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高橋幸治のデジタルカルチャー斜め読み第25回

「Rez」生んだ水口哲也語る、VRの真価と人の感性への影響

2016年06月10日 10時00分更新

文● 高橋幸治、編集●ASCII.jp

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今回は水口 哲也氏にエンターテインメントの未来を聞く

 VR(Virtual Reality)、ロボット、ウェアラブル・コンピューター、AI(Artificial Intelligence)、ナノテクノロジー、バイオテクオロジー、ビッグデータ、ビットコイン、IoT(Internet of Things)、そして2045年に到来すると言われるシンギュラリティーなどなど……。ニュースメディアには私たちの未来を大きく変えていくであろうさまざまなテクノロジーやキーワードがあふれかえっている。

 しかもそれらはもう未来ではなく、日々、生活、社会、経済、文化の中に浸透しつつある。同時に私たちのライフスタイルやワークスタイル、思考形態、感性構造も徐々にではあるが影響を受けつつあるのだろう。

 今週と来週の2回に渡り、数々のゲーム作品によって国際的な評価を得てきたクリエイターの水口 哲也氏に、VRをはじめとするエンターテインメントの未来について話を聞いた。

 はじめにことわっておくと、水口氏と筆者は日本大学芸術学部文芸学科の出身で、在学中、メディア美学者の武邑 光裕先生のゼミに所属していた。そのゼミにおける先輩と後輩という間柄だ。

VRの出発点は1980年代、萌芽を感じたのは2012年頃

高橋 水口さんとはちょくちょくお会いしているわりには、こうして2人で対談するというのは実は初めてなんですよね(笑)。

水口 トークセッションで3~4人で話すことはあるんだけどね。2人だけで話すのは確かに初めてですね。

高橋 トークセッションという言葉も出たので、まずは2人の共通点でもある武邑先生を塾長とするイベント「武邑塾」のことから入りましょうか。2012年の夏頃に水口さんから話をもらって、次回6月25日(土)で13回目になります。その2012年に水口さんが武邑塾をやろうと思い立ったきっかけというのはなにか具体的にあったんですか?

メディア美学者・武邑 光裕氏を塾長に、水口氏や筆者が発起人をつとめる「武邑塾」。「知のリレー」をいかに実現するか、をコンセプトに回を重ね、さまざまな職種、世代を超えて参加者が増え、議論が交わされる。次回開催は6月25日(土)。「生命的インターネットを展望する」と題し、西垣 通氏とドミニク・チェン氏をゲストに迎えて「インターネット第二幕」の眺望を模索する(画像クリックで詳細ページに移動します)

水口 うーん、これという明確なものがあったかどうかはわからないけれども、なにやら時代の潮目が変わりつつあるという予兆というか胎動のようなものは感じていたかもしれません。2012年といえばまさに日本でのインターネットの商用利用が始まってちょうど20年ということだったし、ソーシャルメディアなどの隆盛によって第一ステージにおけるひとつの到達点も迎えたし……、これから次はどんな展開があるんだろうというね。

 同時に次があるのであれば、多様な領域で活躍している人たちの叡智というか知見といったものを共有したり継承したりする場があったらいいなぁと漠然とは考えていましたよね。

高橋 VRをはじめとするテクノロジーの潮流ということでいえば、2016年の現在のほうがぜんぜん顕在化していますもんね。武邑塾をやろうという話が出てからたかだか4年くらいですけど、状況的にはいまのほうがわかりやすいですよね?

水口 VRが本当に一般的なレベルで騒がれるようになったのはここ2~3年くらいだもんね。ちょっと特権的な言い方に聞こえてしまうかもしれないけど、1980年代の終盤から1990年代の初頭にかけて武邑先生の授業を受けて話を聞いていたわれわれからすると、すでに25年以上前からVRは強く意識の中にあったわけじゃない? しかも、アメリカ西海岸におけるカウンターカルチャーの土壌や文脈からどうしてああいうテクノロジーが生まれてくるんだろうから始まって、人間と身体、人間と感覚、メディアデザインにおける美学的思想なんかをすべてひっくるめて武邑先生から教えてもらっていたわけだし。

 僕なんかはそれが自分のキャリアの出発点みたいなところがあるから、VR的なエンターテインメントをやりたくてセガに入って、実際いろいろなゲームを作ってみたんだけど、当時はまだまだぜんぜんテクノロジーが追いついておらず……というね。

頭の中のイメージをそのまま結晶できる技術がようやく生まれた

高橋 それでVRは表向き一度水面下に入りましたよね。もちろんいろいろな場所で実験や研究は進められていたんでしょうけど。ところが2010年代に入った頃からARなどの技術や言葉とともに再び注目され始めていまにいたるわけですが、浮上してからのここ2~3年の技術的なジャンプ率たるやすごいものがありますよね。

水口 そうだよね、20年くらい前に一度VRブームが沈静化したときも「この技術はいつか絶対にまた来るぞ!」とは思っていたけど、まさかこのレベルにまでこんなに早くたどり着くとは思わなかったですね。

高橋 そういう意味では、ようやく水口さんのやりたいことを落とし込める表現フレームが出てきたという感じではないですか?

水口 ホント、やっとだよね(笑)。僕のやりたいことのテーマというのはけっこうはっきりしていて、一言で表現してしまえば、「共感覚的な体験」をエンターテインメントで実現したいということなんです。

 2001年に「Rez」というVR的なゲームを作ったけど、どんなに壮大なイメージを頭の中に描いても、最終的にはちっぽけなスクリーンの中にはめ込まなければいけない。当時はそれがとてもストレスでしたね。当然、表現というものはなんらかのフレームがあってこそ成立するものではあるんだけど、本当にやりたいことができるようになるのはもう少し未来だなという感覚はずっと持っていました。その未来がいまようやく来たという感じだよね。

世界中で数々の賞を受賞し絶賛された水口氏プロデュースによる共感覚シューティングゲーム「Rez」(2001年)が、今年10月発売予定の「PlayStation VR」用にリメイクされ「Rez Infinite」としてリリースされる。共感覚的なコンセプトを体現するために内部に振動素子を埋め込んだ専用スーツ「Synesthesia Suit (シナスタジア・スーツ)」も開発されている

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