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スタートアップ的手法で美味しくなる獺祭 トレタ FOODiT TOKYO 2016開催

 飲食店向けにクラウド型予約台帳サービスを提供しているトレタは、飲食業界の未来を考えるカンファレンス“FOODiT TOKYO 2016”を8月22日に開催した。基調講演に登壇したのは、新しい取り組みで酒造メーカーの常識を打ち破り、日本酒『獺祭』を日本のブランドにまで築き上げた旭酒造株式会社の桜井博志代表取締役社長。“『獺祭』の挑戦――「常識」を打ち破った取り組みの軌跡と未来”の題で語られたのは、30年間で2億円の売上から40億円にまでなった旭酒造の、まさにスタートアップ的手法だった。

美味しくなければ価値がない『獺祭』の取り組み

 40年間で日本酒業界は売上が1/3にまで減少。旭酒造も同様に、10年間は売上が下落していた。しかしその後の30年間で販売数量16倍、売上金額は40倍にまで上がった。桜井社長がその理由にあげたのは「美味しくなければ酒は価値なし」と、「経験や勘に頼らない」と自身の方法論と「既存の市場にこだわらない」というビジネス戦略だった。

 通常、冬の寒い時期につくる日本酒に対して、旭酒造では“四季醸造体制”を選択。年間365日動いている酒造だからできる、前の仕込みを常に反省しながらつくれるメリットがあると語る。また大型の酒造であれば、そのぶんタンクも大型化してオートメーションで動いているところが多いが、旭酒造ではその規模としてはめずらしく小さいタンクを利用している。小さい分、データを徹底的に途中経過まで追いかけられるという理由からだ。経験や勘はもちろん大事だが、それには圧倒的なデータの蓄積が必要だと話す。

 「テクノロジーでつくっているお酒は使いません」と批判を受けたこともあるが、「伝統の手法に固執することは弱点になる」と姿勢は変えない。日本の産業の問題点として、伝統に固執してしまうことをあげ、そのことが美味しいものをつくってお客様を幸せにする目的を忘れることにつながっているとした。日本酒のスタイルが定まったとされる室町時代の文献どおりにつくってみても、現代の味とは異なる。500年間のうちに杜氏の職人が工夫して改善してきた歴史があり、そもそも造り方は変わっていくもので、手法は結果のためにしかない。

 使用する山田錦の生産量を増やすため、兵庫からはじまり、新潟や栃木、茨城まで積極的に他の地方へも展開。富士通と組んで、田んぼのそばにICTのセンサーを導入。湿度や温度など栽培情報を測っている。結果、山田錦の生産量は62万俵を超えた。

 マーケティングも既存の市場に捉われず、自分たちがいいと思った、売れる酒屋にしか販売しない手法で価値を高める。東京中心に攻めたあとに地方へ手を伸ばすのではなく、国外の大きな市場に出ていくことで価値、価格を下げずに利益を守る。まるでスタートアップがサービスをつくるように日本酒の醸造とマーケットを取りにいく手法は、この日集まった飲食業界関係者だけでなく、ベンチャー関係者にもためになったのではないだろうか。

トレタのプラットフォーム、予約ツールから経営のインフラへ

 基調講演に続いて登壇したのは、トレタの中村仁代表取締役。2年半前、飲食店が利用するオンライン予約台帳としてスタートしたトレタも毎月のように新機能のバージョンアップを行ない、予約管理に加えて、顧客管理、さらに店舗のテーブル管理まで行なえるようになった。現在、利用店舗は約7000店舗、予約台帳サービスのシェアは2015年時点で33.5%と業界ナンバーワン。予約件数も1200万件を超え、毎日数万件で増えている状況だ。

 具体的な導入事例では、すしざんまいで団体予約にかかっていた時間が24時間から10分に短縮した例や、焼鳥店の酉たかはトレタで取得した過去の予約データを分析して、開店時間を変更することで1日2回転から3回転と変更した例、そのほかにも予約満杯時に姉妹店に送客することで売上を伸ばす例、前回の来店情報などの顧客情報を利用して接客サービスを変えることでリピート率を上げることができている例などをあげてトレタ利用の利点を説明。今あるリソースの中でも、データを活用することでお客さまの満足度を上げていけるとした。

 これらの活用事例からもわかるよう、予約台帳サービスにとどまらない、中村氏はトレタの描く未来として“集客プラットフォーム構想”を掲げた。グルメサイト・メディアからの送客効果の最大化、顧客分析、常連化施策、来店機会の最大化、機会損失の低下、満足度の向上など、トレタと他のツールを連携することで実現できるとした。

 すでに導入している事例に、“トレタメディアコネクト”がある。ヤフーや楽天、LINEのプラットフォームサービスのほか、favyやペコッターなどベンチャーのサービスなど14のグルメ媒体にトレタのもっている空席情報を連携させ、媒体のユーザーが予約できるようにするサービスだ。飲食店は単価が高く常連客になりやすいお客を送客をしてくれるメディア、単価は安く単発だが宴会が多くて一度に大人数を送客してくれるメディアなど、メディアからの送客データを読み取ることで、これからはメディアを組み合わせて使い分けをしていくことができるようになるとした。

 そのほかにも、POSレジとつなぐことでオーダー情報を予約データに結び付け、次回来店時の接客方法や仕入れ状況を変える“POSコネクト”、さらにはセールスフォースとの連携で顧客データを分析して再来店利用のメールを送るなどができる“CRMコネクト”も発表済みだ。

 今後は、アナリティクスの高度化や、デポジット機能が付いたペイメント、外国語対応、プラン予約の導入などさまざまなサービスを可能にしていく。「これからは飲食店が最適なツールを選び、さまざまなツールが連携していくことで、テクノロジーの恩恵を最大にしていく。これらを手動ではなく、カンタンに導入できるようにする」(中村代表)ことが、プラットフォーム構想だとしていた。

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