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麻倉怜士のハイレゾ入門講座第1回

ハイレゾ前史:人はいい音という普遍的な夢を追い求めてきた

2014年11月12日 17時00分更新

文● 編集部、語り●麻倉怜士

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ハイレゾはなぜ生まれたのか

 すごく単純に言って「音楽を聴く時に“悪い音”よりも“良い音”のほうが幸せでしょう」ということですね。できうる限り生の音に近付いて、いい音で聞きたいという欲求は、人類共通というか、人類の普遍的な夢なんじゃないでしょうか。

 Hi-Fiという言葉があります。つまり“High Fidelity”、“高忠実度”という意味です。では何に“忠実”なのか。それは“生の音”です。

ビクターが実施したすり替え実験の様子。生演奏を途中からスピーカーに切り替える。

 例えばビクターはすでに昭和30年代に、生演奏とスピーカーをすり替える実験をやっています。ステージにスピーカーをドーンと置いておいて、そこで演奏家が弾いている。

 途中で演奏が止まってスピーカーの音に切り替わるんですが、聴いている人は弾いているそぶりもあり、どこで生演奏からスピーカー演奏に変わったのか、結構分からなかったそうですね。

 何でそんな実験をやったのかというと、それはスピーカーから流れてくる音がどれくらい生の音に近づいているかを知りたいという、本能的な願望があるからです。エジソン以来、パッケージ(=レコード)が出てきて、レコードを買えば誰でもスピーカーで音楽を楽しめようになりました。

 でも“音楽をその場で楽しむ”という本来の姿とは結構違っているし、“やっぱり生は生だぜ”と感じる人が多かったんでしょうね。だから生の音に「いかに近づくか」という願望が生まれてきたわけです。

 ハイレゾは“そんな願望”の一つの帰結なんだろうと思います。

現実の音は柔らかいのに芯がある

 アナログのLPレコードが世に出たのは1950年ごろ、その後CDが1982年に登場してデジタル再生の時代が始まりました。ハイレゾが盛んに聴かれるようになったのは一昨年ごろからですかね。そう考えると、だいたい30年の周期でメディアが大きく入れ替わっていることになります。

 1980年代の初め、レコードがCDになった瞬間はみんなが感動したものです。レコードは帯域が狭いし、ノイズがパチパチと入るし、針音も大きい。それから左右のセパレーションが良くないとか、低音が薄いとか、色んな問題があった。CDになってそんな問題がすっかり解決したんですね。

 例えば、ノイズが非常に少なくなり、セパレーションがすごく取れるとか、低音がしっかり出るとか、音が揺れないとかですね。ただ、これで“生の音”に近づけたかといえば、そうでもなかったなぁと。

 生の音はひとことで言うと、しなやかで剛毅なんですよ。オーケストラの生演奏を聴いていると、ソフトで柔らかいな、なんて思うけど、芯はすごくしっかりしています。そんな観点でよく聴いてみると、CDから出る音はリジットに走り、しなやかさが失われている。だから「音が硬いな」とか「生の音に比べてほぐれないな」という感想を持ってしまいがちです。CDの登場で、アナログ時代のレコードとは違うところが気になるようになったわけです。

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