ニンテンドーDS用のシンセサイザーソフト「KORG DS-10」のiOS版がついに登場。単なる移植版ではなく、「ボイス・シンセサイザー」「アナログ・ドラム・マシン」などを追加した発展版だ。ソフトウェアシンセサイザーとしては世界で初めてミステリービンゴを内蔵している。って、なんだそれ!?
そこは本文中で説明していくとして、この「iDS-10」はもちろんコルグ、そしてKORG DS-10のプロデューサーだった佐野 電磁さんのDETUNEによる共同開発だ。
2008年に発売されたKORG DS-10は、ゲームマシン上で動作する、完璧なアナログモデリングシンセサイザーのソフトとして唯一無二の製品だった。特に、ニンテンドーDS本体の構造と、上下2画面を使ったインターフェースは、モチーフとなったMS-10の筐体デザインを彷彿とさせ、なんとも言えない風情を醸し出していた。
その頃、コルグは初代KAOSSILATORの大ヒットや、Denkitribe氏のパフォーマンスで製造中止になるはずだったELECTRIBE・MXが復活するなど、YouTube以降の新しいデジタルムーブメントとシンクロして、その最先端を走り始めた時期だった。それから7年後。iPhone版が出る理由はなにか。話はそこからスタートする。
DSのボリューム感にiPhoneが最適
―― みなさん、ご無沙汰です。おっと、佐野さん、そのTシャツは!
佐野 いいでしょ、これ。これインクジェットなんで、シルクスクリーンでちゃんと作りたいんですよ。最終的には、ここにLEDが本当に入るという。
―― ぜひなにかの機会に売ってください。で、まず、なんでiPhoneアプリなんですか?
中島 持ち運べて、箱庭感があり、曲も作れるシンセとして、人気もすごくあった。それがDS-10だったと思うんですけど、iPhoneとはポータブル性に共通点がある。またDS-10には独特の世界観があり、それをいろんな音楽アプリが出ているiPhoneでも楽しめるようにというのが、一番やりたいと思っていたところです。
―― 以前、佐野さんは「DSはやり込む感じがあるけど、iPhoneのアプリは何度か触ってなるほどねで終わっちゃう」とおっしゃっていたんですが、そこはどうお考えですか?
中島 DS-10は相応に底が深いものの、なんでもアリのDAWというわけではない。限られた中だからこそできる曲もあると思います。そういうDSならではの楽しみ方を、iPhoneでも提供できればいいなと。
佐野 iPhoneとDSの感じは、あれは僕の勝手な思い込みなんですかね? DSは入り込む感じなんですが、iPhoneは触って、あ、ハイハイってとこありますよね。そこは悩まされましたよ、今回は特に。
―― コルグさん的には、今までシンセアプリといえばiPadだったんですが、前回の「ELECTRIBE」はiPhone版でした。iPhoneは画面も大きくなったし、もうiPadは見切ったとか?
中島 いえいえ、そんなことはないですけれども。iPhoneとiPadではユーザーの方が違うと思うんです。iPhoneしか持っていない方とか、ユーザー層も広いですし。DSのボリューム感に対しては、iPhoneのサイズがちょうどいいんじゃないかなと。
―― 確かに片手で使えるものじゃないと、DS-10っぽくないですよね。DSを使い慣れたせいか、iPhoneの平べったい画面を操作していても、画面の四隅に液晶画面の枠の感触を感じるんですよ。本当はないのに。
佐野 ははは! すごい話ですねえ。
―― ちょっと不思議な感覚ですね。よく見ると平べったい画面なので、ああやっぱりiPhoneなんだなと。マルチタッチで、2つ以上のノブを同時に操作できたり。ところでこの波形が出るのはDSN-12の影響ですか?
佐野 名残りですねえ。この画面も、さらっと作ってあるように見えて、すっごく大変だったんですよ。
金森 プロトタイピングの段階からここに落としこむのが大変でした。DSと違って、十字キーとかABスイッチとか画面外にボタンがないんですよ。
―― ああ、そういえば確かに。
金森 iPadなら画面に余裕があって好きにパーツが置けるんですが、画面を移動するためのページボタンとかRECボタンとか、最低限必要なものを配置していくと、パラメーターを少なくしないと、初めての人にとっては難しいものになってしまうんですよね。
(次ページでは、「ビンゴモードの秘密」)
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