角川アスキー総合研究所 主任研究員 遠藤諭氏インタビュー
社長と働き盛りの30代に読んで欲しいシリーズが完結!仕掛け人に話を訊いた
2015年10月24日 18時00分更新
産業革命のインパクトは歴史の授業で勉強するのに それに匹敵するインターネットは学校じゃろくに教わらない
文化・経済・産業・政治……社会を構成するさまざまな事項を、インターネットという切り口で見つめ直そうというシリーズ『角川インターネット講座』。MITメディアラボ所長であり、角川アスキー総合研究所の主席研究員でもある伊藤穰一氏が監修した第15巻「ネットで進化する人類 ビフォア/アフター・インターネット」(10月27日配本)をもって、全15巻が完結した。
今回は『角川インターネット講座』を企画した角川アスキー総合研究所 主席研究員の遠藤諭氏に企画立案のきっかけ、なぜこのタイミングで刊行したのかを伺った。
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角川インターネット講座 (15) ネットで進化する人類 ビフォア/アフター・インターネットKADOKAWA/角川学芸出版
紙で刊行されるインターネットの講座本が
角川とドワンゴの統合記念企画である理由
遠藤 じつはこのシリーズ、かなり評判が良いんですね(笑)。
発端はKADOKAWAの角川歴彦会長が、2012年の夏に、このような講座を作れないかと言ってきたことでした。「インターネットはどうやって動いているのか?」「ネットで経済のしくみはどう変化してきているのか?」「グーグルやアップルなどプラットフォーマー時代の企業とは?」「コミュニティの形成やルールはどうなっているか?」――こういった基本的な疑問に対して、真正面から答える紙の本が案外なかったからですね。
角川アスキー総研でやっている「メディア・ライフスタイル調査」という1万人への調査結果によれば、スマホを持っている20代前半の女性は1日3時間以上、つまり起きている時間のうち5分の1はスマホを眺めて暮らしています。
米国でも、ミレニアルズ(Millennials/2000年前後に社会に進出した世代)は“スマートフォンと結婚している”という表現がニュースにありました。彼らの80パーセントがスマートフォンと一緒に寝ているからだそうです。
ところが、産業革命のインパクトは歴史の授業で必ず勉強するのに、それに匹敵するであろうインターネットのことは学校で教えてくれません。この企画は、少しいやらしい言い方をすれば、自分たちが学生時代に学んだことや20年、30年とビジネスの現場で身に付けた常識が、どれだけ陳腐化して役に立たないものになっているかを知る本でもあると思います。
いま我々がその上で生活するようになっきていて今後ますます増大するであろうその根っこの部分を知る機会がほとんどないというのは、大変に異常な状態なのではないでしょうか? 角川が、この講座を作るように指示したのは、経営者として、また出版人として、こうしたことを体験的に切実に感じたからなんですね。ただの出版企画じゃない。この本が、角川とドワンゴの統合記念企画という位置づけになっているというのも象徴的ではないでしょうか?
―― では、広くインターネットの教科書的存在になるものを目指した?
遠藤 とはいえ、全15巻のラインナップの題名は見ての通り、政治・経済・文化……というような杓子定規な目次ではありません。読者が日々接しているハードやサービスの基盤に関する情報を平坦に網羅的に扱っているのではなく、各巻ごとに注目テーマについて監修者の考え方にあった形でまとめられています。
インターネットによってたった四半世紀で世界の様相が変わったこと、それ自体が一種のスペクタクルとはいえないでしょうか? なにしろ、自分が大きな時代の変化でゆさぶられている最中なのですから、本書を読むことはその震源地を知ろうとする体験になるわけです。
―― 社会システムを支えているインターネットの仕組みがわかるけれども、教科書のように堅苦しいものではない、と。
遠藤 私は、25年ほど出版に関わってきたわけですが、出版というのは、とくにこうした本や雑誌の役割というのは、学校では教えてくれない、まだ新しかったり深かったりするために学校の教科書には載らないものを学べるということだと思っています。しかも、“学び”というのは本来わくわくするエンターテインメントであるべきなのですよ。
(次ページでは、「iTunesで音楽を買い、歩きながらiPhoneで聴ける仕組みを「はっきりわかっている」と言いきれる人は少ない」)
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