SendGridの独自機能で効率的にメールを配信
以前から提案していたSendGridの導入が本格的に進んだのは2014年6月くらい。導入に際しては、プランを決めるため、3ヶ月のウォームアップを実施した。「完全に終わったのは9月ですね。ほぼ1ヶ月くらいかけて少しずつ送信量を増やしていきました」(尾﨑氏)。
これと並行し、チャットワークのシステムとSendGridが用意しているSMTP APIとの連携を進めた。1万通の配信に対して1万回のリクエストを送らなければならない通常のSMTPと異なり、SendGridでは1回の送信で1000通を送信できるようにする独自拡張が施されている。この機能を利用すべく、SendGridのSMTP APIを用いて、チャットワークのシステムに実装したのだ。
とはいえ、この実装には文字コード周りで苦労もあった。SendGridは日本語メールの文字コードのISO-2022-JPを使う場合、Web APIではなくSMTPを使う必要がある。「UTF-8で送れたらWeb APIを使えるので、実装も早かったんですが、うちではいったんISO-2022-JPに変換し、JSON形式に直して、SMTPヘッダを改良する必要がありました。ここはちょっと苦労しましたね」と尾﨑氏は振り返る。
ユーザーに確実に届く価値はエンタープライズでも大きい
本導入後は遅延やトラブルもほとんどなく、確実に配信できている。尾﨑氏は、「なにしろ送れば確実に届くというのがいいです。以前、自前でメール配信サービスも作ったんですが、まあ送っても届かない。DKIMやSPFなども管理画面からチェックするだけで使えるので、ありがたい」とSendGridを高く評価する。須藤氏は、「メール配信やスパムメールの現状をきちんと教えてもらいましたし、なにしろすぐに使えるというのが一番の強みですね」と語る。
一方、コスト面では従来と大きく変わらないという。完全従量制のAmazon SESに対して、SendGridは半従量課金に近い。送る量に対して月額が固定されていて、超えたらその分従量課金というケータイに近い料金プランになっている。そのため、数ヶ月の送信量を見ながらプランを確定。増えたり、減ったら、プランを変更するという流れで対応している。こうしたプランニングの末、必ずしも従来のASPサービスに比べてコストが下がったわけではないが、「確実なメール配信と開発負荷の軽減という価値は高いと認識しているので、妥当なコストだと思います」と尾﨑氏は語る。
30年近い歴史を持つインターネットメール。「以前うちのサイトでも『メールの時代は終わりました』と謳っていたのですが、チャットワークのユーザー登録には結局メールアドレスがいるんです(笑)」(須藤氏)とのことで、さまざまな課題はあれども、現在のわれわれのビジネスを支えるインフラであることは変わらない。こうしたメール配信を確実に実現でき、容易にスケールできるクラウド型のSendGrid。今年はモバイルアプリの提供やユーザーインターフェイスの刷新などもあり、Webサービス事業者やスタートアップのみならず、多くのエンタープライズ企業で利用価値は高くなっていきそうだ。
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