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アドテク急伸で日本のネット広告費が1兆円超え

2015年03月10日 11時00分更新

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 毎年2月は電通の「日本の広告費」が発表される時期です。業界関係者はその成長と内容が気になるのですが、今年は2月24日にリリースされました。その内容は、前年比102.9%の6兆1522億円が総広告費の推計金額となっており、消費税アップや急激な円安、国際紛争による懸念はあったもののプラスとなったようです。

 しかし、この数字を使う場合は知っておいた方が良いことが、何点かあります。

  1. 推計期間は1月~12月であり、年度(4月~3月)ではない。
  2. 総広告費の約1/4を占める電通の推計値である。

 事業計画や企画書に使用する場合、うっかり年度で使ってしまう例があります。ええ、私も一度やりました。多くの会社は4月~3月の年度で事業計画を立てますので、つい年度で使用してしまうと1月~3月が1年度前になります。ご注意を。

 そして、推計しているのが電通単体で日本の総広告費の約1/4を占める会社です。電通自体の業績から拡大推計しても良いぐらいの規模がありますので、その精度は高そうな気がします。過去に推計範囲を変更しているので、さかのぼって使用する場合は要注意です

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過去の「日本の広告費」:電通報

快進撃が続くインターネット広告の2桁成長

 インターネット広告費(媒体費+広告制作費)は大台の1兆円を超えて1兆519億円(前年比112.1%)でした。増えている地上波テレビが1兆8347億円(同102.4%)ですから、このままインターネット広告市場が2桁成長であれば10年くらいで同程度の市場規模になりそうです。

 一体何が伸びているのかといえば、運用型広告といわれるカテゴリーです。対象とならないのは「枠売り広告、タイアップ広告、アフィリエイト広告などは、運用型広告には含まれない。」だそうですので、ざっくりアドテク関連が伸びたと考えればよいかと思います。ちなみに、運用型広告の市場規模は5106億円(同123.9%)と、実にインターネット広告の媒体費8245億円(同114.5%)のうち約62%もの構成比です。

 さて、総広告費が3%程度の成長に比べればインターネット広告は成長していますし、1兆円という大台を超えましたが、今やインターネットは生活を支える通信インフラです。テレビ番組をパソコンやモバイル端末で視聴する(ワンセグやテレビメーカーの専用アプリ)、新聞をモバイルアプリで閲覧する(日経電子版など)、ラジオ番組をスマホで聴く(radiko.jp)、といった場合は分類上どう扱うのが最適なのか知りたいところです。

ナゼ増えたスマホ広告、Web制作業界の辛い背景

 電通のリリースに推計値がありませんが、本文中に

運用型広告費の多くを占める検索連動広告の市場は、PC検索の伸びが落ち着きを見せた中、スマートフォンやタブレット検索は大きく伸長し、全体では堅調に成長した。

また、大きく伸びた領域のひとつに、DSP(広告主側からみた広告効果の最大化を支援するシステム)が挙げられる。リアルタイムの入札形式で、広く効率的に広告配信するこの手法が浸透した。

とあるように、スマホ広告は拡大しているようです。データが公開されていませんので分かりませんが、DSPによる影響が大きいと個人的に推測しています。想定したケースとしては、効果効率を最大化する中でシステマチックにスマホに広告が掲載され、結果的にスマホ広告が拡大したのではないかという事です。

 スマホ広告のターゲットが広告主にとって最適だったことには違いないのですが、スマホ広告を指名買いしていない可能性が潜んでいる気がします。筆者の耳には、スマホ広告でも思ったより成長していない分野がある…、という話も届いていますので、今後の未成長分野による市場拡大も期待できそうです。

 そして、もう1つ。インターネット広告制作費ですが、前年対比104.4%の2,274億円でした。

案件数は増加したものの、前年に引き続き、大型キャンペーンの減少や制作単価の低下がみられたことから、成長率は前年の106.2%に比べ鈍化した。

 筆者の個人的な範囲でも、Web制作会社(Webプロダクション)では案件の減少と単価下落は確認しています。ただし、その減少の内容が問題です。推測に過ぎませんが、バラバラだったWeb制作への発注がまとめられ、1件当たりの総額が増え単価が下落していると考えています。背景には、サイト制作の自動化や最適化するシステムの利用が進んだこと、サイト制作システムのテンプレート化による制作案件の減少、大型キャンペーンに替わる新手法の活用、があると思われます。

 どちらもテクノロジーの進化により市場が変化したものと考えます。モバイル広告では、フィーチャーフォンがスマートフォンに置き換わりました。サイト制作はキャンペーンやリニューアルごとに対応していたのが、マーケティング・オートメーションによるサイト運用(キャンペーン)の自動化、設定されたシナリオによって次々とアクションが起こされるのです。

 このままだと、人間が関わる部分はプランニングと意思決定だけになるでしょう。

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