国産とは何か? 国産PCメーカーでも自社で設計から生産まで、一貫して行なっているメーカーは案外少ない。
東芝のPC「dynabook」シリーズは、従来までコンシューマー向けの一部モデルで、PCメーカーでは一般的に行なわれている海外メーカーへの設計・製造委託、いわゆる「ODM生産」を行なってきた。しかし、4月1日より東芝のPC事業を継承した新会社「東芝クライアントソリューション」は、それまでのPC製造体制を見直し、ODM生産を廃止。すべてのdynabookシリーズを、中国の「東芝情報機器杭州社」(TIH=Toshiba Information Equipment Hangzhou)における完全自社生産へと切り替えた。そこで今回、実際に東芝情報機器杭州社を見学し、dynabookの品質やものづくりへのこだわりを探ってきた。
中国・杭州市はPC製造に最適の地
「東芝情報機器杭州社」(以下、TIH)は、中国浙江省の杭州市にある「杭州経済技術開発区」に位置している。杭州経済技術開発区は、800社ほどの海外企業や3000社ほどの国内企業が進出する、非常に大きな経済開発区となっているが、TIHはその中でも「輸出加工区」という特別な地区にある。この輸出加工区内は海外と同じ扱いとなっており、海外から部品を輸入したり、製品を海外に輸出する場合などに関税がかからないという。加えて、充実したインフラが整備されているなど、海外企業にとって非常に有利な地区なのだそうだ。
TIHが杭州経済技術開発区を選んだのは、それ以外にも大きな理由がある。それは、浙江省を含む中国の「華東地区」と呼ばれる地区に、PC関連部品メーカーの実に7割近くが集まっているからだという。日本でPCを製造する場合でも、多くの部品は中国製のため、部品を日本に輸入する必要があるが、TIHにはその必要がないのはもちろん、現地でスピーディーな部品調達が可能だ。また、部品メーカーと連携して部品の品質改善を手助けすることで、より高品質な部品も入手できるという。つまり、TIHが杭州経済技術開発区にあることで、部品調達から製品の品質まで多くの面で有利になるわけだ。
部品調達で有利なだけでなく、優秀な技術者の確保という面でも利点があるという。杭州市には、浙江大学など優秀な大学がある。また、専門学校など15の教育機関と連携し、TIHへの就職を希望している学生に対して入社前に教育を実施し、会社の文化や仕事内容に納得した人材を採用。これにより、優秀な技術者を確保しやすいだけでなく、作業員の離職率の低下にも繋がっているそうだ。
このように、TIHが位置する杭州市は、部品調達や人材確保、インフラ環境、優遇税制など、様々な面でPC製造に最適な地なのだ。