飯田橋クラウドクラブ(略称:イイクラ) 第19回
クラウドについて来られない人たちとマイクロソフトの役割
商習慣、リテラシ格差、文化……クラウドの未来はどうなる?の巻
2016年01月15日 11時00分更新
「蛇口をひねると水が出る」に慣れた世代はどうする?
デプロイ王子:クラウドの未来って、どうなると思います? MVPとしてクラウドに関わって、来月からはマイクロソフトでクラウドやるんだけど、クラウドの未来どうなるのかを日々考えています。
真壁:僕は技術的な未来とビジネス的な未来を分けて考えなくてはいけないと最近考えています。日本のIT市場は約13兆円あって、その多くはエンタープライズやキャリア。まだまだクラウドは小さいので、エンタープライズやキャリアのところにどうやってリーチさせるか。これがビジネス的な未来。一方で古いモノを壊して、新しいモノを生み出すためのクラウド基盤という技術的な未来もある。このうちビジネス的な未来の方が、マイクロソフトの主戦場だと思っています。
パクえ:言い方は悪いけど、遅れてきたレイトマジョリティの人たちをきっちり受け止めて、ちゃんとマイグレーションしていく。後ろであればあるほど、きっちり取り込んでいくのがうちの役割。今までOSでさんざんやってきたわけだし、ここから本領発揮なわけですよ!
土居:僕は技術的には「セグメント化する世界」がやってくると思っているんです。今、クラウドネイティブな人は基盤を作らず、新しいものを開発できる。僕らがやってきた、要らん試行錯誤はないんですよ。要はプログラム書かなくても、カセット挿せばゲームがプレイできるファミコンです。こういうギャップやセグメントが顕在化してくる。情報インフラを「素」の状態からやってきた人が高齢化し、その技術が伝統芸能になることが若干怖いと思っています。今後、AWSとか、マイクロソフトとかが業界を牛耳ってしまうと、これからの人はなにを学べばいいのか、リスクとして不安。世界的に見ても同じです。
デプロイ王子:「蛇口をひねって水が出てくるのが当たり前の人は、いったいなにを学べばいいのか」という話ですよね。
土居:そうそう。井戸を掘れば水が出てくることを、どうやって伝えていけばいいのかという課題ですね。青年海外協力隊が井戸の作り方を教えに行くというのは文化や環境の格差があるからいいけど、ITの世界はあっという間に伝搬してしまう。
真壁:ITは近くになくても、学べる。水が飲めるという段階で、飲み方と使い方を教えればいい。
2016年はPaaS元年!その価値を実感してもらうために
デプロイ王子:反面、クラウドに関わっている僕たちも、自分たちの持っているスキルがあっという間に陳腐化するというリスクがある。みんな腹の底では限界があるとわかっている。そんな中、エンタープライズでずっと仕事している青木さんはどう思う?
パクえ:いいふりやなあ。
青木:パブリッククラウドにみんな移行した段階で、プライベートクラウドの技術は陳腐化する。ストレージの扱い方とか、OSの中で動いている技術とか、興味を持つ人が少なくなってしまうと思う。
ASCII大谷:20年近くITの媒体にいる私の肌感覚的には、思いのほか進んでないなと感じるところもある。クラウドのコンセプトって、NC(Network Computing)とか、ASPとか、ユーティリティコンピューティングとか、時代ごとにあった。その割には思いのほか、浸透しなかった印象。だから過渡期は思いのほか長いのかもしれない。
デプロイ王子:確かに長くかかるかも。
ASCII大谷:正直、日本の中小企業にとってみれば、クラウドはまだまだほど遠い話だし、エンタープライズはまして過渡期が長いのかもとは思います。一方でお話しに出たとおり、セグメント化も起こる。去年は祖母から長男の嫁に代替わりした段階で手書きからいきなりfreeeとSquareに行ってしまったスポーツ用品店の取材もしてきたけど、そういう格差もどんどん広がっていくんだろうなあ。
デプロイ王子:そういう話を聞くと、やっぱりクラウドって文化を変えることなんでしょうね。
真壁:「新しい技術をぶっ壊せ、レガシーを守るぜ」というラッダイト運動みたいなのがエンタープライズには起きている。
土居:実際、クラウドは産業革命と言われているわけだし。クラウドに移した段階で、物理的な制約はなくなるし。
得上:つまり、コンピューターからコンピュートに移ったわけですよ。これ2年間ずっと言いたかった(笑)。
デプロイ王子:そういう意味では、今日の話って、やっぱり「2016年はPaaS元年」という結論になるのかな。AWSもLambdaを押しているし、Azureもプログラミングに最適なPaaSを展開している。
得上:Googleが最近発表したCPUとメモリがシームレスに可変するやつもその流れです。
土居:僕も昔そんなやつ作ったんですよ。喜んでくれていたの川田さん(atoll project 川田大輔氏)だけだったけど(笑)。
パクえ:今年後半はようやくAPIの話出てきました。
真壁:APIって触らないとよさがわからない。ようやく気軽に触れる環境が出てきた気がする。
パクえ:今年前半はマイクロサービスなんたるかみたいな話が出て、その後によくも悪くもステートフルを扱える組織論に話が行ってしまった。「基盤も実装も両方見られる組織は日本では難しい」という話が夏くらいに出てきたけど、あれは本質じゃないです。
真壁:どれだけ実感こもって便利だと感じられるかが本当に大きいと思う。クラウドの恩恵を一番感じられるのは、アプリケーションデベロッパーだと思う。やっぱり「お客様に使ってみたいと思われるかどうか」ですよ。
デプロイ王子:僕も長らくベンダーの外にいたから、お客様のニーズだけはわかる。今から思えば、第一次クラウド戦役はニーズ発掘がないままサービス作っていたところも多かった。でも、第二次クラウド戦役は本当にお客様が欲しいものかどうかが鍵になってくるよね。
マイクロソフト編(2015年版)完!
この連載の記事
-
第25回
クラウド
今年も色々ありました。12月20日は市ヶ谷で2018年のクラウド業界を振り返ろう -
第24回
クラウド
飯田橋で語り合うクラウド、機械学習、FinTech、サーバーレス、そして働き方 -
第24回
クラウド
次は連携?SoftLayerとBluemixユーザー会の存在意義を語るの巻 -
第23回
クラウド
苦労はあるけど、新しいもの好きにはたまらないBluemixの巻 -
第22回
クラウド
知られざる巨大クラウドSoftLayer/Bluemixの魅力を語るの巻 -
第21回
クラウド
SIerのキーマンが本音で語った「クラウドは業界をどう変える?」 -
第19回
クラウド
ITmedia三木、ライター五味、ASCII大谷が本音で語った2015年のIT -
第18回
クラウド
想像を超えたベンダーとの提携とAzureのデータ戦略を語るの巻 -
第17回
クラウド
第二次クラウド戦役に臨むマイクロソフトの意気込みを語るの巻 -
第16回
クラウド
デプロイ王子、マイクロソフト入りの経緯を語るの巻 - この連載の一覧へ