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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第153回

東京まで2時間が名曲生んだ、異質なバンドに必要な距離

2016年06月25日 12時00分更新

文● 四本淑三

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 楽器はアコースティックギターとバイオリン、そして2人のボーカルだけ。にも関わらず、巧みな演奏と言葉のグルーヴ感で、聴き手の気持ちを全部持って行ってしまう、いまだかつて誰も経験したことのないカッコ良さ。

 てあしくちびるのそんな特異な音楽は、一体どこからやってきたのか。間違いなくわかっているのは、バンドが生まれたのは栃木の足利ということだけ。彼らはいまでもその地元から、ライブ会場までクルマで通っている。セカンドアルバムのリードトラック「Odd le KITAKANTOW」では、その北関東を歌い、MVも北関東で撮影されている(このMVは必ず最後まで観るべし)。

 謎に包まれたサウンドの手がかりを追う、てあしくちびるへのインタビュー2回目は、地元とその「距離感」について。

 インタビューの1回目はこちら。

Image from Amazon.co.jp
6月3日に発売されたセカンド・アルバム「coreless」のジャケット。マスクで顔はまったく分からないが、左がkawauchibanriさん(アコースティックギター、ボーカル)、右がくっちー(バイオリン、ボーカル)。地元・HMVイオンモール太田店の他、全国のタワーレコードとディスク・ユニオン、およびSNOKEY RECORDS(宇都宮)、モルタルレコード(熊谷)、studio tissue★box(郡山)、more records(大宮)、円盤(高円寺)、タコシェ(中野)など、その筋で有名な関東圏の各店舗で発売中。

渡良瀬川の河原で毎日のように練習

―― バイオリンを弾きながら歌ったり跳ねたり、練習は大変じゃないですか。

くっちー 歌いながら弾くのは繰り返し練習するのみ。結成してすぐの頃は、2人とも無職の時期で、毎日暇だったから。地元は田舎なので、河原で練習できるんですよ、お金をかけずに。だから毎日のように。半年くらい無職でやってたよね?

kawauchibanri 楽器を弾くときのタイミングとか呼吸みたいなものは、そこでガッツリ染み付いた感じですね。

―― アコースティックだから電気もいらないし。ちなみにどこの河原ですか?

くっちー 渡良瀬川。

―― それはいい感じの絵になりそう。

いい感じの絵になっていました。彼らのファーストアルバム「Punch!Kick!Kiss!」のCM

―― 最初のライブは地元で?

kawauchibanri 地元ではないですけど、最初にやったのは前橋のCoolFoolという、ばちかぶりでベースをやっていた佐藤あつしさんのお店なんです。ソロのときから前橋でよく演っていて。初期の頃からイベントを組んでくださったりして、群馬の人にはすごくお世話になっています。

くっちー でも最初の頃は、地元ではあまり手応えがなくて。それで東京に来るようになって、対バンした人から「すごいおもしろいねー」とか。もちろん地元でも聴いてくれている人はいたし、今では企画に呼んでもらったりもしています。

―― 東京でやるようになったのは?

くっちー 私たち「出れんの!?サマソニ!?」に応募したんです、結成1年目のときに。それを見て内田典文さんが「てあしくちびる」って名前がおもしろそうだって。

※ 東京のライブハウスシーンで知らない人はいないベーシスト。これはと思うバンドを観に行くと、3割くらいの確率で内田さんに当たる。

kawauchibanri 音は全然聴いてないのに、名前だけで。

―― 適当……。というかジャケ買いみたいなセンスですね。

くっちー その後は、自分たちであちこち当たって、最初に秋葉原のCLUB GOODMANから「出てみないか」って。

kawauchibanri 東京でやるときは、主にそこでした。必ずしも多くの人に届く音楽ではないのかもしれないけれども、自分たちにとっては、すごくおもしろい人たちがやっている。自分たちはアコースティックだけど、ノイズのバンドからインスパイアされることもあるし。そこから得た刺激を自分たちの楽器や言葉で表現できたらおもしろいだろうなと。

イケベ楽器リボレ秋葉原店の地下にあるライブハウス。オクムラユウスケ、空間現代、トリプルファイヤー等、まさにオルタナティブな面々で今後のスケジュールも埋まっている

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