全に解放される。Boxの検索機能を使えば必ず見つかる、というのは安心だ。メールにファイルを添付することもなくなる。ダウンロード用URLを記載するだけで済んでしまうのだ。通信量の抑制にもなるので、外出先での作業も快適。

 Office文書やPDF、画像などのファイルはBox上でプレビューできるので、ほかのアプリを起動する必要もない。PCでもMacでもスマホでもいつでもどこでもセキュアにアクセスでき、端末紛失時の対応も万全。すべてのログを記録しているので、社員の誤操作や不正操作もトレースして対処できる。ファイルの世代バックアップは50世代前まで取っているので、何かあってもデータを巻き戻せる。

 もちろん、個別の機能それぞれに、また細かい機能や設定がたくさん用意されており、業務に合わせたフレキシブルな運用が可能。現在も活発に開発が続けられており、新機能やオプションがどんどん追加されている。企業がチョイスするのも納得できる。

boxを導入するといろいろとTCO(Total Cost of Ownership)を削減できる

 通常、企業が導入を検討するなら、販売パートナーに問い合わせることになる。しかし、とりあえず使ってみたいのであれば、体験版を利用しよう。Boxのサイトから「試す」をクリックして申し込めばいい。クレジットカードを登録する必要があるが、期間内にキャンセルすれば課金されることはない。

プランの「試す」をクリックする

アカウントを作成し、クレジットカードを登録したら無料トライアルを申し込む

Boxにアクセスできた

 次回は、Boxを使って社内や社外とファイルを共有する方法を紹介する。ほかのクラウドストレージにはない柔軟なアクセス権限管理が便利なのだ。

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