個人的な話が長くなりましたが、「PCオーディオ」と「ネットワークオーディオ」は何が違うかについて説明しましょう。まずPCオーディオとは「全くオーディオのことを考えていない機器でオーディオをやる」ものです。ネットワークオーディオは「オーディオメーカーが徹底的に高音質になるように考えて作った」もので、音の素性がまったく違うわけです。
LINNの話をしましたが、その後日本ではヤマハを筆頭に、パイオニア、デノン、マランツ、ソニーと各社が機器を投入しています。メジャーな音響メーカーからは大体製品が出ている状況ですが、どのメーカーも自社の持つオーディオのノウハウを最大限に投入しているのです。部品の選定、コンデンサーひとつとっても、ABCの比較試聴をして一番音のいいものを選ぶ。基板の設計でも、アースラインがうまく整うようにして、デジタル部とアナログ部をなるべく離すなど、干渉しないよう配慮する。筐体や電源も音には大切なものなので、しっかりとしたものを使う。振動は音に悪影響を及ぼすので、厚い鋼板を使うとか、インシュレーターを引いたりしているわけです。
こういう試行錯誤を経てやっとできるのがオーディオメーカーの作るネットワークプレーヤーです。だから、買ってきた瞬間からいい音がするのですね。CDプレーヤーなどでがんばって音作りをしてきたノウハウをそのまま使っているわけですから。
マニアの険しい道を進むならUSB DAC
いい音をすぐ手に入れたいならネットワーク
だから、「先生、PCオーディオとネットワークプレーヤーの2種類でどちらがいいですか?」という質問があった際には、「2つの道がある」と答えます。
もしあらゆる努力を厭わずに、マニアの道を進もうと思うなら、PCオーディオが絶対にお薦めです、と。コストをそれほどかけずに始められ、得られるものが努力に正比例します。ただ正比例するというのは、努力しなければ全く得られませんということでもある。オーディオに関してはマニアじゃないのだけども、自分は音楽が好きで最近話題のハイレゾを聞きたいなみたいという人には、「絶対、ネットワークプレーヤーがいいよ」と薦めています。

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