富士通と米Box(ボックス)は6月8日、コンテンツマネジメント分野での戦略的パートナーシップに関する基本合意書の締結を発表した。富士通は今後、社内のグローバルコミュニケーション基盤にBoxを導入してコンテンツ管理を強化するとともに、この社内導入で得られた知見をリファレンス化し、2017年からは「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc」の一部として顧客提供を開始する。
グローバルで約6万2000社が導入するBoxのソリューションは、ユーザーやグループ単位によるアクセス制御やActive Directory連携によるポリシー強化、平常時とは異なるログインに対するアラート通知、Boxと企業の双方で暗号鍵を管理してデータ保護を徹底する「マネージドエンクリプション」など、エンタープライズ対応のセキュリティ機能が高く評価されている。国内でも、すでにトヨタやDeNA、セガ、伊藤忠、資生堂など1000社以上に採用されている。
「現在多くの企業では、情報を共有する相手やグループによってアプリケーション含む共有方法を使い分ける必要があり、IT部門にとってもあらゆるプラットフォーム上にファイルが分散して統制できない。ビジネスにおいてスピードや競争力の向上が求められる中、こうした従来の情報共有の方法は足かせ以外にならない」
そう述べたBox共同創業者兼CEO アーロン・レヴィ氏は、これらの課題を解決するのが、Boxのコンテンツ管理プラットフォームと説明する。「ファイルをBoxのクラウド上に一元管理し、Webブラウザーベースでデバイス問わず安全にデータへアクセスできる。生産性向上や運用コストの削減に効果がある」。
そのBoxが、日本やアジアでの展開に向けてタッグを組んだのが富士通だ。Box Japan 代表取締役社長の古市克典氏は、優れたサービス開発力、提供力、SI力を備え、特に日本固有の商習慣を知り尽くす富士通との提携はBoxにとって大きいと述べる。
前述のとおり、富士通は提携に基づく最初のアクションとして、Boxを社内グローバルコミュニケーション基盤に導入する。富士通 執行役員常務 グローバルマーケティング部門長の阪井洋之氏は、Boxを採用した理由を「コンテンツの一元管理」「セキュリティ・情報漏洩対策の強化」「生産性の向上・コラボレーションの強化」の3つだとする。
「これまでメール添付でファイルを共有してきたが、Boxを採用してコンテンツを一元管理し、保存先のURLを記載する形で共有できるようになったことで重複して存在していたファイルが削減、ファイルストレージの80%が解放された」。そう述べた阪井氏は、PC紛失時のデータ損失のリスク低減、デバイスに依存しないコラボレーションの実現で10~20%の生産性向上なども取り上げた。
今後は、社内事例をリファレンス化してソリューションとして展開するほか、富士通の国内データセンターからMetaArcサービスの連携ソリューションとしてBoxを提供し、「製造・流通・公共ソリューション」や「CRM・ERP・ID管理ソリューション」との連携、アジア地域を始めとしたグローバルなビジネス展開などを推進していく。「静脈認証やクラウド型印刷サービスのPrintAnywhereなど、多くのサービスとの連携に向けて検証している」(阪井氏)。
先日、Boxは欧州やアジアなど各地域のデータセンターなどにデータを保存し、法規制やコンプライアンスに沿ったデータ管理を支援する「Box Zones」を発表した。こうした企業顧客のニーズに応えるBoxならではの各種機能については、富士通のデータセンターに実装可能かどうかを現在検証しているという。