スマートフォンからステレオミニジャックが消えつつある今、伸び盛りの製品カテゴリー「トゥルーワイヤレスイヤフォン」。しかし新しいカテゴリーゆえ、なかなか選びどころがわからない。
そこでトゥルーワイヤレスイヤフォンにはどんな製品があるのか、価格帯別に概観してみよう。というのがこの稿のテーマ。2017年6月末までに発売された製品レビューのまとめである。
価格はe☆イヤホンの販売価格を参考につつ、抜税価格でアンダー1万円(0-9999円)、1万円台(1万-1万9999円)、2万円オーバー(2万-∞)の3クラスに分けた。価格の違いはどこに現れるのか、予算に応じてなにを基準に選べばいいのか。レビューワーである私個人も、それが知りたかった。
今回はその3回目、現時点で最上位の価格帯、オーバー2万円台。お高いトゥルーワイヤレスってどれくらいいいのか?
今回のテスト機種
Jabra Elite Sport 3万2800円
ERATO APOLLO 7s 3万9830円
価格の理由はどこにあるのか
このカテゴリーのイヤフォンで注目を集めた「EARIN M-1」は、2015年末に実売2万9800円で登場。これくらいの価格がカテゴリーの基準になるのかな? と思っていた1年後に、AppleがAirPodsを1万6800円で売り始めた。
加えてクアルコムが供給するトゥルーワイヤレス向けのBluetoothチップを使って、中華系新興ブランドが続々と激安製品を投入。古い製品は徐々に値を下げ、国内の代理店を通じて入手できる製品でも、1万円を切る製品がいくつも登場というのが現況。
いま2万円台以上で売られている製品は、ユーザーの支持が厚く価格を下げる必要のなかったものか、ほかにない付加価値が付いているから。今のところトゥルーワイヤレスに使える技術やパーツは限られているため、高価だからと言って再生音が段違いに優れているというわけでもない。では、どこが価格を支える理由なのか。
心拍・加速度センサーが付いて音も悪くないJabra Elite Sport
JabraのElite Sportはイヤフォンに心拍センサーと加速度センサーを付けた製品。ヘッドセットを造り慣れた通信機器老舗の製品らしく、イヤフォン本体の造りは抜群で、センサー類の応用も決しておまけ程度のものではない。
この製品は6月半ばにマイナーチェンジを受け、スタビライザーがライムグリーン、本体色グレーのツートーンモデルが追加。従来のブラックと合わせて2色展開になった。あわせてイヤフォンの中身もBluetooth 4.2にアップデートされ、音楽の連続再生時間は3時間から4.5時間に伸びている。
スポーツ用途を想定したタフな造りが特徴で、まずスタビライザーのフィッティングさえしっかりできれば、装着安定性は非常に高い。そして高い防水性能。普通は汗や水しぶきに耐える程度のものだが、この機種は1mの水中に30分間没しても平気なIP67の防塵防水性能を持っている。
機能も豊富で、AirPodsのように最後に接続したポイントを地図に表示する「ヘッドホンを探す」や、イヤフォンを外さずマイク経由で外の音が聞ける「ヒアスルー」、ヘッドセット利用時に自分の声をモニターする「側音」、そしてスマートフォン側の専用アプリには、ワンノブインターフェースで望みのEQカーブが得られる「音楽用イコライザー」も用意されている。
心拍計や加速度センサーを使った機能も、スマートフォンのアプリを利用する。アプリにはVo2MAXの測定をはじめ、各種ワークアウトのメニューが用意され、音声による心拍数や経過時間などのモニター、コーチング機能もある。腕立て伏せやワークアウトのような運動は、加速度センサーで回数をカウントしてくれるのもおもしろい。
そして意外と言っては失礼だが、イヤフォン本体の音質もほかに負けていない。中低域に厚みのある線の太いサウンドは、1万円台後半のボリュームゾーンの製品と比較しても個性が立っている。
つまり現状の優れたトゥルーワイヤレスイヤフォンに、1万円ちょっとプラスで心拍&加速度センサー、そしてトレーニングコーチ(アプリ)が付いてくると考えればいい。
ただし、ライフログセンサーのようにセンサー側にデータをメモリーする機能はなく、スマートフォンと接続した状態でなければ心拍データなどは取れない。イヤフォンの物性から仕方のないことだが、スマートフォンの非接続時でも本体内にデータをメモリーできるようになれば完璧だ。それと、スポールモデルだから関係ないとはいえ、動画再生の音声ズレは大きい。このへんは次のアップデートに期待したいところ。
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