スキルゼロのエンジニアが1年で運用デスマを解消した話 第6回
プライベートクラウド運用はトラブルだらけ!そして大規模障害の予兆が……
西牧とウインズ、アプリ開発部隊“19階”からの要求に応えられるのか?
2016年02月10日 07時00分更新
ソーラーウインズの管理ツールを使って、データセンターの「見える化」を進めてきた情シス子会社の西牧と妖精ウインズに最大の危機到来! 同社のエリート集団の“19階”がプライベートクラウドの構築をスタート! 二人の運命やいかに。
アプリ開発部のリーダーが漏らしたインフラ部への不満
本日、西牧が参加したのは、インフラのプライベートクラウド化を進めるプロジェクトの連絡会議。社内のエリート集団であるアプリケーション開発部(通称19階)との初折衝にインフラ部部長の八尋と臨むことになったが、やはり要求は厳しいようだ。特にアプリ開発部の女性リーダー中村は、舌鋒鋭い物言いで有名。厳しい連絡会議の現場をのぞいてみよう。
アプリ開発部中村(以下、中村):インフラ部のみなさまにはお時間とっていただき、ありがとうございます。今回は、次年度で社運をかけて行なわれる「プライベートクラウド開発プロジェクト」についてご説明させていただきます。
取締役:中村君、お手やわらかに頼むよ。
中村:はい。現在、弊社の収益の多くは親会社のシステム開発・運用でまかなわれており、外注率は現状10%程度にしか過ぎません。しかし、親会社からのコスト削減要求は厳しく、一部の案件は外部のSIerに移っている状況です。今後は親会社からの安定した受注をいただくとともに、外注比率を高める必要があります。幸い、弊社には物流や在庫管理の開発ノウハウがあり、こちらをパッケージ化することで、一定のユーザーニーズが見込めます。
取締役:なるほど。親会社の案件が外部の業者に移っているというのは由々しき事態だな。この原因はなんだ?
中村:最大の原因は、インフラにあります。弊社のデータセンターで可用性や性能が担保されていないため、安心してシステムを置けないのです。実際、昨年は大規模な障害が発生し、私たちの部隊が開発してきた基幹系のサブシステムが安定して運用できないということも起きました。インフラ部隊には安定した運用を長らくお願いしてきたのですが、なかなか実現していないのが現状です。
インフラ部 八尋(以下、八尋):お言葉を返すようですが、インフラ運用部としては打てる策は打っています。24時間365日体制で人手を監視に回し、障害時にはいち早く対応できる体制をとっています。確かに、昨年には大きな障害を起こしましたが、あれはネットワーク機器の老朽化が原因。こうした事態が起こらないよう、インフラ刷新のために予算を要求しているのに、ことごとくアプリ開発部にとられているのが現状。これでは安定した運用を実現するのは限界があります。
取締役:とはいえ、売り上げに貢献する部門に予算を按分するのは企業活動の基本だろう。安定運用なんて当たり前で、なんらか対策を講じて来なかったインフラ部に落ち度があるんじゃないか? そもそも、今どき人海戦術での運用は限界があるだろう。人手だとどうしてもミスも多いしな。
八尋:最近はネットワークやサーバーの監視にソーラーウインズというベンダーの監視ツールを導入し、障害対応を迅速化し、インフラの見える化も実現しています。資料を見ていただければわかるとおり、可用性やオペレーションの質も上がり、計画的な機器の更新が可能になっています。
中村:私たちもインフラ部の運用スキル等をあげつらうつもりはないのですよ。そもそも今回のプライベートクラウドの話も、最近のインフラ運用の優秀さがあったからこそお願いすることにしたわけですし。そのファイアーウォーターでしたっけ?
八尋:いえ。ソーラーウインズです。
中村:ああ、そのソーラーウインズのレポートがアプリ開発部にも回るようになってきたので、今ならプライベートクラウドの構築も可能だと見込んだわけです。
取締役:で、プライベートクラウドによってどんな開発体制を作るつもりなんだ? 今流行のDevOpsというやつか?
中村:はい。昨今の欧米の流れは、完全にそちらですから。ということで、来年度のプロジェクトではわれわれアプリ開発部がインフラを刷新して、サーバーの仮想化を推進します。とにかくインフラ部にオーダーして、数ヶ月待たなくとも、すぐに開発・テスト環境を用意できるようにしたいのです。アプリ開発部で運用できるようになれば、インフラ部隊の人員もスリムになるでしょうし、外注案件も増えるので、会社としては安心。せっかく導入したファイアーウォーターだけど、最新の仮想化ソフトの管理ツールがあれば、私たちにとっては十分ですわ。
八尋:(だからソーラーウインズ……)インフラ運用はそんなに甘いものじゃないです。適切なツールとエンジニアのスキルとが合わさって、初めて安定した運用が実現できるんです。われわれの部隊もこの数ヶ月でスキルを上げていて、運用実績も……。
取締役:まあ、いい。会社で決まったことなんだから、とりあえず八尋君のところは、中村君の指示に従って、プライベートクラウド構築のプロジェクトを迅速に進めてくれたまえ。
八尋:はい……。
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