飯田橋クラウドクラブ(略称:イイクラ) 第24回
今年はメディア記者だけではなく、参加者まで引き上げちゃった
飯田橋で語り合うクラウド、機械学習、FinTech、サーバーレス、そして働き方
2017年01月25日 07時00分更新
暮れも押し迫った2016年12月26日。2016年のクラウド動向を振り返る「リアルイイクラ納会2016」が飯田橋のKADOKAWAオフィスで開催された。前半のメディア記者3人のトークに加えて、後半は参加者を巻き込み、FinTech、機械学習、サーバーレス、働き方などなどについて語り合った。

ITのツール化に向けて疾走した2016年のIT業界
リアルイイクラ納会はTECH.ASCII.jpの人気連載「飯田橋クラウドクラブ(略称、イイクラ)」のオフラインイベントとして年に1回開催されているもの。前半はメディアの記者3人によるパネルディスカッション、そして後半は参加者に登壇してもらい、アスキーのオオタニが公開取材するという形でイベントが進行した。

イベント企画・司会進行を務めたアスキーのオオタニ
メディアの記者として登壇したのは昨年と同じ、アイティメディア @ITの三木泉さんとフリーライターの五味明子さん、そしてアスキーの大谷イビサの3名。3人は海外出張などで同じ釜の飯を食らう仲で、それぞれ主義・主張は異なるものの、お互いをリスペクトし合う間柄でもある。今回も自身が執筆した記事についてそれぞれ語り合うというスタイルで、「名物記者と振り返る2016年のクラウド動向」と題した1時間半のセッションを展開した。
re:Invent 2016に参加した3人が共通にピックアップしたネタは、AWSとVMwareの提携によって実現した「VMware Cloud on AWS」だ。五味さんは「この2社はお互い敵対することも、手を取り合うこともなかったが、実は水面下で交渉していた。2社のCEOが同じ舞台に立ったときはすごいインパクトがあった」とコメント。また、ベアメタルを否定してきた両社がVMwareをAWSのベアメタルに載せるという形でサービスを抱いてきたことは感慨深いと語った。

「読者の心に残る記事を業界一の遅さで書くライター」と語る五味明子さん
三木さんは「データセンターの自動化を推進するEVO:RACKのプロジェクトでさまざまなベンダーに対応しているうちに、AWSに行き着いたようだ」という話を披露。その上で、「一番驚いたのは、AWSが自分たちの物理リソースの管理を、他社にゆだねるという決定をしたところ。自分たちのオペレーションエクセレンスを追求している会社だと思うので、一部なりでも任せるというのは思い切ったなと感じた」と語る。逆に言えば、そこまでしてAWSがやりたかったプロジェクトだったということだ。

「広報・マーケティング担当泣かせの記者」と自己紹介した@ITの三木泉さん
ここに至った経緯を五味さんはそれぞれの限界を理解したからだと指摘する。五味さんは「AWSはクラウドに載せられないワークロードもあるという限界、VMwareはスケールという観点でAWSにはかなわないという限界を理解したのはないか」と五味さんは語り、この危機感が両社の歴史的な提携になったとまとめた。
その後、JAWS-UG on ASCIIやコミュニティの隆盛、日米でのアジャイル開発比較、SD-WANや機械学習、APIエコノミー、OSSビジネス、IoTなど幅広いトピックに遡上に上がった。通して得られたのはクラウドを中心に「ITのツール化」が進むという指摘。SD-WANや機械学習、APIなども包括してしまえば、提供形態やビジネスモデルの変化に過ぎず、所有するITから利用するITに向け、業界全体が疾走しつつあるというのは間違いない。
また、媒体が多様化し、海外のイベントがリアルタイムで配信される時代、IT記者はどうすべきかという議論も興味深かった。個人的には、IT記者が海外出張に行く意義について、「海外の情報は日本には薄められた形でしか伝わってこない。私はなるべくそれを立体的な形で伝えていきたいと思って書いている」という三木さんのコメントが印象的だった。

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