前編 ~作家とリスナー、コンサートとレコードの関係~
なぜ音楽は無料が当たり前になってしまったのか
2015年12月29日 09時00分更新
定額配信サービスは音楽ビジネスの救世主となるのは難しい
したがって「音楽はもうCDではなく楽曲ごとに購入する」という時代もすでに終焉に向かっており(実際、ダウンロード販売の売り上げも2009年の約910億円を頂点として2014年には約437億円まで下落している)、もはや音楽ビジネスは底の見えない深淵への降下を続けている。時折「アナログレコードが復権の兆し」というような記事を見かけたりするけれども、とてもではないが音楽業界全体の不振をカバーするまでには到底いたっていない。
そうなると、最後の頼みの綱は定額配信サービスということになる。現在、国内で展開されている「Apple Music」「AWA」「LINE MUSIC」「Google Play Music」のほかにも、1年以上(もっとか!?)「準備中」となっている世界最大手の「Spotify」もいずれは日本上陸を果たすのだろう。ドイツの「SoundCloud」、さらには「YouTube」までもが定額配信サービスへの参入を目論んでいるというウワサもある。
では、国内における定額配信サービスの状況はどうなのか? ざっとネットを調べても、各社の明確な契約者数に関する公表データは見当たらない。おそらく数字が出てこないというのは押して知るべしということだろう。いくら売れなくなったとは言っても「CDがこんなに売れるのは日本くらいなもの」という意見もあるくらいだから、定額配信サービスが国内で定着するか否かに関しては決して楽観はできないというのが正直なところ。
ちなみに、Spotifyの全世界におけるユーザー数は約7500万人(有料会員は約2000万人)、Apple Musicは約1500万人(有料会員は約650万人)と言われている。しかし、定額配信サービス先進国の米国においてすらアーティストからの報酬に対する懸念や不満が少なからず表明されており、音楽業界全体が新しいサービスによって活路を見出して万々歳……というわけではないということは心に留めておくべきだ。
(次ページでは、「デジタル技術による音楽モジュール化で、主権は作家からユーザーに」)
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