日本の製造業はIoTに高い関心を寄せている
日本マイクロソフトと東京エレクトロン デバイスが中心となって2月にスタートした「IoTビジネス共創ラボ」が、当初見通しを上回る勢いで拡大を続けている。
今年2月の発表時点では、今後1年間で100社の参加を見込むとしていたが、日本マイクロソフトの平野拓也社長によると、6月末時点の参加企業数は130社。今年3月および5月に開催した勉強会には、それぞれ200人の定員に350人が応募。Facebookへの登録も、すでに1000人を超えているという。ワーキンググループに参加せずに、勉強会だけに参加している企業を含めると、すでに200社以上がこの活動に関わっているという。
東京エレクトロン デバイスの徳重敦之社長は、「これだけの参加企業が集まったのは、日本マイクロソフトのコミュニティづくりのうまさによるもの」と笑いながらも、「IoTに興味を持つ企業が多いことの証。しかし、IoTはまだまだ未知の領域。ノウハウを持たない企業が多く、知識を得たいという企業の参加が多い。なかでも製造業が、IoTビジネス共創ラボに高い関心を寄せている」と語る。
だが、その一方でこうも語る。
「これだけ多くの企業が参加することで、センサーの活用方法や分析方法など、規模や業種によって様々なニーズがあることがわかる。基盤はAzureを活用するにしても、アウトプットの仕方は千差万別。多品種少量がIoTの基本であり、数多くの事例を集めることで、IoTの活用ノウハウを集約できる」。
IoTビジネス共創ラボは、IoTプロジェクトの共同検証を行う取り組みで、日本市場におけるIoTの普及と、ビジネス機会拡大を目的としており、参加企業を拡大することで、様々な案件を創出。さらに、IoT環境におけるクラウドサービスとデバイスの利用に向けて、Microsoft Azureをベースとしたソリューション開発の促進や、共同検証結果の発表、参加企業とエンドユーザー企業とのマッチングの場を提供。また、IoT技術者の育成活動なども行っていくという。
こうした様々なIoTへの取り組みを通じて、「IoTエキスパートによるエコシステムの構築」「プロジェクトの共同検証によるノウハウ共有」「先進事例の共有によるIoT導入の促進」という3つの成果につなげることになる。
設立時には、東京エレクトロン デバイスが幹事社となり、日本マイクロソフトが事務局を務めたほか、アクセンチュア、アバナード、テクノスデータサイエンス・マーケティング、電通国際情報サービス、ナレッジコミュニケーション、日本ユニシス、ブレインパッド、ユニアデックスの8社が発足メンバーとして参加している。
具体的な活動としては、ビジネスインパクトを持ったIoTシナリオを検討する「ビジネスワーキンググループ」、モノから収集・蓄積した多様なデータを分析・活用する「分析ワーキンググループ」に加えて、業種ごとに、「製造ワーキンググループ」「物流・社会インフラワーキンググループ」「ヘルスケアワーキンググループ」を設置。それぞれの分野におけるIoT普及活動に取り組む。
東京エレクトロン デバイスがリーダーを務める製造ワーキンググループでは、故障検知や需要予測などに活用する事例に関心が集まっており、「日本の製造業に最適化したIoTを模索する動きがみられている」という。
IoTビジネス共創ラボへの参加企業としては、製造業のほか、流通、医療などにも広がっており、こうしたユーザー企業のほか、システムインテグレーターやコンサルティングファームなどの参加も増えているという。
「今後の課題をあげるとすれば、事例をもっと数多く紹介したいという点。事例を紹介することで、IoTに踏みだしやすくなる。だが、ユーザー企業固有の案件ということもあり、なかなか公開できない情報も多い」と、徳重敦之社長は頭を悩ませる。IoTビジネス共創ラボでは、今後1年間で、IoT関連で100案件の新規創出を目指すというが、今後、公開可能な事例をどれだけ集められるかが鍵だ。
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