ドコモの設備共用で月額50万円から、「ローカル5Gサービス TypeD」発表
商用導入が進まないローカル5G NTT Comが“3つの課題”解決の新たな一手
2025年03月26日 08時00分更新
NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、NTTドコモのキャリア通信に用いられる設備を共用することで、冗長性と保守性を低コストで確保できる「ローカル5Gサービス TypeD」の受付を、2025年3月25日より開始した。
同社のプラットフォームサービス本部 5G&IoTサービス部 5Gサービス部門長である岩本健嗣氏は、ローカル5G市場の現状について、「当初の見立てより3、4年遅れている」と説明。商用導入のハードルを解消する新たな選択肢を、同サービスで提示する。
ローカル5Gの商用導入が進まない理由とは?
個別に免許される自営網で運用され、無線回線の逼迫や干渉の影響を受けづらい専有の5G通信環境を構築できるローカル5G。NTT Comでも、法人向けネットワークコンサルティングサービスである「docomo business プライベート5G」において、機器から運用までがパッケージ化されたサービスタイプから、柔軟にカスタマイズ可能なオーダーメイドタイプまで、要件に応じたローカル5Gの構築を提案してきた。
一方で、岩本氏は、「ローカル5Gの市場全体が、制度化以降、当初の見立てより3、4年遅れている」と語る。NTT Comの実績も、大多数はPoC(実証導入)であり、商用導入は22%にとどまっているのが現状だという。
なぜ商用導入が進まないのか。最初に挙がる課題は「コストの面でROIが成立しにくい」(岩本氏)点だという。機器の購入や工事費などのイニシャルコストに加えて、保守・ライセンス費などのランニングコストもかさみ、トータルでコストを低減しないと導入が進まない状況だという。
もうひとつは、商用導入に耐えうる「設備の冗長化」と「保守体制」のハードルだ。「実用化していくには、無線区間だけではなく5Gのコアネットワーク区間を含めて冗長化したいという声が多い」と岩本氏。通信断になってもサービスを継続できる仕組みと、利用用途に合わせた監視保守が求められており、こうした冗長性、保守性を確保するとさらにコストが増大する。
キャリア設備と監視保守を共用化、免許取得も不要に
こうした商用導入のハードルを解消するのが、クラウドへの接続に特化したローカル5G通信を提供する「ローカル5Gサービス TypeD」である。NTTドコモのキャリアネットワークに用いられる設備を共用する形でのアーキテクチャがとられ、ゲートウェイを経由して顧客のシステムやデータセンターと接続する。
岩本氏は同サービスの特徴を3つ挙げる。
ひとつ目は、商用利用の課題であったローカル5Gの冗長性と保守性を「低コスト」で確保できることだ。ドコモのキャリア通信設備を共用することで、キャリアレベルの冗長性を確保でき、RU(無線装置)/アンテナも周波数冗長を実現。さらに、設備の監視保守もキャリア通信設備と合わせて行われ、24時間365日体制をとる全国の保守拠点からの駆け付け保守も標準提供される。
2つ目は「省スペース」で構築できることだ。交換機やCU(データ処理部)、DU(無線信号処理部)、UPF(U-planeデータ処理装置)、GPSアンテナおよびGPS用同軸ケーブル(配管含む)の設置が不要になり、敷地内に設置するのは用意されるRUとアンテナのみ。従来の構成と比べ、設置スペースが9割程度も削減できるという。
3つ目は、クラウドやインターネット、データセンターへの接続が「ワンストップ」で用意されることだ。ネットワーク領域の構成検討から構築までが一括で提供される。NTT Comの「Flexible Interconnect」を活用した閉域接続にも対応するという。
また、本サービスは、無線の免許人がNTT Comになるため、ローカル5Gの利用時に必要な無線免許の取得や総務省への届け出も不要となる。
ローカル5Gサービス TypeDは、2025年3月25日より受付を開始。最小構成で月額50万円(税抜)からのサブスクリプションサービスとして提供される。同サービスの提供によって、ローカル5Gにおけるネットワークインフラ市場の30%から40%のシェアにあたる、数十億円規模の売上を目標としている。
