KDDIは、次世代モバイル技術「5G」における周波数の候補である28GHz帯を利用した、基地局間での通信を切り替えるハンドオーバーの実験に国内で初めて成功したことを発表した。また、5Gを活用したIoT時代のセキュリティーシステムの実証実験について、セコムと提携することも合わせて公表した。これらについて、都内でメディア向け説明会が行なわれた。
移動に弱い高周波数帯で、市街地でのハンドオーバーに成功
5Gは、東京五輪が開催される2020年のスタートを各社が目指している次世代技術で、特徴としては高速・大容量に加えて、低遅延がある。またスマートフォンのような通信機器に限定されず、IoTや自動車など、人の生活に関わる大量の機器を接続することが想定されている。
その5Gでは、Gbpsオーバーの高速・大容量を実現するために、これまでの携帯電話では使われてこなかった高い周波数帯を活用する。このような高い周波数帯では直進性が強くなり、電波が飛びにくくなる。そのため、電波の方向を絞って遠くまで飛ばすビームフォーミングと呼ばれる技術を用いる。
一方でビームフォーミングでは電波が飛ぶ幅が狭くなるため、どうしても通信機器の移動には弱くなる。通信する基地局を切り替えて通信を維持するハンドオーバーを実現するためには、基地局間でデバイスの位置を正確に把握する技術が必要であり、今回この実験に成功したというわけだ。実験はサムスン電子との技術協力のもと、自動車内に設置された通信機器を用いて、市街地や高速道路を移動して行なわれた。
大容量・低遅延・多接続という5Gの特性を
リアルなセキュリティーシステムに応用する
5Gのもうひとつの特徴である低遅延については、遠隔医療やコンテンツの配信など、さまざまな用途が検証されている段階だ。その1つがセコムとの提携による実験である。
今年5月から予定されている実験では、警備員が装着したウェアラブルカメラの映像を中継車に集約して5G通信で転送。セコムの実験設備内での監視に用いる。
同種の手法による監視はすでに大規模イベントで導入されており、その際はauの4G LTE網が用いられている。ただ、ネットワーク容量の制限で画質や台数に制限があったという。5Gの活用でその制限が緩和されることにより、さらなる警備の質の向上を期待しているとのことだ。