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高橋幸治のデジタルカルチャー斜め読み 第21回

バカッター探しも過度な自粛もインターネットの未来を閉ざす

2016年05月06日 09時00分更新

文● 高橋幸治、編集●ASCII.jp

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Photo by Damien du Toit

いま、私たちはインターネットの自由を謳歌できているか?

 4月13日、ひょんな巡り合わせで宇川 直宏氏が運営するライブストリーミングチャンネル「DOMMUNE」に出演した。内容はクリエイティブ・コモンズ・ジャパンの主催による「CC0 CC4.0 Release Special!CCの航海、コモンズの現在地!!」というもので、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの新バージョンのリリースを契機に、ますます多様な展開が進行しつつあるインターネット上における創造活動の現在と未来を議論した。出演はドミニク・チェン氏(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン設立理事)、原 雅明氏(音楽評論家)、上妻 世海氏(キュレーター)、そして筆者の4名。

4月13日(水)にライブストリーミングチャンネル「DOMMUNE」で放映されたクリエイティブ・コモンズ・ジャパンの主催による「CC0 CC4.0 Release Special!CCの航海、コモンズの現在地!!」のレポート。番組の中で紹介されたクリエイティブ・コモンズ・ライセンスによって公開されている各種音源を使ったトラックメーカーたちの作品も聴くことができる

 クリエイティブ・コモンズとはご存知の通り、アメリカの法学者であり「CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー」や「コモンズ―ネット上の所有権強化は技術革新を殺す」(共に翔泳社刊)の著者であるローレンス・レッシグを中心に2001年に設立された非営利団体だ。

 クリエイティブ・コモンズ・ライセンスは、創作者が自らの作品をインターネット上でほかの人々に手軽かつ円滑に再利用してもらえるよう、同団体が提唱した国際的な著作権ルールである。

 “インターネット上に流通するクリエイティブ作品をいかに他人に使用させないか”という禁止や規制の意思ではない。むしろ、“一次創作者がどこまでの自分の創造物の複製、改変を二次創作者に許可するか”という、インターネットにおける表現活動の特質=デジタルデータゆえの加工や協調のしやすさを踏まえた創作行為の促進と支援の精神が反映されている。

 クリエイティブ・コモンズ・ライセンスがこれまでインターネット上におけるクリエイティブを適切なルールのもとに保護し、発展させてきた功績は大きい。

 DOMMUNEにおける三氏との対話は筆者としても実に刺激に満ちたもので、インターネットにおける表現の自由を再考する機縁となった。当日の番組の主題は音楽が中心であったけれども、当然のことながらクリエイティブ・コモンズ・ライセンスが適用される対象は文章や写真や動画などほかの表現形態にも及ぶ。

 では、いま、私たちはさまざまな場面でインターネット上での表現の自由を謳歌できているかというと、少々答えに窮してしまうところがある。

 たとえばTwitterやFacebookにおける投稿ひとつにしても、反論や非難を恐れて発言を封印したりしてしまうような瞬間が少なくない。それは「私的」な感情が「公的」な場所で引き起こすかもしれない摩擦に対する懸念である。

 クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの新バージョンの詳細についてはまた回を改めて触れることとして、今日はこのインターネットの中に同居する「私的空間性」と「公的空間性」について考えてみたい。

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